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剣ヶ峰龍雅の欲望/Life.of.Predetermined:GreedDragon  作者: 六月不二
日常章Ⅰ《取り戻した日常編~Normal daily life is beautiful/Happy days everyday~》
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第斜拾玖話《大規模バグ!魔法少女異界》

 龍雅は目を覚ました。

 

 ――何か違和感を感じる…


 龍雅は、そう思い、起き上がる。


 「何か髪が伸びるのが早いな…俺は呪いの雛人形か?」


 龍雅の髪は、ちょうどいいぐらいの長髪に伸びている。

 昨日まではいつもの髪型だったのに、今はロングヘアーと言ってもいいほど伸びている。

 その気になればドスの効いた低い声の出せる中性的な声、長い髪に中性的で服に筋肉が浮き出ない細マッチョな見た目も相まって美女のように見えるが、脱げば彫刻のように完成された美しい筋肉が浮き彫りになる為、男性だとわかってしまう。


 ――まぁ、いい…後で切れば良い事さ…さて、この違和感は何なのだ?


 自分の中にだけある物が大気に満ちているのを感じる。

 まるで異世界のようだ。

 

 「翔妃、これは一体何だ?」

 

 龍雅は、誰もいないところに向かって宮弥の旧名で読んだ。

 数秒後、宮弥は現れた。


 「これは…バグによる異変が起こったようですね。それも俺の作り出した異世界からの干渉…こちらの世界の住人は、異変に気付いていない。異変の内容は、異世界の概要の上書き言わば、この世界に元あった設定が、異世界の設定に上書きされたといってもいいでしょう。これを解決するには、恐らく敵勢力のボスを倒す事…」

 「その異世界とは一体?」

 「魔法少女が敵を倒す世界です。この異変の影響を受けていないのは、俺と貴方のみ…虎太郎は、女体化し、虎美という魔法少女になっており、貴方や虎太郎もとい虎美が関係している女性能力者全てが魔法少女と化し、G組はただの一般クラスとなり下がっています。貴方に関係している男性能力者は、全て一般人となっています。そして私は、貴方の妹…身体能力抜群な一般人として認識されています。そして俺のもう一つの役割は、悪の組織の幹部ですね。」

 「虎美か…」

 「人間関係はリセットされていません…ですが、貴方が能力者である事は誰も知っておらず超人的に力持ちな美少年として認識されています。また貴方は彼女達の正体がわかっていないことになっています。」

 「そこは変わらないのか…」

 「えぇ、能力に覚醒する前の貴方も力持ちでしたし…さて、他に質問はありますか?」

 「敵は何者だ?」

 「敵は、暗黒魔軍国ダークネスガンド…一度この世界を破壊し、その後、世界を自分達の世界に塗り替えることが目的の組織。簡単に言えば世界征服を企む悪の秘密結社と言った所でしょう。敵一人一人が重戦車並みの力で怪人の力は、改造兵に匹敵します。奴らの目的は、第一目標は、人間を支配する事と魔法少女を全員殺すまたは支配させる事です。俺は、その組織のNo.2として存在しているらしいです。敵組織に入り込むのはいつもの事…ロキとしてこの世界をかき乱しましょう。」

 「魔法少女とは?」

 「この世界線では、神聖戦姫セイントバルキリーと呼ばれ、ダークネスガンドと敵対しています。その力は、能力者に匹敵する。魔法少女に変身している間、周りの一般人に強い記憶改竄が行われ、魔法少女の正体が一般人にはわからないようにされています。まぁ、変身しているシーンや変身解除した所を見つけた一般人は、魔法少女の正体を知るわけですが、一種の異世界転生として楽しめばいいと思います。では、この異世界を楽しんでください。私は、ラスボスに辿り着かせるため、この世界にあの地獄のモンスターたちを解き放ち、ダークネスガンドの軍勢を少しでも多く倒し、ラスボスへの開路を開きます。どうせこの世界を壊してもあちら側の世界とこちら側の世界に名にも影響は起きない…いや、破壊しなければ二つの世界に悪影響を及ぼす…なるべく早くにクリアしてくださいね。さもなければ、俺がクリアする出番を奪いますから…」


 宮弥は、そう言って消えた。

 

 ――まぁ、楽しんでみるか…


 龍雅は、そう言って、着替えて朝食を食べ、切っていない長い髪を切り、そして昨日までの髪型に戻し、家を出る。


 何も変わらぬ得大紐の風景だ。

 技術は変わっておらず変わった所と言えば、得大紐山の噴煙が沸き上がっておらず火山として死んでいる事だ。

 故に、紗里弥が、火山を止める為の気温低下を使う必要もなく得大紐の気温は、他の地域と変わらぬ温度で、今の龍雅にとっては暖かいと感じられる。

 異界そのものだ。

 龍雅の知らない謎の物質に満ちた得大紐…いや、地球…そう認識した時点でここは、元の世界と非常に似た並行世界とは異なる異世界だと認めた。


 ――MPが無限を示している…ここでなら技も使い放題か…


 龍雅は、そう思いながら出歩く。

 まだ朝は早く日も見えておらず、空が若干明るい程度だ。

 散歩をしているものも多い。

 龍雅は目が冴えている。

 体の疲れもとれている。

 

 ――学校に行く時間までブラブラしておくか…変わったところを散策するのも悪くない。それにすぐに着替えられるしな。


 龍雅は、ステルスアクションフォームに移行し、この世から一切の気配を消し、空を飛び、宙を漂う。

 まるで幽霊のように漂う。

 しばらく経ち、龍雅は多くの何かがこちらに近づいて来るのを察知した。


 ――ん? 何だ?


 龍雅は、遠くの方に突如光さえ通さないような真っ黒な雲が現れが生じ、其処から邪悪な謎の軍勢が近づいて来るのが分かった。

 龍雅が視認すると同時に地上では、数人の銀河丘高校の制服を着た少女が謎の軍勢の方へと向かって走っていく。

 

 ――あれが例の奴か…さて、どれほどの力を持つか試させてもらおう


 龍雅は、何かの軍勢に向かってエネルギーの弾幕に放つと邪悪な何かを放つ軍勢は、弾幕の爆発に飲み込まれ、軍勢全てが消失する。


 ――何だ…雑魚だったか…下らないな…


 その頃、地上では――


 「ねえ、お姉ちゃん…あの変な弾幕って何だったんだろう? さっきダークネスガンドを倒したあの光線って…」


 芽衣は、黒髪の少女に問いかける。


 「さぁ、あたしにはわからない。けど、他の誰かが倒したと思う。」


 普通と美少女の境目にいるような黒髪の少女は答える。

 彼女こそが虎美である。


 「フン、何にせよ龍雅と宮弥を巻き込まずにすんだのは、幸いな事だ…何せあいつら私達が戦った中でも最強クラスの敵集団ファブニール部隊のように見えたからな。私達が命辛々何とか撃退できた奴らだ…それにしても早朝から襲ってくるとはな…誰かに倒してもらったのは、幸いだ。さて、少し早いが学校に行くぞ。」

 

 紗里弥は、そう言って虎美達と共に学校に向かって、立ち去っていく。

 

 その頃、ダークネスガンドでは…


 「何だと!? ファブニールが死んだだと!?」


 下半身が蛇の姿をした怪人は、玉座にそう怒鳴り声で言った。

 そこは、魔王の玉座のようだ。

 悪の組織のボスの部屋のように見える。

 部屋には玉座のほかに何かを保管しておく装置もあり、その中には気味の悪い物質が浮いている。

 怪人の前には、仮面をつけた金髪の美少女が怪人に跪き、ファブニールが死んだことを報告している。


 「はい。ニーズヘッグ様…早朝に進軍中、何者かに襲われ、ファブニール部隊が一瞬にして全滅…残ったものはファブニール様の肉片のみ…細胞は全て焼き切られ、再生は不可能です。」


 宮弥、いやロキは、そう言い、ニーズヘッグにファブニールの肉片をニーズヘッグに渡し、ニーズヘッグは、ファブニールの焦げた肉片を持ち、謎の装置に入れ解析し始める。


 「まぁ、よい。誰がやったのだ?」

 「それが…姿を隠していてわかりませんでした…真正面からの攻撃でしたが、姿は見えない…あらゆる観測機能をもってしてもその正体を掴むことができませんでした。弾速と距離を考えると、そこまで遠くない距離…どうやら自分の姿を透明化させる力を使う神聖戦姫に押われたのでしょう。」

 「…いいや、神聖戦姫とも我々とも違うようだ…第三の勢力の介入か…」

 「第三勢力? それは一体…」


 そう思い、人ならざる男は、ファブニールの焼け焦げた肉片を何かの装置の中にいれた。


 「この攻撃の性質は、神聖戦姫の攻撃でも、我らの攻撃でもない…我らに似て神聖戦姫にも似た力…それでいてその二つとも異なった力だ。」

 「両方併せ持つ我々の手に堕ちた神聖戦姫…邪黒戦姫とも違う力と…?」

 「そうだ。どちらかというとこの世界と異なる異界の…」


 そう言いかけた時、ブザー音が鳴り響き始めた。


 (ククク…)


 『申し上げます! 世界各地に謎の生命体が我々の軍勢を襲っています!』


 幹部専用の緊急通信が入る。

 通話先は、銃声が鳴り響く戦場だ。

 魔物の悲鳴が聞こえる。

 そして異界のモンスターの耳をつんざくような悍ましい叫び声が遠くから聞こえる。


 「何だと!?」

 『意思疎通は不可能、全兵器、全魔術をもってしても効きません! それどころか、増えていく一方で…ハッ! 来、来るな! ガアアアア!!』

 

 通信が途絶える。

 途絶えた瞬間、画像フォルダとメッセージが送られてくる。


 「何だこれは…」

 

 そこに写っていたのは、あの異世界のモンスター達だった。

 一瞬にして全世界の拠点のほとんどが壊滅した。

 メッセージには、この侵攻は、二人の人間がやった事、今朝のファブニール襲撃も二人の人間のうち一人がやったものだ…邪黒戦姫も全て連れて行かれたと書かれている。

 ニーズヘッグは、怒りに打ち震えた。


 「これは我らへの最終戦争への宣戦布告のサインか…」

 「被害が多かったのは、日本の東京です。」

 「東京、ファブニールが死んだのも得大紐…そこに奴らがいるのか…まるで我らを挑発しているようだ。ここにいるぞと」

 「罠ですね。このまま行けば、我々の敗北は確実でしょう。対策を立ててから行きましょう。」

 「そうだな…では、東京に諜報員を放つか…そうすれば、ファブニールを倒したものの正体とあのモンスターを率いる存在がわかるだろう。」

 「そうですね。では、おい…諜報怪人No.99バジリスク…」

 「ハッ…ここに…」


 カメレオンの怪人が現れる。

 

 「東京に向かい、我々を襲った謎の勢力について調べろ。黒幕は二人だそうだ。特に得大紐を重点的に活動をしろ。そして連れ去られた邪黒戦姫を見かけたらすぐに連れ戻しに来い」

 「承知いたしました。」


 諜報怪人No.99は、そう言って透明になって消える。

 

 (ククク…モルモット共め…大人しく元の世界で偉そうにしておけばよかったものを…この世界に介入し、俺が設定したルールを改変した貴様らが悪いのだ。俺の許可を得ず始めた不正なコラボレーションイベントは、削除する。)


 ロキは、そう思い、心の中で笑いながら殺意を抱く。

 ニーズヘッグは、正体もわからない二人に殺意を抱きながら去って行く。


 しばらくして…銀河丘高校では…


 「よう、龍雅。」


 そこには、普通と呼ぶにふさわしい少女がいた。

 黒い髪、平均的な胸の大きさに身長、何処にでもいる少女だ。

 彼女の名は、昨日まで虎太郎だった少女虎美だ。

 隣の席は虎美で、前の席は紗里弥、虎美から見て後ろの席が香織だ。

 

 「虎美か…」


 龍雅は、一目見た瞬間なぜか確信した。

 目の前に居る少女が虎美である事に… 


 「よぅ、虎美」

 「あっ、龍雅…聞いてくれよ。あたしら朝から無理矢理叩き起こされて用事に向かって行ったら何にもなくて何のために起きたんだって話でさ…もう呆れて精神的に疲れて眠くて仕方がねえ…」

 「ハハハ…じゃあ、俺の膝の上で寝かせてやろうか?」

 「お言葉に甘えて…」


 虎美が龍雅の膝の上で眠ろうとした時、香織は、虎美を龍雅から奪う。


 「龍雅…私の虎美を取らないでって前にも言ったよね?」

 

 香織は、龍雅に向かって冷たい殺意の籠った眼で睨みつける。

 

 「悪かった。」


 ――ふむ、女体化百合ですか…大したものですね。紗里弥は、俺と俺のハーレムメンバーと結婚するとしても、あの虎美ハーレムは百合の花園だから邪魔してはダメだね。俺も少しバイセクシャルな訳だが…これはやってはいけないことをしたな…


 龍雅は、そう思い、怖がる振りをする。


 「ハハハハハ…振られちまったな。龍雅…」


 紗里弥は、そう言って、龍雅の肩を叩く。


 「まぁな。」

 「虎美は、無理だが、私を寝かせることは許そう。というか寝かせろ…」

 

 紗里弥は、そう言って、龍雅の膝の上に乗って眠り始めた。


 「ずるい! 私も!」


 奈々は、そう言って龍雅にもたれ眠り始める。


 「ふむ、負荷に問題なし。それどころか癒されるね。」


 龍雅は、そう言って二人の頭を撫でる。


 (奈々と紗里弥いいなぁ…あたしだって龍雅に…)


 虎美は、唇をかみしめ、二人に嫉妬しながら龍雅の方を見る。

 今の香織は、能力者でない為、虎太郎…いや、虎美の心を読めない為、虎美の心情をわかっていない。

 

 (クソッ…香織とは、友人でいたいのに…女同士こんな…あたしは龍雅の事を想っているのに…龍雅…あたしは、親友である事をやめ、龍雅…お前と…)


 ――ふむ、手に入れれない存在は、なお欲しくなるな…けれど、俺にも我慢が必要よな。しかし、以前のように友として接するのは悪い事ではないよな?


 (毎度毎度、虎美に突っかかって…いくら幼馴染とはいえど龍雅には渡さない。)

 (龍雅を守れるのは私だけ…香織は、龍雅に害を成そうとしている…だから近い内に…香織をやらなきゃね)

 (ふむ、これはどうなるのやら…ヤンデレ再発か…さて…香織と奈々いずれ衝突するときは来るだろう。真に守れるのは、数億年龍雅と想い合い続けた俺とそして俺の側室にして龍雅の正室紗里弥だがね。そもそも貴様らが龍雅に守られる立場なんだがな。今は知らないだろう…だが、近い内に世界の滅亡前に知るだろう。龍雅の力を…)


 五人の心の声、今は少女である虎美が抱く龍雅への愛、いずれ香織と奈々が衝突する予感、そして宮弥のその二人をあざ笑うような心の声

 香織と奈々恐らくどちらかが闇に落ちるだろう。

 否、どちらもという可能性もある。

 何故なら、現に二人は闇を抱えているからだ。


 数時間後、放課後…


 「怪物の反応あり! あっちだ!」


 紗里弥達は、そう言って怪人のいる元へと向かって行く。


 ――着いて行けば何かがわかるかもな…魔法少女について…


 ガスマスクを付けた龍雅も、紗里弥達に着いていくように怪人の元へと向かう


 「おやおやぁ? 逃げ遅れた奴がいるなぁ?」


 怪人が龍雅に襲い掛かろうとする龍雅は、「俺に襲い掛かったのがお前の運の尽きだ」と言い、指で怪人を秒速1kmの速度で弾き飛ばし、怪人は大気と指の弾く強さに潰されて爆発四散する。


 「ダークネスガンドに栄光あれ!! グアアアアアア!!!」


 そう怪人の断末魔が路地裏に響く。

 怪人の返り血が龍雅の頬に付着すると、龍雅は、怪人の血を舐め取った。

 

 「雑魚が、俺に歯向かうんじゃあない。」

 

 龍雅は、そう言って紗里弥の方に、向かって歩を進める。

 襲い掛かる敵を血祭りにあげながら――




 「ここかな…?」


 龍雅は、魔法少女たちが戦うと思われる場所に辿り着くと、ビルの屋上に一瞬で登り、そして屋上から紗里弥達を見始める。

 地上では、怪人の襲撃で人々が恐れおののき逃げまどう。

 怪人と戦闘員達は、逃げる人々に襲い掛かると襲われた人々は戦闘員へと変貌する。


 「なるほどな…」


 龍雅は、地上の様子を見ながら屋上に上がってきた戦闘員を軽い裏拳でまるで他人事のように吹き飛ばしていく。


 「ククク…貴様は逃げなくていいのか?」

 「うん? お前は?」


 カメレオン型の怪人が突如として現れる。

 

 「私の名は、怪人バジリスク! 人間、貴様の命を食事として頂く!」

 「へぇ…名乗り口上か…しかし、残念だな。この周りの状況を見てみろ。この戦闘員共は俺が殺した。それでもやるというのかい?」

 「ほう…人間にしてやるようだな。だが、貴様の命運もここまで…怪人は戦闘員よりも遥かに力が強い…運が尽きたのは貴様の方だ。それに私は、怪人の中でも最上級の力を持つ超エリート…魔法少女ですら赤子扱いする力を持っている。」

 「なら、見せてもらおうか…貴様の力をな…」


 龍雅は、何処からともなく異世界で得た邪剣にして神剣、草薙の剣を取り出すと、空が叢雲に覆われ、構えると雨が降り始める。


 「雨? 一体…?」


 バジリスクは、龍雅降らせた雨に濡れ始める。

 龍雅は、雨に濡れながら雨降りを鼻歌で歌い始める。


 「思い知るがいい…魔王の力を…」


 龍雅は、草薙の剣を鞘に納める。


 「ほざけ!」

 

 バジリスクが襲い掛かると同時に龍雅が抜刀しながら、バジリスクの横を超高速で通り過ぎ、刀を鞘に納める。


 「? ククク…何をしたのか知らんが、効かんな…」

 「貴様の人生ゲームは既にゲームオーバーを迎えている。」

 「何?」


 バジリスクがそう言った瞬間、バジリスクの体がバジリスクの気付かぬ間、一瞬で塵芥と化し、風に吹かれて消え、龍雅は、草薙の剣をしまうと、雨は止み、空が晴れた。


 「さて、邪魔者がいなくなったことだし観戦するかな? …! 連れ去られていく!?」


 龍雅は、ビルの上から地上を見下ろすと、そこに写っていたのは、怪人に連れ去られていく七人と得大紐を侵略する巨大な岩の巨人の姿があった。

 怪人は、六人をワームホールで連れ去っていく。

 龍雅がバジリスクを殺す数分前、地上では…


 「フハハハハハ! もっと支配せよ! 全てダークネスガンドに染め上げろ! ハハハハハ!!」 


 悪魔の姿をした犬頭の巨人がそう言いながら戦闘員に指示し、民間人を襲って行く。


 「待て!」


 紗里弥達は、怪人の前に現れた。


 「出たな! 神聖戦姫! 俺は、獄犬怪人ケルベロス!」

 「やれるもんならやってみろ。行くぞ。」

 『転身!』


 紗里弥達は、光に包まれ、


 「我は炎にして氷! 相反する力を司る凍えし灼熱! ミスト・マクスウェル!」


 紗里弥は、赤い氷と青い炎をイメージした魔法少女姿へと変貌し、右手に炎の剣、左手に氷の盾を持った。


 「万能の力を秘めし全てを映し出す魔法の鏡! タイガー・ミラー!」


 虎美は、虎をイメージした銀色の魔法少女に変貌した。


 「電光雷光! 雷電の力を操りし騎士! サンダー・パラディン!」


 緋香里は、電流を纏ったメカメカしい騎士姿へと変貌した。


 「多彩な力を操りし、恋する百合の少女! ホワイトリリィ!」


 香織は、白百合をイメージした魔法少女姿へと変貌した。


 「鉱石金属土塊何でもござれ! 大地の力を持つ恋に熱く燃える乙女! ストーンガイア!」


 奈々は、火山をイメージした魔法少女姿へと変貌した。


 「空間を操りし、異次元の使い手! クィーンウラノス!」


 衣装に宇宙模様のある魔法少女姿へと香苗は変貌した。


 「姉を守りし止まりし時計! クロックストッパー!」


 時計をイメージした魔法少女姿へと芽衣は変貌した。


 『神聖戦姫セイントバルキリー! ここに参上!』


 六人は名乗り終えると、背後に自分達に合わせた色の爆発が起こった。


 「おぉ! 神聖戦姫が来てくれたぞ!」

 「やったわ! これで安心だわ!」


 人々は神聖戦姫が現れると、人々の声は、怪物から逃げる悲鳴から神聖戦姫への歓声へと変わった。


 「早く逃げろ! 殺されても知らんぞ!」


 紗里弥は、そう言って避難勧告をすると、人々は、紗里弥の言う通り逃げていく。

 

 「さて、始めようか…今日はやけに怪人と戦闘員の数が多い…早く片付けるぞ!」

 

 紗里弥は、早速敵勢力に向かって炎と氷の弾幕を放つ。

  

 戦闘員は、炎と氷の弾幕に撃たれて吹き飛んでいく。


 「全く先に始めやがって…行くよ。香織、芽衣」


 虎美は、そう言い、剣を構える。


 「うん! わかった!」

 「行くよ! お姉ちゃん!」

 

 二人は、虎美の後に続き、ステッキを取り出し、戦闘員に攻撃を仕掛ける。

 

 「お嬢様…勝手な突撃は許されませんよ。」

 「いちいちうるせぇな…」

 「それで龍雅君を守る気なの?」

 「は? 奈々、じゃあお前力を見せてみろよ。」

 「こらこら喧嘩しないの! 今は目の前の敵に集中しなきゃ」


 香苗の一言で、四人は纏まり、敵に攻撃を開始する。

 紗里弥達神聖戦姫の攻撃は、鋭く重く強く無数の戦闘員や屈強な怪人たちを倒していく。

 

 「クソッ!」

 「貴様もここまでだ…じゃあな!」


 紗里弥は、ケルベロスの首を飛ばし、そして肉体を切り刻むとケルベロスの肉体は焼失し、ケルベロスが消えるのと同時に戦闘員だったものは全て無傷の民間人へと戻り、元々戦闘員だった存在は消滅し、人々は歓声が沸き上がった。


 「一件落着だな…」


 紗里弥はそう言って、一息ついた瞬間、地面が揺れ、砂埃が舞い始め、その砂埃の中に謎の巨大な人影が見える。

 砂埃の中から無数の怪人や戦闘員が現れると人々の歓声は一瞬で、悲鳴に変わり、逃げ始める。

 謎の巨大な人影が砂埃を振り払うと、そこには巨大な岩の巨人がいた。


 「我は、ファブニールより更に上の力を持つ怪人ウルリクムミ! 貴様らをダークネスガンドの名の元、排除或いは支配する!」


 ウルリクムミ…そう、龍雅があの異世界で戦った岩の巨人だ。

 ただし、強さ、大きさをあの異世界の存在と比べると貧弱で、龍雅なら一瞬で倒せる存在だ。

 だが、魔法少女もとい神聖戦姫にとっては脅威となる存在。


 「貴様ら力はよく知っている。我々にとっては脅威! だが、その分攻略しやすいというものだ。」

 「じゃあ、その脅威を味わってから消えなさい。」


 奈々は、そう言って剣を生成し、斬りかかると、奈々はウルリクムミの拳に吹き飛ばされ、後方のビルに直撃し、ビルが崩れた。


 「大丈夫か? 全く…考えもなしに突っ込んで…」


 紗里弥は、崩れたビルの中から奈々を助け出した。


 「えぇ、大丈夫よ…けれどあの強さ…一体…」

 「ファブニールよりも強いというのは伊達じゃないそうだな。」

 「何を話している?」


 ウルリクムミはそう言いながら、紗里弥と奈々に向かって巨岩を放つと、緋香里は、紗里弥の前に一瞬で現れ、刀で巨岩を切り裂く。

 緋香里の姿は既にボロボロで、血も噴出している。

 他の五人も既にボロボロ…奈々を助け出す一瞬の間にあの巨人は五人の神聖戦姫を一瞬で体力を多く削ったのだ。

 

 「お嬢様! 一旦、引きましょう」

 「あぁ…その前にあいつらを助け出さねば…」


 紗里弥が立ち上がった時、空に雲がかかり、雨が降り始める。


 「雨? 今日は、晴れの予報の筈…」

 「そんな事言っている場合か?」


 ウルリクムミは、地面を叩き。紗里弥と緋香里と奈々を上空へ吹き飛ばし、そして巨大な腕を振るい、三人をビルに叩きつけると紗里弥達の変身が解除された。

 

 「嘘だろ…神聖戦姫が負けた…?」


 人々は絶望し、腰を抜かし、逃げる事も出来なくなる。


 「こいつらの事は、貴様らに任せた。」


 ウルリクムミが、そう数名の怪人に命令を出すと数名の怪人が気絶した紗里弥達を連れ去っていく。


 「逃げろォォォ!!」


 紗里弥達の敗北を目にした民衆は尻餅をつけたまま逃げ始めると、龍雅はビルから飛び降り、ウルリクムミを天地開闢の鋸クルッジで両断する。


 「その名を騙るな下郎…貴様など俺の闘った巨人の足元にすら及ばない。」

 「おのれ! よくもウルリクムミ様を!」


 怪人は、龍雅に攻撃を仕掛けるも龍雅は、裏拳で怪人を吹き飛ばし、天に向かって数多の光弾を放ち、戦闘員に、怪人に滅びの豪雨が降り注ぐ。

 

 「じゃあな。」


 龍雅は、そう言ってその場を立ち去っていく。

 人々は一瞬の出来事、何が起こったのか理解できず呆然としている。


 数分後…

 龍雅は、いったん家に戻り、宮弥の部屋の扉を叩くと宮弥が扉を開けて出てくる。

 

 「何か御用で?」

 「紗里弥達の居場所わかるか?」

 「えぇ、わかります。そして俺の部屋を利用すれば一瞬で、その場所へ赴く事が可能です。」

 「そうか…なら、早速行こう…」

 「よし、行きましょう。」


 龍雅は、宮弥の部屋の中に入ると、真正面に邪悪な気配のする城の扉が現れた。


 「急ぎの用事なんですよね? ですから扉の位置を移動しておきました。さぁ、行ってらっしゃい。あぁ、後ワザと捕まった方が事が速く進みそうですよ」

 「ハハッ…わかった…じゃあ、行ってくる。」


 龍雅は扉を開けると、そこには邪悪な気配が漂う巨城が存在している。

 いかにも敵の本拠地と言える場所。

 邪悪な草木や花が生えている庭園、逃げられない巨城を覆う城壁。

 

 「誰だ!?」


 鎧を着た怪人は、そう言って龍雅に剣を向ける。


 ――ここは演技をしますかね…


 「俺は、連れ去られた紗里弥達を助けるために来た! だから、そこをどけ!」

 「なら、尚更通す訳には行かねえな! 安心しろ! お前を倒したらすぐに捕まえて紗里弥とかいう奴らの元に連れてってやるからよ!」


 龍雅は、構えると怪人も構える。


 「行くぞ! 怪人!」


 龍雅は、怪人に対し、殴りかかると、怪人は龍雅の後ろに一瞬で回った時、龍雅は背中に血糊が詰まった水袋を生成し、全身の力を抜くと、怪人は剣で龍雅を斬り、背中から大量の血糊が噴き出す。

 龍雅にとっては怪人の動きは、眠っているように遅く感じられる。


 ――弱いな…蚊に刺された方がマシだ。


 龍雅が頭でそう思った後、痛がる振りをする。


 「おいおい、そんな力で助けようと思っているのか?」

 「うるせぇ!」


 龍雅は、怪人に最弱の力加減で殴ると、怪人は少し後退しつつも受け止めた。


 「なるほど攻撃力は悪くないようだ。決めたぞ。お前を怪人化させたらダークネスガンドの為に役に立つかもな…」

 「俺は、そんなのに屈しねえぞ。」


 龍雅は、口から血糊を吐きながら言う。

 まるで本当に痛がっているようだ。


 「そうか? 怪人の力は素晴らしいぞ? 俺は元は人間だった…お前のように怪人を嫌っていたが、ニーズヘッグ様からの寵愛を受けてからはその認識は変わったよ。人間が愚かに見えて仕方がない。この怪人の力…お前なら理解できるはずだ…人を超えた力を…」


 ――人ならざるものの力か…フン…そんなもの既に手に入っている。そしてもはや俺は人間ではない…悪魔だ。


 「理解できんな…いや、理解したくもないね。」


 龍雅は、立ち上がり、最弱の力加減で怪人を連続で攻撃する。


 「手負いの虎は手ごわいか…」

 「それを言うなら手負いの龍だぜ。」

 「そうか…だが、お遊びもここまでだ。すぐに理解できるだろう。我らの力を」


 怪人は、力を為始め、渾身の一撃を放とうとする。


 ――なら、まんまと入り込ませてもらおう。相手の攻撃ヒット時、睡眠技を自分に掛ける。


 龍雅は自分に時限性の睡眠技を掛けると同時に、怪人の衝撃波が放たれ、龍雅は、衝撃波を受けると大きく吹き飛び、そして眠った。


 ――さて、内部から潰しにかかるとしよう。


 龍雅が眠り落ちる前、そう思い、意識を失った。


 

 

 数時間後、牢獄…


 「ここは何処だ?」


 異臭漂う牢獄。

 腐った肉の匂い、薬品の匂いなど鼻に来る匂いが充満している。

 壁や天井、檻は全て何かの肉塊で出来ており、気味悪くピクピクと脈動している。


 「起きたか…」


 牢屋の前にニーズヘッグが現れた。


 「お前は?」

 「我が名はニーズヘッグ…ダークネスガンドの王である。」

 「へぇ…組織の長が何の用で?」

 「随分と余裕だな。」

 「どうせ、人間として殺され、傀儡にされる事は分かってるからね。いっそのこと俺を殺してくれればそれはそれでいいんだが?」

 

 龍雅は、そうニヒルな口調で言う。


 「そうか…だが、貴様もお前が助けようとしたものと同じく我が物となってもらう。」

 「やれるもんならやってみやがれ…」

 「…連れて行くぞ。」

 「はい!」


 複数人の怪人が龍雅の事を取り押さえ、ニーズヘッグと共に何処かへ連れて行く。



 「ここは…」


 そこはニーズヘッグの玉座だ。


 龍雅は、玉座につくと取り押さえていた怪人の腕ごと体を引き千切る。


 「腕っぷしは神聖戦姫並みの力のようだ。だが、そいつらは最下級の怪人…その程度の力では我にたてつく事は出来ん。さて、貴様が会いたがっていた奴らとのご対面だ。」

 

 ニーズヘッグが玉座に一瞬で移動し、指を鳴らすと、龍雅の目の前に七人の少女が現れる。


 「紗里弥? 虎美?」

 

 龍雅は、やっと出会えたような顔をし、近付く。


 「来て…龍雅…」


 奈々と香織は、そう言って紗里弥と緋香里と共に龍雅を誘う。

 虎美は、香織、芽衣を抱き寄せる。


 「…お前ら…ふむ、怪人の手に堕ちたな?」


 龍雅は、紗里弥達の状態を見て、全てを理解したのだ。

 こいつらは悪に堕ちていると…

 

 「それが何が悪いというのだ? あの番人の言っている通り怪人の力は素晴らしい。私の夫である龍雅ならこの力も気に入るはず…さぁ、人の体を捨てて怪人になろう。今なら私の奴隷にしてやろう」

 「いや、俺は怪人にはならんよ。絶対にね。」


 ――俺がもし怪人なるのならば英雄に殺されるべき存在怪物だがね…今の俺は怪人以上怪物以下だ。完全なる怪物になっていない。俺は主人公に倒されるラスボスになりたいのだ。


 「そうか…じゃああたしたちの生まれ変わった姿を見て、死んで。」


 虎美は、指を鳴らすと無数の戦闘員と怪人が現れる。


 「さぁ、見て、龍雅君! 私達の生まれ変わった姿を…転身!」


 六人は紫色の妖しい光に包まれ、魔法少女姿が禍々しい闇に染まり、そして危険で妖しい色気のある色、装飾が追加された姿へと変貌した。

 その姿は悪堕ちした魔法少女といえる姿で、


 「さぁ、覚悟しなさい。折角のチャンスを無下にした貴方が悪いんだから…」


 紗里弥達は、龍雅に襲い掛かる。


 「もはや隠す必要もなくなった…」


 龍雅は、紗里弥達の攻撃を全て受けながし、そして雄叫びを挙げると紗里弥達は、吹き飛んでいき、そして龍雅は、クルッジを取り出し、大量の敵を空間ごと切り裂く。

 

 「貴様、何者だ! セイントバルキリーでもなく怪人でもない癖にどうしてそれまでの力を!」

 「俺か? 俺は、人が生み出した人の形をした人ならざる悪魔、怪物の血を持つ新人類…能力者だ。怪人とかいう紛い物と違って俺達こそが真の怪人だ。」

 「貴様が怪人だと…? まさか、貴様、あの軍勢の…」

 「そう、俺が貴様らを襲った怪物達の王だ。」

 「ひどい…」

 「酷い!? なら、貴様らのやった所業を思い出してみろ! 無辜の人々を襲い、支配した。俺はこれに対する復讐の為にお前らを潰した。これは人類からの報復行為だ。これは人類と貴様らの戦争だ! 報復されても仕方がないだろう!」

 「それでも、あまりにも過剰な戦力だとは思わないの?」

 「過剰戦力? 百万匹程度のあれでか? あんなもの我らの軍勢の0.001%に過ぎない! かつて軍力を全て壊滅させたことのある俺にとってはな…いや、あぁ、そうか…地球の戦力で換算すると、最弱の怪物一匹でも戦略核千発分の戦力だから十分だったか…まぁいい…あいつらを一匹も倒せなかった貴様らでは俺を倒す事は出来ん…その力を手放し、降伏をおすすめする。」

 「出来ないわ。」

 「そうか…なら、地獄を見るしかなさそうだ。」


 龍雅がそう言うと、アポカリプティックサウンドが城中に鳴り響いた後、龍雅は真っ黒い霧に包まれた後、霧は白黒の虚無の炎へと変化し、闇黒と黄金の神々しくも禍々しい混沌めいた機械の鎧を身に纏った。

 黒の部分は、光をも掻き消す無間の闇になっており、まるで深淵のようだ。

 所々に龍の鱗が存在し、その鱗は、邪悪な力を秘めているようだ。


 「魔王の鎧ver2.5…全てを反射する力と全てを吸収する力を併せ持ち、そして更に異世界の力も兼ね備わった究極の鎧…さて、覚悟は良いか?」


 龍雅は、そう言って黒青紫の闘気を纏う。


 「我もやらねばならんようだな…我は貴様に復讐する。」

 

 ニーズヘッグも立ち上がり、戦闘態勢に入る。


 「いいぜ。いくらでも来な。」


 龍雅は、そう言い、挑発する。


 「俺も混ぜてくれませんかね?」


 ロキが龍雅の後ろから現れ、戦闘員を斬り殺す。


 「ロキ! 貴様! 何のつもりだ!?」

 「ロキ様! 何を!?」

 「何のつもりかって? 俺は帰るつもりだ。元の世界にな。」


 そう言って仮面を脱ぐ。


 「宮弥!? どうして!?」

 「こいつは、共犯者だ。お前らを襲った軍勢に指示出していたんだ。そしてこいつは俺を超える力を持つ者…お前らの負けだ。」

 「おのれ…! 撃て!」


 ニーズヘッグがそう言うと、戦闘員達は魔弾を龍雅に撃ち込むが、全て反射されていく。

 

 「宮弥!」

 「はい!」


 龍雅と宮弥は、所有する武具、全てを展開し、紗里弥達以外の全ての敵に標準を合わせ、放ち、ニーズヘッグと紗里弥達以外の全ての敵が消滅する。

 ニーズヘッグは、龍雅と宮弥の攻撃を受け、ボロボロになっているが、すぐに肉体を再生し、元の状態へと戻った。


 「おのれ…龍雅!」

 「俺はニーズヘッグの相手をします。貴方は紗里弥達を…」

 「わかった。存分に痛めつけてこい」

 「わかりました。」


 龍雅は、紗里弥達を壁際へと追いやり、そして玉座の間を死毒ヴェノム煉獄インフェルノで二分させた。


 「あの炎は、不浄の煉獄…地獄の悪魔でさえこの穢れには耐えきれぬ。」

 「まるで本当に地獄に行ってきたみたいな言い方ね。」

 「そうとも、俺は地獄に行った。そしてそこで俺は、心技体全てを鍛えた。…なぁ、本当に捨てる気はないか? そして本当のお前らに戻らないか?」


 龍雅は、椅子を生成し、座り言う。

 

 「それは神聖戦姫に戻れって事?」

 「いいや、違う。お前らは元は俺と同じ同胞なんだ。つまり能力者…そして今のお前らは、完璧な力を手にしていない。能力者に戻れば、その力以上の力を手にする事が出来る。悪い事は言わない。さぁ、怪人の力を捨てて、能力者に戻ろう。神聖戦姫としての責任も、邪黒戦姫としての服従もなく力を振るえる。力を自由に振るえるんだ。そして俺と一緒に面白楽しく人生を過ごすんだ。」


 龍雅は、紗里弥に言われた事をそのまま返し、七人に手を差し伸べる。


 「…いいや、あたし達は、戻らない。ニーズヘッグ様への服従こそがあたし達の喜び…」

 「そうか…なら、仕方ない。少し痛い目にあってもらう。」


 龍雅は、無数の光弾を生成し、紗里弥達に襲い掛かり、紗里弥達は光弾に撃たれ、一瞬でボロボロになる。


 「これが能力者の力…」

 「人の領域を遥かに超えている…勝てない…」

 「つまらんな…よし、ハンデをやろう。」


 龍雅は、そう言い、自分の両腕両脚を消失させる。


 「龍雅!? 何やっているの!?」

 「俺の四肢を破壊した。これで俺は手も足も出ない状態になったそのままの意味でな。これなら届くだろう。更に鎧も脱いでやる。」


 龍雅は、そう言ってズボンだけの姿になった。

 ズボンの無い脚の部分は、ヒラヒラと風にあおられている。

 

 「嘗めるな!」


 紗里弥達は、龍雅に一斉攻撃するも、全く効かない。


 (防御能力も高いのか!?)


 龍雅は、目から光線を放ち、紗里弥達を吹き飛ばす。

 

 「来いよ。」


 紗里弥達は、再び龍雅を攻撃するも吹き飛ばされる。

 その繰り返しだ。

 何度策を練ろうと同じ結果になる。

 遠距離だろうと至近距離だろうと…


 「ハァ…ハァ…この力を持ってしても勝てないなんて…」


 香織は、跪き、荒い息を立てながら言う。


 「お嬢様…ここは降伏いたしましょう。」

 「クッ、認めるしかないのか…負けを…」

 「いいや、まだよ! あたし達は諦めない!」


 虎美は、そう言って全員に勇気づける。

 

 「えぇ、まだ私達は生きている。だから立ち上がることができる!」


 香織は、そう言いながら立ち上がり、芽衣の手を取る。


 「例えそれが負けると知っていても私達には譲れないものがある!」


 芽衣は、立ち上がりながら、奈々の手を取る。


 「例え悪に堕ちても、私達の心にある剣はまだ曲がってない!」


 奈々は、香苗の手を取る。


 「目の前にいる絶望に私達は何度も立ち向かっていった。だからこれくらいどうって事ないわ!」


 香苗は、緋香里の手を取る。


 「そうでしたね…私達は、何度も立ち上がってきた。だから今度も乗り越えるだけ!」


 緋香里は、紗里弥の手を取り立ち上がる。 


 「フッ…ならば、行くぞ! 目の前にいるラスボスを倒し、怪人の理想郷を作り上げる!」


  七人は、立ち上がり、龍雅に向けてそれぞれの武器を向ける。


 「力の差をわかっているのに尚、俺に挑むか…よかろう…審判の時だ。完全なる絶望を与えてやろう!」


 龍雅は肉体を再生し、魔王の鎧を纏い、黒青紫の闘気を纏い、闘気は、悪魔の翼の形へと姿を変える。

 

 「さぁ、こい!」


 紗里弥達は、龍雅に向かって走っていく。

 龍雅の光弾で一人また一人と気絶していく。

 虎美は、たった一人龍雅の光弾を回避し、そして龍雅に渾身の一撃を与えると、その一撃が跳ね返される。


 「さて、終わりだ。」


 龍雅は、そう言って虎美のデコを弾き、大きく吹き飛ばす。


 「真のお前達はそんなもんじゃない…さぁ、元に戻る時だ…」


 龍雅は、黒い影で六人を覆い、そして数秒後、六人は変身が解け、目を覚ます。


 「龍雅…すまなかった。」


 龍雅は紗里弥に手を差し出し、紗里弥は、龍雅の手を握り、立ち上がる。

 

 「思い出したか?」

 「あぁ、思い出した。そして私達に掛けられた呪縛も解けたようだ。この通り力も使える。ふむ、素直に能力者に戻っておくべきだったな。それに、何故私達が奴に従っていたのかわからない。」


 紗里弥は、そう言って本気の邪黒戦姫以上の威力を持つ炎と氷を軽々と発生させ、消す。


 「そっか…あたし消えるんだ…」


 虎美の声がする。

 龍雅が後ろを振り向くと、虎美の体が徐々に消えていくのが目に見えた。

 虎美は、龍雅に近付き、倒れようとすると、龍雅は倒れる虎美を受け止める。


 「虎美…お前消えるのか?」

 「そうみたい。わかった事があるんだ。あたしは偽者の存在なんだって…あたしは、お前の消えた親友虎太郎の役割を担う影法師。偽物は消えるだけ…だから悲しくなんてない。」

 「…いいや、お前は偽者なんかじゃない…れっきとした本物だ。お前は、お前だ。虎太郎じゃない虎美という一人の人間だ。」

 「そう、よかった。あたしが消えた時、お前の記憶以外からあたしの存在は抹消されると思うから、最後に伝えさせて…あたしは、龍雅の事が好きだった。愛してる。この記憶が偽物だとしても…あたしの想いは本物よ…そしてもう一人のあたしの事もよろしくね。」

 「あぁ…わかった…」


 虎美は、龍雅に深いキスをし、ゆっくりと目を閉じ、消えてなくなる。


 「虎美…」


 龍雅の目から涙が落ちる。

 いなくなった虎美の姿を頭で思い描き、何もない場所を抱きしめる。

 しばらく経ち、涙を拭い立ち上がる。

 龍雅の後ろに、光が集まり、人の形になっていき、光の集合体は虎太郎へと変化する。

 虎太郎は、目を開け、周りを見渡す。


 「ここは何処だ? 俺は一体…」

 

 虎太郎は、そう言って警戒する。


 「よぅ、虎太郎。」

 「なぁ、龍雅…何で泣いているんだ?」


 龍雅の目から一筋の涙がこぼれ落ちる。


 「いや、泣いてなんかいない。」


 「まだ終わっていないようだ。」


 龍雅は全員に回復を掛ける。


 「受け取れ!」


 紗里弥は、龍雅以外の全員に指輪を投げ渡す。


 「これで変身するぞ!」

 「何が何だかわかんねえがやるしかなさそうだな!」

 『装着!』


 龍雅は、魔王の鎧を装着し、虎太郎は銀に輝く機械的かつヒーロー的な鎧を身に纏い、無間の黒のマントを靡かせる。

 そして紗里弥達は、邪黒戦姫と神聖戦姫両方併せ持ったかのような姿になった。

 黒い部分は一部無間の闇になっており、あの全員の装備にあの影衣が使われているようだ。


 「さぁ、決着の時だ!」


 毒炎は消え去り、宮弥は、鎧を身に纏う。


 「えぇい! こうなったら! 最終兵器を使うしかあるまい!」


 ニーズヘッグは、スイッチを押すと龍雅達は、城の外へと弾き出され、そして城は、巨大な竜と化し、龍雅達に対し、全ての砲台を向ける。


 『これこそ我が最終兵器! テュポーン! フハハハハハ!! この兵器は、戦略核数億発分の力を持つ! 貴様らの最後だ!』

 「数億発? そんなもんで俺達に勝てるとでも思っているのか!? 行くぞ! 最終決戦だ! 一気に決めるぞ!」


 龍雅達とニーズヘッグは、力を為始め、大気が大きく揺れる。

 

 「「「「「「「「喰らえェェェェ!!」」」」」」」」

 

 龍雅達は、それぞれの能力の特徴を生かした砲撃を放ち、収束し、一つの光線と化す。


 『死ねええええええ!!!』


 ニーズヘッグも、テュポーンの主砲から全てを滅ぼすような光線を放つ。

 二つの光線がぶつかり合い、押し合う…が…


 『クソッ…また我は負けるのか!』


 龍雅達の光線が、押し、テュポーンに直撃し、テュポーンごとニーズヘッグは彼方へ吹き飛ばされ、超巨大な大爆発を起こす。


 龍雅達は、変身を解き、歓声を上げ、空が晴れ、夕日が龍雅達を照り付ける。


 数時間後、ある廃墟では…


 「ハァ…ハァ…おのれ…龍雅め…この借りはいずれ返す…」


 ボロボロのニーズヘッグはそう言い、立ち去ろうとすると、ニーズヘッグの前に宮弥が現れる。

 

 「俺は、お前達の世界の主であり、この世界の主…」

 「宮弥ィ! 貴様ァ!」

 「ゲームエリア外の存在は、削除する…バグを修正せねば、世界は動かせまい。」


 宮弥は、そう言って指を鳴らすとの体は動かなくなり、宮弥は、白銀の鍵剣を取り出した。


 「やめろ…」

 「安心しろ…この世界のお前は消えるが、お前達の世界のお前達は消えない。別ファイルの世界にバグを起こしたこの世界のお前という個体は、俺のルールに逆らった為、永遠に消える。…削除…」

 「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「ハハハハハ!! 貴様が悪いのだ! 大人しくお前の世界でお山の大将を演じ続けていればよかったものを! この世界に顕現し、この世界のルールを変更し、俺と龍雅の愛の巣を汚した罪に懺悔する暇もなく無に帰せ!」


 宮弥は、狂乱したように怒鳴り散らし、ニーズヘッグを切り裂くと、ニーズヘッグは、一瞬にして消滅した。


 「さて、これであの異世界の価値は見いだせた…後は少し手を加えてから物語を始めるとしよう。あれはあれでいい世界だからな…ダークネスガンド…その一部は、この世界の設定として輸入している。罪を負った愛しき我が竜よ…いずれ貴方は、知るだろう…この世界での貴方の出生を…そしてこの世界に満ちた魔力は、真なるモノではないが、この世界に生きる能力者の成長を促す力を持つ…既存の大陸の存在しないもう一つの異世界に満ちる魔力は、成長能力を持ち、更にお前達の能力者の力を引き出す真の…」


 宮弥は、そう言い、立ち去る。

 かくしてバグは修正された。

 世界は元に戻り、また普通かつ異常な生活が始まるだろう。

 怪人が支配しようとしていた世界ではなく能力者という”真の怪人”が支配する世界で――

投稿遅くなりました。

申し訳ございません。

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