第斜拾斜話《女神の悪戯、猫耳事件》
龍雅は、猫耳の美少女のアニメを見ていた。
「猫は良い…」
龍雅は、バレンタインに貰ったチョコを食べながらそう呟いた。
龍雅が食べているのは、とある後輩から貰った義理チョコだ。
八割義理で二割本命だった。
半分の義理チョコのバレンタインカードには、龍雅という高嶺の花に対する諦めという悲哀な文章ばかり書かれている。
――本命か…俺はハーレムなのはわかっているが、ふむ、どうしようか…いいや、俺は美貌というメッキで抜き固められたクズである。俺は俺が選んだ者のみしか付き合わない身勝手な男だ。すまないがお前らの気持ちは答えられそうにないな。ん? このチョコは…
そのチョコには、写真が貼られていた。
肌も髪も真っ白な長髪で、赤目のアルビノの美少女だ。
龍雅からして見れば女性よりの体の細い中性的な少年だ。
服装も男女どちらともとれるような服を着ており、天使のように美しく花に例えるなら白百合のようで、夏の浜辺に居る白い服の似合う少女のよう。
手紙には、「我が親友龍雅へ…僕の事を覚えているかい? これは、今の僕の姿だ…僕の昔の姿はもうない…君は、もう僕の事を覚えていないかもしれないけどね。いきなりだけどこのチョコレートは、君への友愛の印だ。受け取ってくれ…いずれまた会おう。■■■■■■■■■より」と書かれていた。
最後の〇〇よりの部分は、黒くグチャグチャに上書きされており、何を書いていたのか分からなくなっている。
「何故だ? 明らかに少女に見えるのに、男と脳が錯覚している。お前は誰だ?」
そう疑問に思った瞬間、急に頭痛が襲い掛かってくる。
そして意識が遠くなっていき、倒れる。
倒れる一瞬、写真は、龍雅を見て、ニヤリと笑っている様な気がした。
一時間後…
龍雅はベットの上で目を覚ました。
白い少女の写真は、壁掛けの小さな額縁に飾られており、誰かが龍雅をベットの上に寝かせ、写真を額縁に入れたようだ。
龍雅は、起き上がると、写真を手に取り見る。
――…謎の少女…お前が何者なのか知らないけど、お前が俺のかつての親友だというのなら…俺はお前を受け入れよう。どんな姿でもな…お前は、小さい頃、何処かであって毎日のように遊んでいた気がする…あれは虎太郎、芽衣、香織そして宮弥もいたような…
龍雅は、頭に過る朧げな白い靄にかかったような記憶を思い出す。
そこには、龍雅達五人と黒い靄にかかって見えない人型の何かと遊んでいた。
遠い遠い夢のような記憶、思い出すだけで何故か目から涙が流れる。
龍雅は、涙を拭い、写真を壁に飾る。
――もしかしてお前なのか? 龍輝…
龍雅は、そう思いながらポーチを確認すると、白い少女から貰ったチョコがいつの間にか入っていた。
――さて、これを片付けたのは、誰だ? 宮弥か? まぁ、いい…さて、今日は猫の日だったな。どうしようか…どうしようもこうしようもねえけどな。
龍雅はそう思い、パソコンに映し出された自作の猫耳を生やした二次元の美少女の絵に視認し、もう片手で空を摘まむと、片手にその画像が描かれた紙が現れた。
――よし、印刷完了だ。この能力を応用すればいかなる画像もコピー出来る。素粒子があればの話だが…
「さて、どうしようか…」
「ん? 猫耳娘の絵ですか…そういえば今日猫の日でしたね。」
宮弥は、ドアを叩かずに入り、龍雅が印刷した絵を見る。
「まぁ、そうだな。」
「では、今日に合わせてやってみましょうかね………デバッグ開始…」
宮弥がそう小さく呟き、指を鳴らすと、宮弥と龍雅に猫の耳と尻尾が生えた。
「ん? 何かしたか?」
「いえ、何も…」
「そうか…」
龍雅は、猫耳に気付かず、尻尾を動かしながらそう言う。
「ん? 何だ? 何かを動かしている感覚があるな…それに聴覚が数倍にも…」
龍雅は、そう思い、鏡を作成し、自分の姿を見ると、は? という顔をした。
「何だこれ…猫の耳と尻尾? は? 何で、猫耳生やしてんだ…」
「勿論、俺の仕業です。」
宮弥は、猫耳と尻尾を動かしながらクククと笑う。
「可愛い…」
宮弥の猫耳姿を見た龍雅はそう言って、近付いた。
「えっ、何…」
「そんな恰好をして俺を誘っているのか?」
「いや、そんな事は…」
「ククク…猫というのは肉食動物だ。それに俺は、肉食系だ。猫という要素が付け加えられたことにより、俺の中の肉食性が増幅してしまったんだ。ならば、俺をこんな風にしたお前が悪いんだぜ。」
「やめっ…」
そう言った時、龍雅は、宮弥の尻尾を掴んだ。
「やめないよ。」
龍雅が、宮弥の服に手を掛けようとしたその時――――
「おい! 宮弥! お前だろ! こんな事やったのは!」
虎太郎が瞬間移動で、龍雅の部屋に侵入して、宮弥に頭についた猫耳を指で刺しながら言う。
龍雅は、虎太郎が現れた時、手を止めた。
「さぁ? 何の事でしょうか? 私は何も知りませんよ。」
「嘘付け…というか…兄妹で何やってんだ。」
虎太郎は、龍雅が宮弥の尻尾を掴んで、服を無理やり脱がせようとしているのを見てそう思った。
「何もしてねえぜ。」
龍雅は、そう言いながら、はだけた姿の宮弥を後ろに隠した。
「そう何もないですよ。」
「…お楽しみの所すまなかったな…」
虎太郎は、そう言って瞬間移動で、立ち去ろうとすると――
「というか待て、お前何、人の家勝手に入ってんだ?」
「あっ、そうだった。とりあえずこれ戻しておけよ!」
虎太郎は、そう言って瞬間移動で、立ち去って行った。
「さて、情欲に走るのもいいですけれど、少しムードと時間を考えてくれませんかね。」
「ふぅん…じゃあ、夜ならいいんだ?」
龍雅は、そう言って獣のような目で宮弥を見る。
「は…はい…」
「ははっ、嘘だよ。」
「えっ?」
「情欲の事ばかり考えている俺だと思っているのか? 俺は、欲望にこそ生きるが、無意味にお前を襲ったりはしないさ。」
「そう…ですか…」
宮弥は、そう残念そうな顔をした。
――可愛い奴だ。
龍雅は、そう宮弥の頭を撫でる。
撫でる度に宮弥の猫耳と尻尾があざとく動き、宮弥の頬が赤くなり始める。
――…これ以上やると俺の理性が失っちまいそうだ。
龍雅はそう思い、手を止める。
「さて、今から紗里弥んちに行く。紗里弥は、どうなっているか見たいしな。」
「じゃあ、俺の部屋に来てください。近道をしますよ。」
――近道?
龍雅が、そう思い、宮弥に手を引かれいく。
宮弥の部屋に入ると、そこは、以前の宮弥の部屋とは違う異世界へと出た。
真っ暗な世界だ。
だが、円状に無数の扉が並んでおり、扉一つ一つが色も形も違う。
中には、宮弥の部屋の扉や、あの異世界の城の扉もあった。
「ここは?」
「ここは、大規模イベントとさぶサブイベント以外の色んな時代や場所に移動する為のチート世界ですかね。色んな場所に移動出来ます。勿論、あの何億年も彷徨った地獄の様な異世界にもね。」
そう言い終わるとある扉を指さした。
指先にある扉は、無数の鍵や鎖がかかっていて如何にも入るなという事が伝わる扉だ。
「あの扉の先の世界は、様々な大規模イベントに繋がる扉が無数に存在します。まぁ、解放できるのは、チートモードを解放してからですけどね。」
宮弥は、そう言ってフフッっと笑った。
「サブイベントってなんだ?」
「サブイベントですか、まぁ、この日常の事を指しますね。一週間に一回か二回にかけて起きるイベントの事です。」
「そうか…何か、この人は関係ない話をしちまったな」
「まぁ、いつもの事です。貴方だってこのサブイベントとは関係ない事を言ってましたよね。しかも伏線も張って…いや、それは俺にも言えた事か…」
宮弥は、そう言い、龍雅と共にある扉に瞬間移動し、扉を開けた。
「ん? 龍雅か…聞いてくれよ。いや、見てくれよ…猫耳と尻尾がいきなり生えて…ってお前らもか…」
紗里弥は、そう言って、猫耳に指を指すが、龍雅を見た瞬間、あっ(察し)という顔をした。
「ふむ、差し詰めお前だろうな。宮弥…所で、何か用かにゃー? このテンプレ黒髪赤目美少女の私にー」
紗里弥は、自虐的に猫語を言い、ニヒヒと笑った。
「うん、お前にしか頼めない事がある。コスプレしてくれないか?」
「ふむ、なるほど…そう言う事か…今からコスチュームを持ってくるから少し待て、後宮弥を少し借りるぞ」
紗里弥は、そう言って宮弥を連れて別室へと向かい、二人は首輪をつけてセーラー服姿で戻ってきた。
「どう似合うかな?」
紗里弥は、そう言って龍雅の腕に抱き着いた。
「あぁ、似合っているよ。」
龍雅は、そう言って二人の顎を撫でる。
猫の要素が入っているからか、二人はだらけた表情になる。
「可愛いなぁ…こいつら…写真撮ってもいいか?」
「俺は良いですけど、紗里弥は?」
「大丈夫だ。」
二人はポーズを取ると、龍雅はカメラで写真を撮った。
「次は、これで」
龍雅は「いいね。」「可愛い」など誉め言葉を言い、メイド服、裸エプロン、スク水、ゴスロリ、着物、体に合わない白シャツ、衣装チェンジ、ブレザーなどに着替えさせ、写真を撮った。
「疲れた…」
二人は、バテンと倒れ、荒い息を吐く。
頬は疲労で赤くなり、汗を流す。
尻尾も力が抜ける。
「撮影は終了だ。フフフ…目副目福…」
龍雅は、そう言って笑い、写真をポーチに収める。
その時、数件のメールが龍雅のスマホに入る。
「ん? 何だ?」
龍雅は、メールを見ると、虎太郎が猫耳の生えた虎太郎ハーレムに襲われている画像が添付された助けを求めるメールと香苗、奈々が猫耳を生やし、今から行くと書かれたメールが届いていた。
「お嬢様! 私の体が…って龍雅さん!? 何でここに!?」
「来たわよ。さて、宮弥、どういうことか説明してもらうわよ?」
――おやおや、騒がしくなってきたぞぉ…
龍雅は、そう思いながら心の中で笑う。
「宮弥、まだ戻していなかったのか!?」
虎太郎は、そう言いながら虎太郎ハーレムを抑えながら現れる。
屋敷が煩くなる。
虎太郎は、虎太郎ハーレムに取り押さえられ、騒ぎ出し、奈々、香苗、緋香里は、宮弥をガミガミと問い詰める。
龍雅は、この状況を傍観し楽しむ。
紗里弥は、青筋を立て始め、数十秒後ついに。
「あぁ、もうテメェらうるせえ!!」
紗里弥は、髪を逆立て、そう叫ぶと、紗里弥の屋敷の上空に大爆発が起き、全員が驚き、飛び上がり、ガラスが揺れ、雪は解け、辺りは静まる。
「宮弥、早くさっさと戻せ! いつもの数倍煩くてかなわん! 全く…はぁ…宮弥、こんなことするなら一言言ってからにしろ。全く、今日が猫の日だからって唐突に私達を猫の要素を追加にするなんてな…さて、宮弥…この騒動について償う?」
「………あっ! 俺、今から姉さんのボディーガードのバイトの時間だ! では、これにて!」
宮弥は、黒服とサングラスに一瞬で着替えてそう言い、指を鳴らし、全員をもとの状態に戻した後に、窓をすり抜け逃げ出す。
「「「待てぇぇ!!」」」
龍雅以外の被害者達は、宮弥を追いかけ始める。
一方龍雅は、猫の縫いぐるみを抱いて宮弥の屋敷のこたつの中で眠っている。
「猫はこたつで丸くなる~♪」




