第斜拾肆話《極星院のある休日の昼と夜》
「やァァァ!!」
紗里弥は、緋香里と木刀で打ち合っている。
「甘いですよ。」
「グハッ!」
緋香里は、紗里弥の隙を軽く木刀で突き、紗里弥を吹き飛ばす。
「ならば…」
紗里弥は、氷を生成し、叩き割ると固体窒素のフィールドが展開された。
地下室の温度は一気に低下し、あらゆる物が凍え始める。
「さて、始めよう…」
何故、二人が戦っているか…それは数分前に遡る。
「お嬢様、来ましたか…」
緋香里は、雪の積もった庭の真ん中、地下室前に立って紗里弥を待っていた。
「あぁ、さっそく始めよう。いつものトレーニングを」
「はい。お嬢様も力がついて来たので、そろそろ私も本気で参りたいと思います。」
「ほぅ? では、龍雅の時は本気を出さなかったと?」
「いえ、あれは正真正銘本気の力でした。ですが、龍雅さんの力は、私の力を上回っていた。それだけの事です。まぁ、どちらにしろ。私達が勝利を収めましたけど。」
「まぁ、いい…行くぞ。」
「えぇ…」
紗里弥は、地下室のロックを解除し、開錠し、二人は地下室に入っていった。
これが、戦いが始まる前の事の顛末である。
紗里弥は、氷の弾幕を張り始める。
緋香里は、全身から超強力なマイクロ波を放ち、氷を溶かし、無効化していく。
紗里弥は、マイクロ波の影響を受けず行動しており、緋香里もまた固体窒素の影響を受けず行動し続けている。
それもその筈、自分の能力と同じ種類の能力でやられては、自分の能力が耐えられるわけがない。
その属性の能力を持っているという事は、その属性の能力に対する耐性を持っているのと同じ。
紗里弥は、次に炎を放ち、地下室の半分がプラズマのフィールドと化す。
二人の木刀は燃えてなくなると、二人か模造刀に持ち変える。
冷気と熱気が衝突しあい、深い霧が立ち込める。
二人は、深い霧の中で戦闘を開始する。
緋香里は、炎のフィールドによる能力の影響を多少は受けつつも平然としている。
二人は衝突しあう。
その戦いは、数時間休まずに続く。
「そこだ!」
紗里弥は、緋香里の刀を弾き飛ばしたが、ワープ装置の能力、瞬間移動を使い、刀を回収し、斬りかかるが、紗里弥は回避し、両腕にフィールドに展開している熱気と冷気を収束させ、緋香里に放つと、緋香里は、リフレクト能力を使い反射する。
二人に熱が入ってしまい、もはや仕合いになっている。
(さて、お嬢様の次の一手はどうなるか…)
(緋香里は、どう動く?)
地下室に静寂が訪れる。
だが、二人の心の騒めきは静まらない。
天井から落ちてくる一滴の水滴が地に落ちると、二人は、消え、高速戦闘を開始した。
戦闘で衝突する度、氷と炎と電が飛び散る。
緋香里は、一度後ろに下がり、手を挙げ、電力を吸収し、フルチャージの状態になり、体が青白く光り始め、電気を帯び始める。
「第二ラウンド開始です。」
緋香里は、体に纏っている電気を膨大化させ、そして紗里弥との距離を一気に詰め、一閃を放つ。
リフレクト能力で、緋香里に伝わるべき衝撃が紗里弥に向かい、威力は二倍と化す。
紗里弥に成すすべはないが、紗里弥は、攻撃しても無意味だと理解している為、時間稼ぎの為に目潰しのような攻撃を連続で行っている。
(電力の配給を止める場所は何処だったか…いや、そんな事をせずとも…こうすればいいだけの事…)
紗里弥は、地下室中の電気が通る場所をひたすら攻撃し、電力の配給を止めた。
(これで緋香里は、チャージ出来なくなった。電力が無くなれば緋香里はただの人間に近い。後は電力が切れるまで待つのみだ。)
紗里弥は、緋香里の攻撃をひたすら回避する。
緋香里は、電流を纏った追尾式の弾幕を張り、紗里弥の逃げ道を塞いでいく。
(電力配給は止まった…なら、節電か…)
緋香里は、リフレクトを解き、攻撃を仕掛ける。
(よし、リフレクトを継続出来るほどの電力が無くなったか…ならば…ここが攻め時だ!)
(かかりましたね。お嬢様が攻撃する際に、お嬢様の攻撃を反射する)
紗里弥が、緋香里を攻撃する瞬間、刀を振るうと、リフレクトの壁が生成された。
(と緋香里は思っているだろう…ならば、あえて術中にはまった振りをして後方に下がる。)
紗里弥は、はじき返されると、その勢いで壁に着地すると、緋香里は紗里弥に向かって連射攻撃を加えるが、紗里弥は壁を走り、回避し続ける。
(残り電力も少なくなってきたか…ならば…この一撃で全てを掛ける。)
(そろそろフィナーレか…ならば、この攻撃に掛ける…)
二人は刀に全力の力を纏わせる。
紗里弥は、絶対零度の冷気と太陽表面爆発の如き熱気。
緋香里は、無数の雷が終息したかのような電圧を刀に纏わせる。
「喰らえ!!」
「喰らいなさい!!」
二人は剣を振り下ろすと、赤と青の光線が衝突する…筈だった
「おっと、そこまで…貴方達、」
突如現れた異次元クラスの美少女宮弥は、二つの光線の衝突を遮るように片手で止め、光線は宮弥の片手に吸収され消えた。
「何の用だ? 宮弥…」
「自分の庭たるこの世界に何処へ行こうが、俺の自由でしょう。それよりも兄さんとの関係は上手くいってるんですか?」
「当たり前だ。当然のことを何故聞く?」
「そうですか…なら、結婚条件についての提案で、貴方の結婚候補者選びについてですが、六つの難題というのはどうでしょうか? ちょうど候補者は六人…そして兄さんには、三人の戦士と共に孤島に築かれた国内最大級の選別軍の基地を潰して頂き、極星院の研究データを取り返すというのはいかがでしょうか?」
「まるで桃太郎だな。よし、それでいいだろう。龍雅なら成し遂げて見せるだろうな。後の五人どうでも良い奴らには残念だが、不可能な事やどうやっても間に合わない事をやってもらうしかない。」
「それはいいですね。では、五つの難題を基にした難題を考えましょうか。」
「あぁ…それはいい…まぁ、それは後で考えるとしよう…さて、私の戦いを止めたが、まだ熱は冷めきっていない…宮弥…この責任を取ってもらうぞ?」
「えぇ、いいですよ。少し遊んでみますかね。」
宮弥は、虚空から刀を取りだし、投げると、紗里弥は刀を受け取り、そしてもう一つの刀を虚空から取り出した。
「始めましょうか…少しは俺を楽しませてくださいよ。」
二人は、戦い始めた。
一時間後…
「物足りませんね…」
宮弥は、刀を虚空へと投げ込みそう言った。
「ハァ…ハァ…やっぱり化け物かよ…」
紗里弥は、膝をついて
「まぁ、これで落ち着いたでしょう。俺に勝てるものなど完全体となった龍雅以外にこの世に存在しない。ありとあらゆる事でも…」
その後に宮弥は、「最もあっちの方面は、既に完成しているがね…」と小さく呟いた。
「ん? 何か言ったか?」
「いいえ、何でもないです。じゃ、私はここで…また学校で…」
宮弥は、指を鳴らすと、その場から消え、緋香里の電力と地下室の状態は、戦う前の状態へと戻った。
「あいつはいったい何のために来たんだ?」
「私達を止める為じゃないですか?」
「まぁ、そんな感じか…さて、そろそろ昼飯にするか…」
「はい。今日の昼餉は、いかがなさいますか?」
「ハンバーガーがいいな。」
「かしこまりました。では、昼餉の準備をしてきます。」
緋香里は、ワープし、その場から消えた。
「さて、行くか…」
紗里弥は、地下室に備わっているシャワールームに入り、シャワーを浴びた後、地下室から出て、紗里弥の屋敷に戻った。
紗里弥の屋敷のキッチンから漂う牛肉の匂い。
並べられた多種多様な大量のハンバーガーとフライドポテトと脂っこさを打ち消す為の山盛りのサラダ
(良かった…パティ作っておいて…)
二つの肉厚のパティがフライパンの上で音を立てながら焼けていく。
溢れ出る焼ける肉の匂いは、料理人に鼻を通過し、食欲を促進させる。
二人の人間にあるまじき量だが、能力者は戦闘後大量に食事と摂らなければ餓死してしまう。
故に、緋香里は、このような大量のハンバーガーを作っているのだ。
緋香里は、焼けたパティの上にチーズを乗せ、能力で焦げ目をつけ、パンの上に乗せ、レタスを挟みケチャップとマスタードを塗り、挟んだ。
「さて、完成っと…お嬢様! 追加、出来ました!」
「おう、お疲れ…もうないか?」
「はい。」
「では、お前も食え。」
「いただきます。」
緋香里は食事を始めた。
二人は食事を済ませると、紗里弥は立ち上がった。
「んじゃ、私はこれから改造案や、更新プログラムを作ってくる。」
「また龍雅さんのですか?」
「あぁ、そうだが?」
「そうですか。」
「何だ? 嫉妬しているのか? 私が龍雅ばっかりのこと考えていて…」
「そ、そんな事は…」
「よいよい…今宵で愛でてやる。安心せい…私は、龍雅と結ばれてもお前への好意は忘れぬ。よいか? 私がお前を従者にしたのは、前からお前の事を愛いと思っていたからだ。その事を忘れるな。緋香里…」
紗里弥は、緋香里の口に軽く口付けをし、屋敷から出て、本邸へと向かって行った。
本邸のコンピュータルーム…紗里弥は、パソコンに装置を接続し、プログラムを入力している。
装置にプログラムを入力している姿は、父家吉を彷彿させる。
日は暮れていく。
コンピュータルームに紙のゴミが増えていく。
21時を過ぎる頃、紗里弥は、保存ボタンを押し、保存完了を確認すると立ち上がった。
「よし! 完成した! これで、三人の装備の改良データ及び、量産化に成功だ! ククク…出力は、私と龍雅の装備が強いがな…眼鏡型からコンタクト型そしてサングラス型に変更可能…しかも色が選べる…完璧だ…よし! よし! ハハハハハハハハ!! さて、晩飯にするか…」
紗里弥は、いきなり落ち着き、パソコンをシャットダウンし、コンピュータルームから出た。
紗里弥は、晩飯は適当に済ませ、本邸を出た。
(さて、楽しみにしてろよ…緋香里…)
紗里弥は、夜の中、屋敷に戻っていく。




