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剣ヶ峰龍雅の欲望/Life.of.Predetermined:GreedDragon  作者: 六月不二
日常章Ⅰ《取り戻した日常編~Normal daily life is beautiful/Happy days everyday~》
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第斜拾参話《極星院のとある休日の朝》  

 「眠いな…」


 紗里弥の朝は早い。

 毎朝、全ての従者よりも早くに起き、果物を食べ、私服に着替え、極星院本邸の裏から数十m離れた日本屋敷から刀を持って外に出る。

 雪の積もった森の中にある竹林、そこで紗里弥は、ひたすら刀を振るう。

 ただ無心に刀を振るう。

 剣術は、二流だが、その速度は超音速を超える。

 一撃一撃が超音速を超える為、その負荷に耐え切れず何本の刀が犠牲になったのかはわからない。

 トレーニング中の彼女に近寄るものは緋香里と宮弥以外存在しない。

 常人がトレーニング中の彼女に近づく事は即ち、死を意味する。

 

 (鍛錬を続ければ、いずれ私の力は覚醒する。私の能力の本質は、天を支配する能力ではなく世界を支配する力…王の力を覚醒させるまで鍛錬を続けなければならない。そして王の力を覚醒した時、火山の噴火を完全に阻止する…ここは、火山から世界を守る最終防衛線…私という世界を守る最終兵器が完成するまで鍛錬は終わらない。)


 数時間後、宮弥は、刀を地面に突き刺し、洗い吐息を吐く。


 「お嬢様…そろそろ朝餉のお時間です。」


 ポニーテールの巨乳美少女緋香里は、紗里弥に朝飯の準備が出来たことを伝えた。


 「ふむ、そうか…」

 

 紗里弥は、刀を


 (私と宮弥と一晩を過ごす代わりに庭の形状を変化させるという契約だったが、庭の様子はと…)


 庭の様子は、四つの石像と大部分を占めていた花畑が消え、代わりに、広い草原と所々に掘られた人工の池や流れる人工の河川、そしてレンガの道。

 所々に花壇があり、ある場所はスポーツが出来るようなスペースも設けられている。

 中央には、噴水が存在している。


 (まぁまぁだな…だがこれで誰が見ても恥ずかしくないような庭が完成した。)


 紗里弥は、そう思い、極星院本邸へと向かう。


 会長の仕事部屋に転がる空になった夥しいほどの無数の自社製のエナジードリンクとゼリー飲料の数々。

 その奥に、肩にフケが積もったスーツを着た髭の生えた俳優顔負けのハンサムな中年男性がパソコンにカタカタと目にも止まらぬ速度で入力している。


 「そろそろ10徹目か…いや、まだいけるな」


 その男は、極星院グループの会長極星院家吉だった。

 会長家吉は、血走った眼で仕事を行っている。

 目の下には隈があり、何日も寝ていないことがわかる。

 この仕事量はどれだけ仕事が早い人間百人居てもでも20年はかかるが、家吉は、10日で終わらせる事が出来る。

 しかも全て書類が一遍のミスもない。

 

 「さて、そろそろ朝飯にするか…その後に風呂でも入ろう」


 家吉が、立ち上がると、急に倒れた。


 (クソ…またエコノミークラス症候群か…まぁ、いい…これくらいどうって事はない。)


 家吉は息を引き取ると、再び心臓が動き始め、家吉は立ち上がった。


 「これで新年二回目の死か…まぁ、当然の事だな…」


 家吉は、ポットに水を入れ、湯を沸かし始め、冷蔵庫から冷凍食品のピザを取り出し、オーブンに入れ、オーブンを起動し、数分待ち冷凍食品が出来上がると、家吉は、ピザを取り出し、皿に移し、ポットに入った湯が沸くと、マグカップにコーヒーの粉を入れ、湯を注ぎ、席に座り、無言で食べ始めた。


 極星院の企業全てに借金などない。

 全てが大黒字だ。

 だが、利益には犠牲がつきもの。

 その犠牲とはそう会長の無数の過労死である。

 会長の能力は、疲れを知らず無限に蘇る能力とあらゆる方面で才能を発揮する能力そして脳と体の速度を加速させる能力である。

 ゾンビのような能力を持つ彼がいるからこそ極星院は毎年全ての傘下企業が大黒字を保っているのだ。

 極星院財閥が彼の代に入って以来過労死の報告は彼の無数の過労死しかない。

 

 (まともな食事をしたのはいつだったか…記憶に大きく残るのは、勇雅君の息子龍雅君との食事だったな。いやはや…彼は、良い…彼を芸能の道へと導けば忽ち姉悠美君を超える人気を得るだろう。いや、しかしゲームの道も捨てがたい…彼のゲームに関する才能は世界クラスだ。)


 「不潔だ。親父殿臭い。」


 家吉から漂う汗、体臭、加齢臭を紗里弥の嗅覚が感じ取り、鼻を塞ぎながらそう言った。


 「グホァ! 少し手心はないのか!? 紗里弥!? 私、頑張っているのに」


 家吉は、紗里弥の「不潔だ。親父殿臭い」という言葉を聞き、ショックを受け血を吐き、そして血の水溜まりが出来上がり、家吉は「止まるんじゃねえぞ」といいながら倒れた。


 「なら、休めばいいじゃないか。そもそも親父殿は、無理をしすぎる。そんなんだといつか身を滅ぼすぞ?」


 紗里弥は家吉を起き上がらせ、そして血溜まりを熱して一瞬で蒸発させた。


 「前にも言ったが、元より、私は本来なら死んだ筈の人間、この身は家族と極星院に捧げたんだ。滅んでも後悔はない。昔は良しとされていた滅私奉公は、今では悪である。休まぬ仕事という悪行を成すのは私だけでいい。」

 「そういう意味ではないんだがな…親父殿…まぁ、いい…いい加減休んでくれ。」

 「あぁ、明日休む」

 「それって、前も言っていて休んでなかったよな?」

 「仕方なかったんだ。重要な書類が目に入ってしまってな…」


 紗里弥の父、家吉は重度の仕事ワーカ中毒ホリックである。

 何でも一人で背負い込もうとする性格で、そして背負い込んだ全部を成功してしまう質の悪い人間である。


 「言い訳は無用…ほら、今日は休んだ休んだ。親父殿は半年も眠らずに働き続けているんだから罰は当たらないと思うけどな。」


 紗里弥は、父家吉を持ち上げようとすると、家吉は能力を使い、行動を超高速化し、逃げた。


 「自分で行く…」

 「まぁ、休んでくれよ…私は、この後、緋香里とのトレーニング、そして後は…龍雅とそして奈々と香織の装備の改良考案を考えねば…世界から地球、そして日本を守る為に武力の保持を認めてもらっているんだ。向上させなければ持っている宝が腐ってしまう」


 紗里弥は、そう言ってその場から去って行った。


 (紗里弥…お前とて人の事は言えぬだろう。世界の命運という重い責務を背負っていながら身を鍛えつつ、我ら極星院の為に動いている…お前は世界の命運の為に動き、そして龍雅君の為に生きるといい。何も今は生き急ぐ時ではないのだ。)

 

 「さて、風呂入りに行くか…」


 家吉はそう言って極星院家専用の大浴場へと向かって行った。


 「あら? 紗里弥? 相変わらず忙しそうですわね。」


 金髪ツインテールの美少女極星院麗弥は、紗里弥に嫌味を込めてそう話しかけた・


 「む? 姉上殿か…相も変わらず高飛車よな。まぁ、い…私に何か用か? 用が無いのなら、このまま私は、緋香里の所にくが…」


 紗里弥も嫌味を込めてそう返答した。


 「何も要はありません。ただ、見かけて話しかけただけですわ。」

 「無意味に話しかけたか…ふむ、では、虎太郎とは上手くいっておるのか?」

 「なっ! 私とあんな庶民とは関係ありませんわ!」

 「ほぅ? では、何故、数日前、お前は仲良く登下校道を虎太郎と一緒に歩いていたんだ? それも楽しそうに…」

 「あ…アレは…そう愛想笑いというものですわ!」

 「ほう、お前が落ちこぼれと見下しているG組個人に対して愛想笑いとは…随分と成長してようだなぁ?」

 「フッ、フン…紗里弥…貴方の友人だから少しぐらい対応を変えたまでです。」

 「ふむ、なるほどなぁ…私に気を使ったかぁ…なるほどなぁ…」


 紗里弥は、ニヤニヤと笑った。


 「何が可笑しいんですの?」

 「いや、何でもないぞ。まぁ、忠告しておこう…奴はガードが堅い奥手な男だ。奴の心の急所を狙っていくがよい。ではな…私は、緋香里とトレーニングをする故…これにて…あぁ、後、いつ龍雅や虎太郎にお前の秘密、能力者である事をばらそうかな~」


 紗里弥は、そう言って立ち去ろうとすると、麗弥は紗里弥の服を掴んだ。


 「待って、それだけは言わないで…」

 「じゃあ聞かせてもらおうか…お前は、虎太郎の事どう思っているんだ? ちこう寄れ、私の耳元で小さく言えばよい。」


 紗里弥は、麗弥を手招きすると、麗弥は、紗里弥の耳元で、ひそひそと何かを言った。


 「なるほどなるほど…これはこれはあの虎も罪作りな男よなぁ…無自覚ゆえに作ってしまう罪だろうよ。フッフフフフ…フハハハハハハハ! 貴様も好いているとは! 我ら姉妹はあの龍虎に惹かれるのか! 盾の如く心の障壁の厚き虎と剣の如く心の障壁を切り裂く龍! 正に! 正しく! 貴様ら二人の名に相応しい名前だ! 何、恥じることではない。高貴な者がただの市民に惚れることなぞ其処等の本屋や図書館にでも転がっている様な陳腐な話だ。」

 「言わないって言ったでしょう!?」

 「あぁ、すまんな。だが、誰も聞いてはおるまい。だが、誰かいたらどうなっていただろうなぁ?」


 紗里弥はそう言うと、麗弥の目から涙が溢れ始めた。

 屈辱の涙である。


 「うっ…うう…お母様に言いつけてやるぅ…」

 「ククク…言うが良い…ただし真相は隠さずな…」

 「この…バカ!」

 

 麗弥は、紗里弥の頬をワイヤーの如く強い力で引っ叩き目から涙を零しながら、母弥生の元へと向かって行った。

 

 「さてと…弄って楽しかったな…よし、往くか…」


 紗里弥はそう言って本邸を出て、地下室へと向かって行った。


 「お母様…紗里弥が…」

 「うんうん…後で、紗里弥を叱っておきますからね。」

 

 麗弥は、弥生に頭を撫でられ、慰められていた。

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