第陸拾陸話《EXLoop:Twenty-Twelfth 終わりなき輪廻を越えて/王と王》
この死は何度目だろうか。
この殺害は何度目だろうか。
自分は、押され続ける。
自分は、押し続ける。
ボタンの如く。
殺され飽きて来た。
殺し飽きて来た。
精神は両者ともに疲弊、もはや表に出る感情は仮初めのモノである。
龍雅は、肉体的苦痛など感じなくなってきた。
『はぁ…はぁ…』
獄雅は、手を止めた。
息を切らしている。
獄雅に、肉体的疲労はない。
獄雅に、肉体的苦痛はない。
ただ心に疲労や苦痛が圧し掛かっているのだ。
人間は、どんな作業であれ、同じ事を繰り返していては、心に苦痛が生じる。
例えそれが自分の好きな事だったとしても。
例えそれが赤子でさえできる事だったとしても。
飽きというのは、一種の精神的苦痛である。
無数に殺す度に傷が増えていく。
⦅何もせず消え去るぐらいなら、心に無数の傷を負った方がマシだ。⦆
だが、獄雅も龍雅だ。
どんなに辛くとも殺し続ける。
龍雅が諦める時まで。
自分が動けなくなる時まで。
自分という存在をまだ手放したくない。
龍雅を嫌っているわけではない。
ただ自分が自分でなくなることを恐れているのだ。
自分の肉体を誰かに支配されるという事を。
⦅もうすぐ体の支配権は、俺ではなく龍雅に移る。俺は、自分の体が自分の意思で動かせなくなる。動け…殺せ。心よ。脳よ。俺に従え…魂に従え! 少しの間だけ支配されるとしても俺は俺でいたいのだ!!⦆
「どうした? 殺し飽き始めたか? たったの数兆回殺した程度で俺は挫けねえ。」
『いいや、少し休んでいただけだ。』
「ん? 今までお前は休んでいなかった筈だ。何度も何度も俺を殺してそして繰り返す度に俺とお前の体力は元に戻る。それで疲れるのか? このループでは一回も殺しても手を出してもいないのに。やはりお前も人でしかない故に、お前は無数のループによる精神的疲労を負っていると見える」
『フッ、隠しきれないか…だが、お前もそうだろう? お前の精神は俺以上に疲弊している。』
そうだ。
いくら心を無にしたって繰り返される光景を身動きもできず何度も映し出されては、精神的苦痛を負うのは、免れない。
龍雅も現に息を切らしている。
表には出していないが、疲れている。
どちらもすぐに発狂しても可笑しくはない。
発狂する寸前。
それをため息で何とか抑えている。
発狂した方が負け。
いや、発狂しても続くだろう。
永遠に。
故に、どちらかが諦めなければならない。
どちらかがもうやめだというまで続く。
否、こいつらは既に狂っている。
獄雅は生まれた時、そして龍雅は妹が消えた時、既に狂っていた。
発狂などしない。
「さぁ、始めるぞ。獄雅ァ!」
『今回も殺してやるよ! 龍雅ァ!』
また一方的な殺戮が始まった。
何の抵抗も許されない虐殺。
目、口、手、足、指、あらゆる体の箇所が動かせない。
どれだけ足搔いても動かせない。
身体を動かす前に殺される。
そんな事はどうでもいい。
いつ終わるかが問題だ。
数万年先か? 数億年先か?
何年耐えればいい?
獄雅が息切れした時点から数万回死んだ。
『もう諦めたらどうだ? 龍雅…』
「それはこっちのセリフだ。そのセリフが出たって事はお前はもう諦めかけているって事だろ?」
『フッ、これは俺なりの慈悲だがな…外に繋がる道を作れるのだがな。』
「そんなものは今はいらない。いるのなら、お前の力だ。妹に勝つ力だ。」
『そうか…なら、地獄をまた味わえ!』
獄雅は、龍雅に襲いかかる。
龍雅は、攻撃を回避し、獄雅のわき腹を蹴り上げると、足は消滅した。
『忘れたのか? 今の俺の体に触れたものは、俺の衣服以外、全て消滅する。』
「はっ! 俺の抵抗だよ!」
『そうか…』
獄雅は、龍雅の心臓を目掛けて虚空を握ると、龍雅は弾け、消滅し、復活した。
虚無の空間がまた肉体を蝕む。
「如何なる抵抗も無意味。わかっている筈なのに、ハハハ…俺はもう狂ってきたな。いや、俺は元から狂っていたか。」
『そう、俺達は狂っている。どうあれ狂っている。さて、精神的にも限界が来たようだ…最終形態に入るか…MOD&クリエイト&チート&デバッグ…俺にアザトースの概念を付与し、俺の力を倍増させ、そしてチート付与…常時無敵、全攻撃即死、敵能力一切無効、敵全ステータス1に設定。さて、終わらせよう。この世界は既に消滅している。故に俺が目覚めていても問題など無い。』
戦闘を再開すると、虚無の空間によって獄雅が何もしなくとも龍雅は一秒に一回連続して死に、四秒ごとに時間が四秒まき戻り、死んでいく。
そして四百年がたった。
龍雅と獄雅は、眠ることも許されない。
どちらも動けない静寂の時間。
このまま永遠に何もない世界でただ死に続けるしかない。
――このまま終わるのか? 体は動かす前に死ぬ。畜生…動け…動け…動け! 動け!
龍雅は体を動かそうとする。
しかし動かない。
足搔く足搔く足搔く。
このままだと負けてしまう。
このまま終わってたまるか!
『無駄だ。いくら足搔こうと無駄だ。』
獄雅は、時間を止め、消えたかと思うと平行世界から獄雅が無数に現れ、龍雅に向かって光弾を放ち、そして光弾は一つとなり爆発し、龍雅は死んだ。
『…まだ諦めないか…』
龍雅は、抵抗できない。
だが、反抗心を見せる。
反抗心を見せる龍雅に獄雅はため息をついた
『どうやら…殺しても殺しても諦めないらしい…これはもう無駄だな。』
獄雅は、時間を動かすと、龍雅は死に、時間が撒き戻った瞬間、変身を解いた。
「終わったのか?」
『あぁ、全く…お前の勝ちだ。お前の信念が勝ったんだ。やれやれ…フッ…まぁ、これで俺の力はお前のモノになるって訳だ。手を出せ…お前に力を与える。』
龍雅は、獄雅に向かって手を向けると、獄雅は龍雅の手を握った。
『…じゃあな…龍雅…後は任せたぞ。』
「あぁ、任された。獄雅…」
獄雅が透明になっていき、そして龍雅の体と重なった。
――この力は!?
龍雅の体に急激な変化が起きた。
容姿は変わらない。
だが、戦闘力が飛躍的に上昇し、そして残りライフが無限へと戻り、そして様々な能力を取得した。
――チート、MOD、デバッグ、クリエイター、TAS…最強だ…
「さて、行くか…これで勝てるだろう」
龍雅は、指を鳴らすと、目の前の空間が歪み時空の穴が生成され、龍雅は穴の中へと入って行った。
穴の先は、玉座の間だった。
「なるほど、勝ちましたか…その力はどうですか? 王の力は…」
「あぁ、使い勝手がいい。今なら全てを支配できそうだな。」
「いいえ、実際にその力は全てを支配できる力…この世を自在に司る最強の力です。…さて、始めましょうか…」
宮弥がそう言うと、数秒だけ軽い準備体操をしてから空間の穴に手を入れ、ズブズブとグロテスクな音を立てながら、空間の穴から禍々しくも神々しい鍵の様に見える白銀の剣が現れると同時に宮弥は、所々に牛の角の生えた鬼の紋章がある高貴的な甲冑を身に纏った。
「何だ? それは…」
「王権剣アルファと牛鬼鎧オメガ…この装備は、俺の能力を制御、増大し、最大限の力を引き出す為に造った制御装置…」
宮弥が剣を振るうと、風景が変わり、城が一瞬にして外に移動した。
「これは俺の能力…ありとあらゆる世界の歴史や可能性を支配する能力を制御、倍増する為の装置…あらゆる世界、つまりお前達の言う異世界の力も使える…そもそも異世界というのは、存在しない。元を辿れば全て無から生まれた世界だ。全ては無から始まり無に終わる。神々が創り出した世界でさえ、意思によって形成されたもの…意思とは可能性状の世界…平行世界を創る…神話世界などの世界は、人々の意思によって作られた実在する世界だ。まぁ、いい…これを使う事で、俺は、任意的ではあるが全知全能の力を振るう事が出来る。」
「…なら、俺は神を越えるのみ、圧倒的な力を持つ者は、いつかは自分を神と誤認するものだ。」
「神? …なるほど、俺が神ですか…ククク…神とは、定義にも異なりますが、そうですね…自分の世界を作ったのにも関わらず放置し、気に食わぬことがあったらすぐに自分が創造した世界に怒りをぶつける短気で愚かで傲慢な存在ですか…いいでしょう…ならば、俺は神を名乗りましょう…俺を構成する十三柱。即ち、ヨグソトース、エル、バアル、ディヤウス、インドラ、スサノオ、アメンラー、ゼウス、ユピテル、マルドゥク、エア、トール、ヌアザその全てを備えた鬼神宮弥と…」
「ならば、俺は神を越える魔王だ。ちょうど俺は、最強の魔王と名乗るくらいの力を得ているのでね。」
「ノリがいいですね…なら、その王の力…魔王を名乗るくらいの力見せて貰いましょうか!! 兄さん!」




