陸拾参話《EXLoop:Twenty-Sixth兄の真実と妹の理想郷》
書斎の中で龍雅は、パスワードを探している。
書斎と言ってもその大きさは、世界最大級の図書館の大きさの百倍で、探すのにも一苦労だ。
個人図書館と言った方が正しい。
書類の数は、目視だけでも一億を超え、中には、伝説の魔導書、触れてはならない禁断の書物、国家の機密書類なども存在する。
必要な知識を得れる本は、この部屋に数多く存在するが、今は、知識などどうでもいい。
ただパスワードを見つける事が出来ればそれでいい。
龍雅は、探している内に、ある数ページほどの本を見つけた。
本のタイトルは、《回想~宮弥~》と書かれてあった。
――何だ? これは…
龍雅は、興味が湧いたのか、本を開いた。
ファイル01
私の話をしましょう。
私の名は、空神翔妃、いや、その名前は、私のかつての本名であり、現在の偽名だ…今の名前は、剣ヶ峰宮弥…私の敬愛する存在と同じ苗字を持つ女だ。
私、宮弥は、ある街で生まれた。
物心付く前に母がストレスで自殺し、男一人で私を育ててくれた。
私のいた世界は、汚くも巨大な権力が横行し、民衆は、上っ面の平穏の中を過ごしている。
環境は、悪く海や河川と大気は汚れ、かつていたであろう生物や植物はほとんど死滅している為、まともな料理は一握りのモノしか食べる事の出来ない。
雨は、高濃度の酸性雨、星空は全てスペースデブリ。
どの国も死臭と腐臭で覆われている。
ファイル02
税金の殆どが奴らに吸い取られる。
首相含む政治家達は、奴らの所為でまともに政府を動かす事が出来ない。
敬れるべき世界中の王族の権威は、奴らの所為で失墜した。
軍隊と警察の戦力は、弱体化に後退し、テロリストの力は、増幅し続けている。
殆どの国が無政府状態だ。
募金の殆どが奴らに吸い取られる。
善良な市民団体は、奴らの所為で淘汰され、悪の市民団体は、全て奴らによって生き永らえる。
ファイル03
ホワイト企業は、殆ど淘汰され、残ったのはブラック起業か、超ブラック企業のみ、ホワイト企業は、一握りの超エリートが天文学的確率の運を勝ち取ってやっと入る事が出来る雲の上の職場だ。
若者は、給料無き残業残業、残業、栄養価の悪い食事を摂り、自らの体を徐々に壊していき、やがて何も得られぬまま害悪に搾取され、生を終わらせる。
害悪共は、そんな若者を見て、最近の若者はと嘲い、テーブルの前の肉厚のステーキを頬張り、無駄に延命し、無駄に若者から生きる糧を奪い、のうのうと生きる。
権力を持った犯罪組織は、弱った老人達や情弱の若者を甘い誘惑で誘い込み、腐敗を助長する。
ファイル04
私の父は、害悪共の搾取によって過労死した。
父が死んだのは、50歳の誕生日前日の事だった。
父は、非常に真面目かつ有能、文武両道、かつ美形で、彼の部下にとってはカリスマ的存在で、社長に登り詰めるとまでされていた存在であった。
私は、ショックで自殺を考え込えた。
唯一頼れる存在がこの世から消えたからだ。
私に親戚は居ない。
皆、あの世に行った。
友達も皆死んだ。
この世界では、女子供関係なくいつ死んでも可笑しくないのだ。
故に、こんな世界に居ても意味はない。
私の就職先などないに等しい
私は、自殺を決意した。
だが、現実はそれを許さなかった。
世界と罪人は、私の脱獄を許してはくれなかった。
私は、怒りと悲しみを含んだ笑みで、世界に対して偽の微笑みを見せた。
逃れられない監獄、それがこの世界
ファイル05
新聞やテレビは、偏向報道ばかりで、面白くない。
どの国の新聞も自分の国に味方する報道など無い。
奴らを応援する報道ばかりだ。
奴らとは、そうテロ組織とテロ支援国家の事だ。
奴らの国家は、軍事力が富んでいるが、その国の民衆の餓死率、過労死率は、我々の国家よりも遥かに上で、自然などありはしない。
この世界は、腐りきっている。
光と闇のバランスは崩れ、世界は闇に覆われている。
ファイル06
…私は、ある日、私が能力者である事を知った。
知ったのは、父の死から一ヶ月後の事で、遺産のメモの中に、真実が隠されていた。
私の能力は、時空操作。
能力を知ったもののどうやって発動するかもわからない。
私は、遺産のメモの下に能力者保護団体と呼ばれる市民団体のポスターを見つけた。
私は、能力者保護団体に保護された。
だが、実態は、奴らの傘下組織で、私の様な人間を人体実験、強姦などの繰り返しだ。
私はどうやって抜け出すか、分からぬまま地獄の日々を過ごした。
そんな繰り返しの中、私は、いや俺は、ある一人の男性と出会った。
その男は、俺の顔と非常に似た美しい顔を持つ目下の隈を持った黒髪の高身長の少年だ。
少年の名は、剣ヶ峰龍雅、能力者保護団体で働く団員だ。
龍雅は、他の奴らとは違い、俺に優しく接してくれた。
俺が強姦されようとした時、人体実験の実験材料にされかけた時、拷問されようになった時、龍雅は、俺の為に、身を張って守ってくれた。
「龍雅、何故、俺を助ける? お前の為にならないのに…」
「俺がお前を助ける理由? んなもんねえよ…俺は、ここの職場のルールに従っているだけだ。まぁ、敢えて言えば、俺とお前の顔が似ているというくらいだ。」
「それだけで?」
「あぁ、それに女が悲鳴を挙げていたら、助けたくなるのが、男の性だろう?」
龍雅は、そう言い、俺の肩を叩いた。
俺は、龍雅とすぐに親しくなった。
だが、龍雅の給料は減り、職場での龍雅の立場も悪くなった。
それでも龍雅は、仕事を辞める事は無かった。
俺は、何故龍雅が仕事を辞めないのかを聞いてみた。
「龍雅、お前は、同じ職場の奴に虐められていると聞いた…何故辞めない? 辛かったら、今すぐにやめていいんだぞ?」
「いいや、辞めないな…俺は、このバイトを見つけた…大学に入って卒業するまでやらせてもらう…それに、俺がやめたらお前はどうなる? あの生活に逆戻りだぞ?」
「それでもいい…俺はお前が苦しむ姿を見たくはない…他にもいい仕事がある筈だ。」
「だが、俺は、お前をほうっておけない。俺は、バイトとは言え保護団体の団員だ…役目を果たさせてもらう…それに俺は、お前の事が好きだからな。」
龍雅は、俺に微笑み、俺の頭を撫でた。
龍雅は、俺と同年齢の少年で、高二の高校生だ。
親の給料だけでは、大学には通えない…けど、その大学に行かなければ安心した未来はない。
奨学金という道もあるが、それでも届かない。
金を稼ぐために、バイト代わりにこの団体に入って働いているのだ。
俺は、外部に連絡して父の遺産の全てを龍雅の家に託した。
しかし、それでも大学に必要な金額には届いていなかった。
いや、そうではない…父の遺産は、借金取りに全て取られてしまった。
幸いにも、借金は返済され、大学に必要な金は、一年分は約束された。
龍雅の家は、今ある世界とは違い、貧乏であった。
借金は、彼の祖父が作り、彼の父が肩代わりしていたが、彼の祖父が死に、その借金を背負ってしまったのだ。
更に彼の父は、ある大事件で犯人と共に死に、保険金は一銭残らず借金返済に使ってしまったのだ。
ファイル07
日が立つごとに、龍雅の体に傷が増えていく。
傷を見る度に俺の心は抉られる。
俺が辞めろと言っても龍雅は辞めない。
どれだけお人好しなんだお前は…
だが、それがお前のいい所なんだが…
俺は、彼に何もしてあげれない。
龍雅に守られるだけ。
身体的な苦痛は、殆ど無くなったが罪悪感という精神的苦痛が俺を痛めつける。
もう十分なのに…
ファイル08
終わりの時は、唐突に来てしまった。
龍雅は、この組織の実態を外に漏らし、俺を連れて脱走しようと図ったのだ。
将来を諦め、俺を救う事を選んだのだ。
龍雅は、俺にこう言ったここから出る事が出来れば、一緒に誰も知らない場所で暮らそうと。
俺は、龍雅と共に外に出られる。
龍雅と一緒に一生を過ごせる。
その事を知って俺は、嬉しかった。
けれど、同時に巨大な不安が押し寄せて来た。
これからどうすればいい?
奴らは、追ってくるのだろうか?
追って俺達を殺しにくるのか?
逃げたとしても何処に逃げればいいのか?
この世界は、もはや奴らによって支配されている。
逃げ道は思い当たらない。
いや、逃げ道が見つからなければ逃げ続ければいい。
能力の使い方は、知った。
応用すれば逃げ続けれる。
道なき道、獣道を進めばいい。
時間停止は、一分間、物体転移は、1km範囲、未来視は一分後、過去視は一分前、空間理解は20km範囲、どれもこれも連続して使えない。
五分間の休憩が必要だ。
だが、これだけあればいい。
あの施設に居た頃は、能力を使えない磁場が張られていた為、使えなかったがここでは張られていない為、使える。
不安は消え、俺は、龍雅と共に進み始めた…が…
急展開が起こった。
俺が逃げている途中、休憩時間の5分間の間に龍雅は、何者かの手によって殺されたのだ。
俺は、哭いた。
泣いた。哭いた。泣いた。哭いた。
どうして殺された?
どうして俺は、注意を払わなかった?
どうしてだ?
どうしてどうしてどうしてどうしてドウシテどウしテどうしてDoUSいtイDoUSイtえDoUSイtえ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ
ファイル09
龍雅が死んだ日、俺は夢の中で謎の光と出会った。
『お前は、それでもいいのか?』
――もう、俺には何も残ってはいない。
『いいや、お前にはまだやるべきことがある。そうだな…お前は、お前の恋人を生き返らせたいか?』
――出来るのならば…
『ならば…私の手を取れ、そしてお前の願いを叶えよう…何、代償などほんの少しお前が不快になるだけだ。喜べ…悦べ…歓べ…慶べ…お前は選ばれた…改変の力を得、新しい世界の神となるがいい…』
光が俺に力を与えると、力が湧き、能力が進化した。
光は笑いながら、夢の中から去っていった。
ファイル10
光から与えられた力、それは全能の力だった。
俺は、光から与えられた力で、世界を作り直した。
数万数億もの調整を加え、不必要な悪性存在を潰していった。
時に、世界の為に人体実験も行った。
これからは、俺達、若者の時代だ…そして、我が愛しい人の為の世界だ。
二万年以上生きた俺は、もはや若者ではないがな…
俺は、翔妃の名を捨て、宮弥として生きる事を決めた。
作り直した世界では、太古に遡り、原初の能力者として俺の血、能力者の血を世界に広め、そして前の世界では存在しなかった家系の中の二つ…極星院と剣ヶ峰の血を持つ者が交わる事で、この世界の龍雅が生まれた。
その龍雅は、魂、姿形が前の世界の龍雅そのものだった。
まぁ、髪と目は、少し違うが…
俺は、剣ヶ峰家に膨大な資金が行くように過去を歪め、隕石を利用し、選別軍以外の無駄な権力を持つ者達を全て抹殺した。
選別軍以外を滅ぼした訳は、選別軍は、龍雅に滅ぼされる運命にあるからだ。
後書き
パスワードは、貴方の名前です。
俺と貴方は、兄妹ではないという真実を隠していてすみません。
それでも俺の事を愛してくれますか?
――これが俺と宮弥の真実か…愛するに決まってんじゃないか…宮弥…
龍雅は、本をしまい、書斎を走って去っていった。
扉のパスワードを解き、龍雅は玉座へと入って行った。
「ようこそ…兄さん…長旅ご苦労様」
「宮弥…」
玉座の間は、神々しくも禍々しいオーラで包まれており、宮弥は玉座から龍雅を見下ろしている。




