第伍拾捌話《EXLoop:Twentieth 決着、無数の輪廻の果て》
二人の戦闘力は、15倍になった。
先手を切ったのは、龍雅だ。
『お前の動きを学習しない俺だと思うなよ。』
白黒の龍雅は、そう言い、龍雅の攻撃を回避する。
龍雅は、白黒の龍雅の攻撃を紙一重で避ける。
一秒、いや刹那の時をも無駄には出来ない。
無駄にしては、一気に形成が崩れ、死ぬ。
白黒の龍雅の動きは、前回より落ち着いているが、完全に龍雅の動きを見切った訳ではない。
龍雅と白黒の龍雅は、高速戦闘を続け、そして再び白黒の龍雅の残機は1となった。
「さぁ、来い…」
『あぁ、行くぞ…』
白黒の龍雅の姿は、変わり、龍雅は、変身の衝撃で体を大きく吹き飛ばされる。
時間停止が無効化されるが、龍雅と同化した黒い液体の効果なのか、時間停止世界でも動けるようになっている。
時間停止が無効化されたため、龍雅の攻撃力と速度は急激に低下した。
だが、目が、体が追いつく。
対処は可能だ。
龍雅は、必死に回避する。
彼に近付くだけで死ぬ。
空間は動くだけで消失する。
全ての行動が死を齎す。
比喩ではなく事実。
如何なる存在も殺す。
息をするように破壊と死を振りまく。
彼が展開しているのは、破壊の領域。
彼が展開しているのは、死の領域。
彼が展開しているのは、無重力の領域。
彼が展開しているのは、虚無の領域。
彼が展開しているのは、原初の領域。
白黒の龍雅の周りには、何もない。
そう何もない。
エネルギーさえも存在しない。
原初の世界とは即ち、物質の存在しない世界。
森羅万象が産声を挙げた天地開闢の現象ビッグバンが発生する前の天地が閉ざされた世界。
実際には、原初の世界には、時も空間も存在しない。
物理法則も存在しないだろう。
この世界には、昼も夜もなく星が動かない為、時間が存在するのかはわからない。
太陽系ほどの大きさの空間は存在している。
空間が存在すれば、それは無とは言えない。
故に、白黒の龍雅が展開しているのは、我々人間が認識している原初の世界を疑似的に再現したもの。
エネルギーが存在しないという点で再現している。
――どうする?
龍雅の脳内には、三択の選択肢が思い浮かぶ。
1、特攻覚悟で破壊の領域に突っ込み、敵を殴る。
2、敵の体力が切れるまで回避に専念し、体力が切れた所を討つ。
3、殺され、殺され、何度も繰り返し、相手の動きを覚える努力をする。
――2か、3だな…
龍雅は、白黒の龍雅の攻撃を回避する。
攻撃はしない。
遠距離攻撃は、能力を封じられている為、不可能。
近付いた所で、領域の餌食になるだけだ。
龍雅は、破滅の邪眼から逃れる為に、影の能力を使って瞬間移動を繰り返す。
遠距離といえども気を抜けない。
白黒の龍雅は、龍雅の動きを見て、逃げていると察知し、龍雅の行く先を予想して瞬間移動し、領域と攻撃で二度三度四度殺す。
『俺から逃れられると思うな。』
――クソッ…
白黒の龍雅は、全身から全遠距離攻撃技の弾幕を放つ。
全ての遠距離攻撃の爆発及び範囲が一転重視ではなく寧ろ分散する様に広がる。
威力など意味を持たない。
当たれば即死だから威力などいらない。
貫通性など必要ない。
如何なる防御性を無効化する能力を常に発動しているのだから必要ない。
ただ範囲を広めればいい。
触れただけで死ぬのだから。
――逃れられないか…
龍雅は七回死に、また巻き戻る。
――3だったか…
龍雅は、今度はニ千回繰り返した。
二百年の時…いや、もしかすると五百年は経っているのかもしれない。
人の寿命を超える時間だ。
――紗里弥…虎太郎…俺は一体、いつになったらお前らの所に帰れるのか…
龍雅は、想い返す。
数百年前に遥か昔、自分のいた世界の事を。
友人と恋人の事を。
百年たった今でも覚えている。
鮮明に覚えている。
まるで昨日の様に覚えている。
この地獄に来てから毎日、あの日々を夢に見る。
夢を見る度に帰る場所があると思い、勇気づけられ、進むことが出来る。
――また挑むか…
『お前は強いな…勝てない相手がいるのに、何度もゲームオーバーになっているのに、立ち上がって来るとは…もう諦めてこの世から消えれば楽になるというのに…もう帰る事など出来ないのに…』
「俺がきっと帰れるさ…この異世界は、夢を見るような世界じゃない。簡単に惚れる異世界美少女も居ないし、立場は高くないし、元いた世界の知識が役立つと言えば、物理法則しかない。夢に見るような異世界じゃない。」
『諦めないか…ならお前にとっていい情報をやろう…ここはな…お前のいた世界とこの世界との時間の流れが違うんだ。この世界…いや、紅い浅瀬の世界と天文台の世界とこの世界には、時間が存在しない。故に、いくらここで時間を費やそうが、お前の世界で計算すると0秒しかたっていない事になる。』
「なるほどな…0秒か…それなら、俺は姉ちゃんのライブにも行けるな…」
『フッ、鮮明に覚えているのか…お前の世界の事を…』
「当たり前だ。この世界で過ごしてきた時間と比べれば、夢幻の様に短い時間だったのかもしれない。だが、俺はアイツらとの思い出を忘れるような薄情な奴じゃないんでな。さぁ、もう一度やろうぜ。」
『…いいだろう。やるか…この際言っておく、俺の名前を付けるとするなら、真ヶ峰獄雅と呼んでもらおうか…』
「なら、行くぞ獄雅」
二人は黒液を取り込み身に着け、高速戦闘を開始する。
残機一になるまで龍雅は優勢なのは、二千回やっても変わらない。
同等の相手なら技量で上回れば勝てるからだ。
繰り返す度に両者の技量が上昇する。
獄雅は、龍雅が挑んでくるたびに技量を挙げるが、龍雅の技量に追いつけない。
それもそのはず、龍雅は、彼に負け続けているからだ。
失敗は成功の基、故に、敗北する度に彼は強くなる。
敵にどう勝とうかと攻略しようとする。
どうやって効率的に残機1にするか。
その後はどうするか。
龍雅は、二千回の輪廻の中で考えて来た。
『ハァ…ハァ…また残機1になったか…では、また死ね。』
獄雅は、自身を強化し、破壊の領域を展開した。
「今回は、そう簡単にはいかねえぜ…予言しよう…お前は、俺がこれから百回繰り返すうちにお前は死ぬ。」
『ほう、やってみろ。』
龍雅はそれからも何十回も繰り返した。
『ハァ…ハァ…』
⦅龍雅の言う予言とは何だ?⦆
獄雅は、遠くで倒れている龍雅の死体を見て、そう思うと、いきなり胸に強い衝撃が貫き、破壊の領域と結界は解かれた。
⦅な…何…?⦆
獄雅は、胸を見ると、胸に大きな穴が開いていた。
獄雅が後ろを振り向くと、そこには、ボロボロな姿の龍雅がそこに立っていた。
『何を…した?』
「俺は、戦場内ならば、復活する場所を設定できる。普通だったら破壊の領域に近付く前に死ぬが、俺は自分の死を利用してお前に接近し、攻撃を仕掛けた。お前のHPが一だから出来た事だ。」
『なるほどな…では、龍雅よ…行け、お前は俺を越えた…だが、容易に勝てると思うなよ。』
「あぁ、また会おう。俺…」
『そうだな…』
獄雅は、そう言い、風に吹かれる砂の城の様に消えていった。
獄雅が消えた場所に魔方陣が現れた。
――これが…最終ステージに繋がる陣か…
龍雅は、魔方陣の上に乗り、龍雅は地獄エリアから去った。
龍雅の目の前には、超巨大な塔が天を衝くように聳え立っている。
高さは、太陽系の幅と同じだ。
――これを登るのか…
龍雅は、最後のステージに足を踏み入れた。
それと同時に今までの雑魚敵が一斉に現れた。
――よし、行くか…




