第伍拾参話《EXLoop:Fifteenth Fake:父と子の対決》
――能力は、まだ通用しないか…だが、能力が使えるだけでもいいか…それに、マントの透化効果も通用し無さそうだ。
龍雅は、そう思い、勇雅と高速戦闘を繰り広げる。
衝撃波が響き渡る。
たった一回の衝突でどれほどのエネルギー持っているのかはあまりにも巨大すぎて測定が出来ない。
――恐らく紗里弥と同じく防御性能が高いのだろうな…
龍雅と勇雅の高速戦闘は、数時間続く。
空間に響き、耳をつんざく巨大な衝撃音/爆発音。
破壊の衝撃波が、響き渡る。
――パワーは同等…いや、僅かに親父と俺と比べれば親父の方のパワーが高いか…レベル換算すれば、150…いや、200は遥かに超えているな…
龍雅の攻撃は僅かに押し負ける。
速度は同等。
だが、攻撃力と防御力は、勇雅の方が上、しかし龍雅には自己強化能力と底なしのMPと完全回復能力を持っている為、戦力的には同等だ。
龍雅は、自分の速度を更に高速化し、勇雅を翻弄する。
――光の速度に辿り着けるかわからないが、光の速度にならないようにしなければ…無限のエネルギーが発生しては、この防御性も無意味になる。
そう、物体は光の速度に到達すると、どれだけ小さい物質だろうと質量が無限へと至る。
質量が無限に至るという事はエネルギーも無限になる。
物質を構成する粒子である光子には、質量がない。
ゼロに無限をかけてもゼロになるだけだ。
故に、光は、光速で動いても世界に何の支障もない。
この鎧は、能力無効化されない限りは、理論上超新星爆発のエネルギーでも余裕に反射できる設計だ。
しかし、無限のエネルギーともなると、無限という非常に巨大なエネルギーに反射機能が押し潰されてしまう。
光の速度に至ってはならないのだ。
ここは、物理法則のない世界…
だが、龍雅は、自分がいた世界の物理法則しか知らない。
故に、この無法的な世界では、自分の世界の法則が肉体に適応されるのだ。
龍雅は、勇雅を蹴り上げ、そして後方へと高速で移動した。
――それにしても、これだけのエネルギーを使っているのにも関わらず、紅き戦士になる前よりも疲れないし、体にかかる負荷も少ない。何故だ?
龍雅は、自分が紅き戦士に覚醒した途端にエネルギーの消費が軽減した事に疑問を思った。
――いや、まさかな…
龍雅は、頭を振り、汗を拭き、再び高速戦闘を開始する。
気が遠くなる程に続く超高速戦闘。
そして一瞬でも気を抜くと形勢不利になる高速戦闘。
どれだけ経ったのかわからない。
一週間? 一ヵ月? 一年?
龍雅の体内時間が狂い始めている。
いや、とうに狂っている。
だが、戦闘を開始してから数日経っている事はわかる。
精神は、まだ折れてはいない。
自分に対して怒りはした。
だが、心にヒビは入ってはいない。
まだ進めるからだ。
繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
両者の血肉の破壊と再生の輪廻を繰り返す。
繰り返す。
繰り返す
何度も何度も何度も何度も巨大なエネルギーが生じる衝突を両者は、繰り返す。
幾度も幾度も繰り返す。
龍雅の頭にはもう相手を仕留める事しか考えていない。
他に意識など無い。
相手も同じだ。
相手は、敵を殺す為の殺戮兵器。
殺し、破壊する事以外にプログラミングされていない。
龍雅は、衝突した時に生じるエネルギーを利用し、物質を生成し、内包し、MPとカロリーを補充する為に削り、回復する。
勇雅は、怯まない。
あらゆる攻撃を軽減する絶対的な防御力と光の速度で再生しているように見える超回復能力と体に大きな損傷を及ぼすダメージを受けても倒れず動く生命力。
まるで不死鳥だ。
まるで朱雀のようだ。
まるで赤赤とした血に濡れた炎の鳥のようだ。
彼の体から発せられる紅き闘気は、戦うにつれて紅き幻獣朱雀の様に見えてきた。
実力が同等というのは、幻想に過ぎない。
龍雅が使っていたエネルギー集中能力は、彼には通用しない。
彼は、永遠にエネルギーは尽きない。
だが、龍雅には限りがある。
決定的な一撃が無い。
いや、存在しているが、通用しないという方が正しい。
分解能力は、無意味だ。
死毒の炎も無意味だ。
龍雅は、自己強化で最大まで高め、一応は翻弄しているが、肉体が治る速度がダメージを与える威力と速度を越えている。
ダメージの威力が強靭な肉体によって大幅に軽減される。
彼は、龍雅が紅き戦士になったばかりの時は、本気を出していないかったという事だ。
そう、高速戦闘を始めてしばらく経ってから本気を出したのだ。
——埒が明かない。再び詰んだか…だが、まだ諦め時ではないな…
決定打の無い攻撃を両者は、繰り出し続ける。
決して二人は、手を抜いておらず全力の攻撃だ。
全力と全力だが、互いの防御性と生命力と耐久力が邪魔をして無意味になる。
両者は、自身が持ちゆるあらゆる技術、通じる能力、全力全霊の力を使い、戦う。
龍雅は勇雅を掴み投げようと、後ろに一瞬で移動するも、勇雅は、龍雅の顔を肘で殴打する。
龍雅は、戦法を変える。
剣を使う。
無数の剣を配置する。
無数の武器を配置する。
無数の機械の使い魔を召喚する。
この武器と機械は、いわば龍雅の血肉だ。
使い魔と武器は勇雅に襲いかかり、勇雅は使い魔と武器を蹴散らす為に振り払い始める。
壊れた武具は、再生する。
龍雅は、隙が生じている隙に手に力を籠め、弱点目掛けて殴りかかると、勇雅の体が崩壊するも超高速で再生し始める。
龍雅は、再生しきる前に脳に手をかけようとするが、龍雅は勇雅に捕まり、蹴り飛ばされる。
——何だ…そんな簡単な事だったのか…
龍雅は、単純な答えに辿り着いた。
勇雅には、遠距離攻撃が無い。
あるとしてもサイコキネシスのみ。
だが、この戦いにサイコキネシスという小細工など通用しない。
通用するなら、それは龍雅以外の何かだ。
——さぁ、終わらせよう。
龍雅は、無数の使い魔を生成し、使い魔と共に駆ける。
勇雅は、使い魔を蹴散らしながら龍雅に元へと向かう。
龍雅は、拳に力を溜めながら駆ける。
駆ける。
翔ける。
翔ける。
両者、流星の如く空中を高速で翔る。
溜める/蹴散らす。
溜める/蹴散らす。
溜める。
蹴散らす。
溜める。
蹴散らす。
嵐の如くに振るい蹴散らす暴力と隕石の如く鋭く重い暴力。
両者、衝突する。
龍雅の拳が、腕が、左半身が崩壊し、体全体から大量の血が噴き出す。
それと同時に勇雅の体が大きく上半身が崩壊する。
「これで終わりだ!!!」
龍雅は、浮き彫りになった核を掴み潰した。
潰すと、龍雅は、片足だけで支えていた体のバランスが崩れ、死ぬように倒れ眠った。
それから数週間たった。
目が覚めると、そこは、湖の上だった。
龍雅は、湖の上で浮いていたのだ。
体は再生している。
体の機能に異常はない。
龍雅は、空中を浮き、辺りを見回した。
——あそこか…
光の柱のあった場所に禍々しい色の魔方陣が出現していた。
いや、禍々しいという言葉では足りない程の色だ。
龍雅は、魔方陣に近付くと魔方陣から無数の真っ黒な手が現れ、龍雅の体は、手に捕まれ、魔方陣の中の呑み込まれた。
——うう‥ん…
龍雅が、目を覚ますと血の甘ったるい匂いが鼻を通過した。
——何処だ?
龍雅は、立ち上がり、周囲を見回すと、そこは血の海だった。
遠くには、猛吹雪が吹き荒れる凍結地獄と灼熱の炎が覆う煉獄。
空には、無数の黒い邪竜に乗った黒い悪魔騎士が巡回し、血の海には、異形の巨人が無数に徘徊している。
——なるほど…ここが地獄エリアか…ならばクリアしてやる。そして待っていろ。地獄のボスよ。
龍雅は、そう思い、血の海を渡り始めた。




