第参拾斜話《第二の輪廻 己~虎太郎と香織 上~》
虎太郎は、徹夜をしていた。
いや、徹夜というより早く起きてしまったの方が正しいか…
虎太郎は、ベットの上で、目を開けたまま寝転んでいた。
(…眠れない…昨日の夜から、香織の家から殺気と狂気がこちらに、向けられている…これは、香織か? 途中で目が覚めちまった…)
虎太郎は、意識を後ろ、香織の住む西村宅の方を見た。
窓の外から数匹のモンシロチョウが入って来た。
モンシロチョウの一匹は、虎太郎の手の中に降り、そして花弁となり、目の擦ると花弁は、跡形も無く消えて無くなっていた。
(俺は、夢を見ているのか?)
朝日が明け、外が少し明るくなってきた。
虎太郎は、少し早い朝ご飯の支度を始めようと、立ち上がると、いきなり轟音を挙げて何かが飛んで行く音が虎太郎の耳と近所の窓ガラスに響いた。
(何だ!?)
虎太郎は、咄嗟に窓の外を見ると、そこには、遠くへと飛んで行く龍雅の姿があった。
(…なるほど、あのモンシロチョウは、龍雅が作った生物か…やれやれ、生物まで作っちまうとはな…さて、俺は今日も、妹の為に、飯でも作るか…今日は早く起きたんだ。新しいのに挑戦してみるか…)
虎太郎は、部屋を出て、階段を降り、キッチンに入った。
エプロンをし、料理本の開いていなかったページを捲り、気合を入れて料理を始めた。
数時間後、あの時間、虎太郎は、龍雅に、あぁ、俺も決行する。心配しないでお前もやれ…というメッセージを龍雅に送ると、虎太郎は、スマホの電源を切った。
「さて…俺は、香織を止めるか…」
(俺は、そこそこ鍛えて、俺は、一日に3回だけ生き返る事が出来るようになり、ある程度のものは、塵へと分解に出来るようになった。俺は、この力で…)
虎太郎は、龍雅から模倣した生体察知で、一人がこちらに近づいて来る感覚が脳に伝わって来た。
「虎~太~郎。」
香織は、虎太郎の背中に抱き着こうとした。
表面上は、純粋な笑顔を振るまっているが、その中は憎悪と狂愛が渦巻いている。
虎太郎は、それを察知し、咄嗟に避けた。
香織は、空振り、舌打ちをした。
(このまま私を愛してくれない虎太郎君を倒してそのまま私のモノに出来たのに…)
香織は、服の中と手の平の氷の刃を水に変え、蒸発させた。
どうやら、予め、制服を棘の通り様に穴を開け、抱き着いた時、虎太郎の体に刺さる仕掛けだったらしい。
虎太郎への憎しみ、それは、虎太郎が、香織に振り向いてくれない事だった。
(私との昔からの仲…なのに、虎太郎は、他の女ばっかり相手している。私は、それが許されない…)
香織は、そう思い、心の中で怒りも燃やし、表面上では、平然を装う。
(あれは…龍雅か、あちらは、先に始めたようだな…)
遠くに映ったのは、龍雅が奈菜に手を引っ張られている姿で、虎太郎がこちらを見ている事を知った龍雅は視線で合図を送り、虎太郎も、視線で合図した。
(さて、始めるか…)
「なぁ、香織、今日、用事はあるか?」
「ないけど…どうしたの?」
「いや、お前が何か俺に隠し事をしてるんじゃないかと思って…」
虎太郎は、香織に向かって挑発をした。
(…話は方がいいかな…?)
「うん…でも、ここでは、話せないからね…私に着いてきて…」
香織は、暗い笑顔を浮かべ、虎太郎に背を向け、歩き始め、虎太郎は、香織に着いて行った。
(ここは、香織に合わせるか…)
虎太郎は、香織に着いて行くと廃工場に辿り着いた。
香織が合図を出すと、銃を持った兵士が、二十人、廃工場に入って来た。
「どういう事だ? 香織?」
「この人達はね。虎太郎を私を捕えてそして私だけの存在にする為に協力してくれる人達なの」
「こいつらは、お前が操ったのか?」
虎太郎は、そう言いながら、両手に鋼鉄の籠手を装備し、構えた。
周りの兵士達は、虎太郎の行動に反応し、虎太郎に向かって銃を構えた。
兵士達に殺意はない…というよりも、機械的で無機質な視線を虎太郎に向けている。
兵士達の眼は、生気を失っており、生きる資格すら与えられていないように見え、殺戮の為だけに製造された蛋白質で出来た操り人形のようだ。
香織は、手を挙げると、兵士達は、銃を下ろした。
「いいえ、この人達は、この力を与えてくれた素晴らしい人達から遣わされたの…毎年、毎日、毎時、毎分、毎秒、髪の毛、体、肉、細胞、DNA、血液、人権、尊厳、視覚、聴覚、触覚、味覚…虎太郎の全てを私だけのモノにする為に…」
香織は、そう恍惚とした表情、色気のある声で言い、まるで狩人が獲物を見つけたような眼で、虎太郎を見る。
「…そうか…お前ではないのか…では、お前を傷付けずに、こいつらを倒せる…」
虎太郎は、そう言うと、籠手の指の部分から鋼鉄の爪が現れた。
虎太郎の目は、怒りと悲しみで目が輝いており、心に秘めた怒りの余り、瞳孔が開いている。
「傷付けていない…って?」
香織は、虎太郎の発言に反応して身を震わせる。
発言によって色気のある声から殺気の籠った声に変わり、表情は、恍惚とした表情から、無表情に変わった。
「今も、私の心を傷付けている癖に! そんな事が言えるの!? 虎太郎ォ!!」
香織は、後ろに下がり、指示を出すと、兵士達は、虎太郎に向かって銃を構えた。
「やれ! どんな手を使っても生け捕りにしろ!」
香織が指示すると、周りの兵士達は、ガスマスクを一瞬で装備し、手榴弾を取り付けた催涙スプレーと麻酔スプレーを虎太郎の投げつけ、銃弾で、一つ目を起爆すると、連鎖的に爆破し、催涙ガスと麻酔ガスが撒かれ、虎太郎の姿は見えなくなった。
「まぁ、これで終わっちゃ面白くないよね? 虎太郎?」
香織がそう言うと、煙の中から、目を瞑った虎太郎が煙の中ら現れ、兵士三人の体を爪で斬り倒した。
虎太郎は、斬り倒すと、頭と目を抑え、膝を着いた。
(クッ…目が焼ける様に熱い…それに意識が朦朧とし始めている…眠い…クソ…あれは、催涙ガスと麻酔ガスか…)
膝を着いた虎太郎を見て、兵士達は、麻酔銃を虎太郎に向かって放ち、虎太郎の体に麻酔弾が刺さっていく。
「ハアアアアアアア!!!!」
虎太郎は、言葉にならない叫びと衝撃波で、意識を覚まし、虎太郎の体から発せられた衝撃波で兵士達は、吹き飛んでいった。
吹き飛ばされた兵士は、途中で空中に止まり、念動力で虎太郎を捕える。
斬り倒された兵士は、立ち上がり、電撃と炎を纏ったマチェットを構え、虎太郎の体を斬り、吹き飛ばされた一部の兵士は遠距離から電撃と氷の纏った銃弾を放ち、龍雅の体に、氷の銃弾は、高速で投げたナイフの様に虎太郎の体を穿った。
(何!? もしやこいつら…)
「そうよ…この人達は全員能力者…もっとも…身体能力のタガの外れた兵士だらけだけども…」
(…やむを得まい…)
虎太郎は、銃を二丁作成し、自らの心臓と頭を撃ち、倒れた。
「虎太郎!!」
香織が悲痛な声で叫ぶと、虎太郎の死体は、無傷な状態に戻り、立ち上がった。
「え?」
(ふぅ…よかった…だが、後二回死んだら終わりだ…2回死んだらまた前日に逆戻りだ…)
虎太郎の意識は冴え、視界も元に戻った。
「どうした? 俺が憎いんじゃなかったのか? さっきの叫びは何だ?」
「え…それは…」
「まぁ、いい…これで俺は、万全の状態だ…さぁ、お前ら一瞬で全員、病院送りにしてやる!!」
虎太郎は、時間を停止すると、一瞬で改造兵全員が、全員倒れた。
「香織、許してくれ…そして一緒に帰ろうぜ?」
「…いえ、まだ終わってないわ。」
香織は、腕輪を弄ると、香織の体は妖しく光り、そして輝きが収まると、奈菜が来ていた色違いの漆黒のバトルスーツを身に纏い、目に妖しい光を放つバイザーを付けた香織が現れた。
「ウフフフフ…」
「何だ? その恰好は?」
「どう? 美しいでしょ? 生まれ変わった私と今から愛しながら戦いという舞いを踊りましょ? そして、私のお人形になってね…虎・太・郎…」
「…残念だが、お前の人形にもならねえ…俺は、ただお前にかかった呪いを解くだけだ!」
「呪い? この素晴らしい力が? 理解してもらわなきゃいけないようね…虎太郎ォ!」
「さぁ、始めるぞ…香織ィ!!」
虎太郎と香織は、戦闘を開始した。




