第参拾参話《第二の輪廻 丙~復讐を誓う龍~》
「…という訳だ…」
「つまり、あの時、お前が俺と香織に剣を向けたのは…」
「事実だ。すまんあの時は、怒り狂っていた。」
龍雅は、虎太郎に向かって頭を下げた。
「復讐は、何も生みださないだろう。だが、復讐とは創造ではない再生だ。誰も喜ぶ事は無く誰かが悲しむだろう。だが、失った物を取り戻すのは、どうすればいい? 今の俺は、一人の少女と明日を失われている。そしてお前ら二人を苦しませようとしている。元はと言えば、俺の時間逆行の所為だがな。」
「それは、奈菜か?」
「そうだ。奴は、あいつ等の手に落ちた。お前の方もそうだろう? お前も大切な奴があいつ等の手に落ちた。お前も奴らに復讐する義務、いや、権利がある。」
「…権利?」
「あぁ、お前は手を汚す必要はない。ただ、復讐をする気が無いのなら、情報が集まるまで学校を休んで何処かへ逃げろ。二手に分かれてな…」
龍雅は、そう言い、虎太郎は、龍雅の肩を掴んだ。
「俺がやるのは、復讐じゃない…香織を元に戻す為に戦う。」
「そうか…ならいい。」
「聞きたいんだけど、さっき言っていた選別軍ってあの?」
「それも聞きたい…」
「そうだ。奴らだ。奴らは、また動き出した。」
「確か今もその組織のボスが逃亡生活を送っているって…」
「あぁ、その通りだ。動き出したという事は、奴らのボスが復帰したんだろう。」
「それで、何故お前や俺、そして香苗を狙っているんだ?」
「さぁな…多分だが、俺が原因だろうな。」
「どうしてだ?」
「どうも、俺は奴らに狙われているらしい…何故だが知らんけどな…」
「お前の不死の力が目当てではないのか?」
「確かにそれはあり得る…だが、俺の能力以上の不死者が居るだろう? 不死を狙うならそいつを狙っているだろうよ。 例えば、アフリカにいる1000年以上生きる男とかな…」
「じゃあ何故?」
「さぁな…まぁ、作戦は変更だ。香苗は、これまで通りに生存する事だけを考えろ。虎太郎、お前は香織を俺は奈菜を元に戻す事だ。」
「…似てる名前ね…私と香織という子…漢字の一つの違いでこんなにも違うとはね…」
「そういえばそうだったな…だが、人というのは誰しもが同じという訳ではない。まぁ、タイプとかには分けられるがな。」
「そうね。まぁ、どうでもいい事だけど…では、私は、また逃亡生活に戻るわ。私が、また普通とは言えないけど、ある程度普通の女の子に戻れるように頑張ってね。」
「あぁ…この戦いを終わらせる…」
――セーブ…
龍雅は、今を記録し、時間逆行し、辿り着く地点を変更した。
香苗は、何処かへ消え去った。
(龍雅君を独り占めするなんて贅沢な事…あんな完璧な容姿の人間は、私とは不釣り合い…誰かに便乗しなければ割に合わない…そう、私は、ただの少女に過ぎない…だから私は…)
何処かの街に移動した香苗は、人混みに紛れていった。
「龍雅…お前は何故、そうまでして復讐を…?」
「気に入らねえんだよ。リアルで悪堕ちやNTRなんてさ…そんな事やる奴は、俺が血肉骨残らずこの世から消す。」
「気に入らないそれだけで…?」
「あぁ、そうだ。そして操られた者達と牢獄に囚われた者達の為であり、もし奴がこの事件の黒幕ならば、隕石によって死した者達の無念を晴らす為でもある。悲しむなら悲しんでおけ…誰も望みも喜びもしないだろうな…俺の独善と偽善に塗れた行為にはな…」
龍雅は、自分を嗤いながら主人公の良く言う復讐を否定する言葉を皮肉った。
「…確かに、お前は間違っている。復讐なんて何も生みださないし、新たな憎しみが生まれるだけだ。けど、俺には戦う理由がある…香織を取り戻し、平和も取り戻すってな…だから、お前の復讐には賛同できないが、お前と共闘する事は出来る。」
「わかった。では、一先ず帰るとしようか…明日だ…明日目覚めてからが勝負だ。」
「あぁ、わかっている。」
(龍雅…お前は、何故そうまでして…もし、お前がそのまま執念に囚われ、本当に理性を失ったら俺は、またお前を戒めよう。)
虎太郎は、後ろを振り向き、その場から消え去った。
――さて、俺は――
龍雅は、空を飛び、得大紐の方へと向かって飛んで行った。
一方その頃…
極星院邸では、ジャージ姿の美幼女紗里弥とガスマスクを付けたロングコート姿の少女YSが、地下室で戦闘を行っていた。
『という訳です。お嬢様?』
「なるほど、龍雅は、私に奴らの居場所を捜し出せと前のループで言ったんだな? それよりもお嬢様呼びはやめろ。」
紗里弥は、そう言い、近距離から炎の弾幕を放った。
『ははは…すみませんね…』
YSが、指を鳴らすと炎の弾幕は、紗里弥の後ろに一瞬で移動し、紗里弥は、蜘蛛の糸を掃うかのように炎の弾幕を腕で掻き消し、高周波ブレードを構え、YSに向かって突撃し、YSは、十束剣を取り出し、紗里弥を迎え撃つ。
「…だが、何故言わない? 私にも、龍雅にも…奴らの居場所を…」
『私は、他の依頼人の居場所は明かさないって言いましたよね? それに、簡単にネタバレをしてしまっては面白くありません。』
YSと紗里弥は、剣と剣を打ち合い、地下室に金属音が鳴り響く。
次第に、紗里弥の打ち合う力が弱くなっていき、YSは、マチェットの刃をバラバラにした。
「何だと…?」
『まぁ、安心してください…ヒントくらいなら教えてあげましょう…そうですね…ビルと工場…それだけですね…』
「ビルと工場…それはつまり…」
『まぁ、そうゆう事です。では、私はこれにて…心配しなくても貴方は、いつか龍雅さんの力に追いつきますよ。まぁ、このまま努力を続けていたらですけどね…』
YSは、その場から去っていった。
(まだ、私は、龍雅には及ばないか…いいや、力が及ばすとも私には龍雅をサポートするとゆう役割がある…早く伝えなければな…ヒントを…)
紗里弥は、地下室の外のロッカールームに入り、ロッカールームで待っていた緋香里に、脱いだジャージを渡し、そのままシャワールームに向かって、シャワールームの前で上下の下着を脱いで畳んでから入り、暖水のボタンを押すと、40度のお湯が出始め、シャワールームは、曇り始めた。
(龍雅…お前は何故、そんな事を隠していた!? 私に隠し事をするなんて…お前が私を巻き込ませない為に隠したのか!? いいや…そうではない…私は、時間逆行する能力が無いからだ。時間を巻き戻せない者にこの事件に関与する資格はない…)
紗里弥が一分間シャワーを浴び、シャワールームから出て、体を拭き、畳んであった制服に着替えた。
(ならば、私は今回で終わらせよう…情報を伝える為に、私は私の命を捨てよう。そして次週の私と龍雅に託そう…)
紗里弥は、緋香里と共にロッカールームから出て行った。




