第弐拾弐話《ファーストエンド・セカンドビギン》
「龍雅! もっと、飛ばしてくれ!」
「あぁ、でも追いつけねえ…ありゃ、強い奴が憑りついてやがるな…思念体の戦闘力は、本人と同じ…更に人に憑りつくと。憑りついた奴の戦闘力に思念体の戦闘力が加算される…奴は、それを知っているようだ…よし、加速する…レースフォーム…」
龍雅が、そう言うと、飛行速度が上昇し、芽衣との距離を少し詰めた。
「もし戦闘になったら手伝おう…奴は、強い…お前一人では勝てない…」
「そうなのか?」
「あぁ、あの速度…俺では追いつけない…であるならば、戦闘力も高い筈だ…速度が速く飛行出来る程の念動力がある奴は強いに決まっている…」
「そうか…」
龍雅が、芽衣を追いかけていると芽衣は、いきなり急降下し、芽衣は広い荒れた空き地に着陸した。
「あそこに降りるぞ。戦うのと同時に芽衣に憑りついて居る奴を問い質さねばな…何故、芽衣に憑りついたのかを…」
龍雅は、強い殺意を芽衣に憑りついている霊に向けながら空き地に着陸した。
「降りろ…」
龍雅がそう言うと、虎太郎は龍雅の背中から降り、両手に炎と電撃、両足に鋭利な氷の靴を纏わせた
「おい、お前…名を名乗れ…芽衣に憑りついている悪霊よ…俺達の手で貴様を地獄に還してやろう」
龍雅が、そう言うと芽衣は「フッ」と笑った。
『俺が、悪霊? 違う俺は生霊だ…間違えないで欲しいぜ…』
芽衣に憑りついた霊は、芽衣の声と男の声が重なった声でそう言った。
「なるほど、では分身よ…何故、芽衣に憑りついた?」
『フッ、さあな…』
そう、芽衣に憑りついた霊がそう言うと、龍雅は日本刀を生成し、念動力で射出すると、芽衣は、余裕の表情で日本刀を空中で止めた。
『危ねぇな…こいつ事殺す気だったのか?』
「ちゃんと答えろ…」
『答えてほしいか…なら、俺と戦い勝ってからにしなァ!!』
生霊がそう言うと、時間が停止した。
――これは…時間停止能力か!?
龍雅は、視認出来ていた。
時間が止まった世界を…しかし、龍雅は、その時が止まった世界では指一本も動かせない
龍雅は、何とか体を動かそうと体に力を入れるが、体は、びくとも動かない
――口が開かない…
声を出そうとしても口が重く開くことが出来ず目や顔を動かそうとしても動かない。
飽く迄、龍雅の時間停止は、龍雅自身の心だけが時間の止まった世界に行けるだけである。
『ククク…時間を停止する能力…この体の持ち主の能力だな…中々に強力だ…さて…お前は視認しているのだろう? この世界を…』
――体を動かせねえ…動かす事が出来れば…
『悲しいねえ…お前のお仲間さんは、俺の能力を認識出来ないから、動けない状態で、お前の仲間とお前が俺にやられるなんてな…』
生霊は、そう言いながら、龍雅に近付き、龍雅の胸を手で貫いた。
『残念だが、てめえはここで死ね…無防備なお前が悪いんだ…』
生霊が、そう言い、手を引き抜き、龍雅の腹を蹴ると時間が動き出し、龍雅は口から血を吐き、胸から大量の血を噴出しながら龍雅は吹き飛んで行った。
「龍雅!」
『敵前にして余所見とは余裕なもんだな!』
生霊は、虎太郎の顎をアッパーで殴り飛ばし、虎太郎は、すぐさま空中で停止した。
(あいつ…あの龍雅を一撃で…何者だ? まぁ、いい…今は敵の能力を調べ、俺のモノにするだけだ…)
虎太郎は、電撃を纏った氷の槍を数十本生成し、生霊に向かって射出した。
『無駄だ!』
生霊は、念動力で全ての氷の槍を空中で停止させ、逆に虎太郎の方に全ての槍を返した。
「くっ!」
虎太郎が、槍を防ごうとすると――
「生憎俺は死んでいないぞ?」
虎太郎の目の前に、無傷な状態の龍雅が現れ、槍を全て反射し、更に剣と槍を生霊の周囲を取り囲み、逃げられないように生成し、そしてそれに追い打ちする様に、エネルギー弾も生成した。
「これならお前は、時間を停止しようが逃げられない! 死のリスクがあるがこれが最大限の荒治療だ!」
龍雅は、そう言い、剣、槍、光弾を射出した。
『脱出させまいと無数の武器を生成したか…だが、無駄だ! こいつの時間停止時間は、これを脱出する位の余裕はある! 時よ、止まれ』
生霊がそう言うと、時間が停止し、生霊は、地面を殴り、地面に大きなクレーターを形成し、クレーターを通じて殺戮の檻から脱出し、空中に浮遊し、龍雅の目の前で手に力を籠め始めた。
『さて、何でよみがえったのか知らんが…今度こそ死ね』
生霊が、龍雅の心臓を再び貫こうとした時…
「後ろががら空きだぞ!!」
『何!?』
生霊が後ろを振り向くと、龍雅が生成した剣を持った虎太郎が、生霊に斬りかかろうとしていた。
『ぐあッ!』
生霊は、背中を剣に切り裂かれた。
『この体は、お前の妹なのに、容赦はしないとはな…まぁ、お前もこの時間の止まった世界で動けるのも驚いたがな…』
「クソッ…体が…」
(クッ…動けるとは言え…所詮は30秒だけしか持たないか…)
『まぁ、お前は精々その程度しか動けないだろうな…』
――頼みの綱は虎太郎のみか…考えろ…俺も時間の停止した世界で戦う方法を…考えろ…どうやったら体もこの世界に行けるのだ? …いや、一つ思いついた…俺も時の止まった世界でも動ける策を…案外簡単な事であった…しかし、この状況では、俺は良いとして虎太郎が死ぬ可能性も捨てきれない…辛うじて生きていれば、俺の所有するMPを全て虎太郎に回せばよいが…
龍雅は、そう思い固定された視界内で、生霊の姿を追う、生霊は、龍雅が投擲した武器を二つ持ち、龍雅の背中に乗り、殺意の籠った笑みを浮かべた
『死ね死ね死ね死ね死ね死ねェ!!』
生霊は、龍雅の体を龍雅が生成した無数の剣と槍を突き刺し、そして二つの剣で斬り抉り、龍雅の臓器を握り潰し、龍雅の骨を踏み砕いた。
(龍雅!!)
その痛みは、想像を絶する痛みで、恐らく女性が体験するであろう男性が経験するとショック死するとまで言われている出産の痛みを遥かに超える激痛だ。
虎太郎は、友の体が、蹂躙される光景から目を逸らしたい、瞼を閉じたいと思っているが、今は、意識のみが時間停止世界に居るが故に、瞼も目も首も動かない…この痛々しい光景から目を逸らす事が出来ないのだ。
――ククク…そのまま俺の体を蹂躙するといい…時間切れになった時がお前の最後の時だ…
しかし、龍雅は痛みなどでは決して屈しない…何故ならば彼は、不死であるからだ。
不死ならば、痛みなどただの精神的な苦痛でしかない
不死ならば、痛覚など必要などない
不死ならば、痛みを気にする必要もない
不死ならば、死を恐れる必要などない
だが、彼は人の心を失わない…彼は、次の一歩に進む為に――
⦅時間切れか…⦆
生霊が、そう言い、凍り付いた時の流れを溶かした瞬間――
――今だ!! 回復術!!
龍雅は、全MPを回復技に回し、龍雅の肉体を一瞬にして修復した。
『何!?』
生霊が、龍雅の体が一瞬にして再生した事に怯んだ隙に、龍雅は、虎太郎の方へと飛んだ。
「虎太郎! 俺の手を握り、俺を時間停止世界に連れて行く事を許容しろ!」
「よくわからないが分かった!」
虎太郎は、龍雅の手を握った。
「時よ、止まれ!」
虎太郎は、龍雅の手を握ったまま時間を停止した。
「フッ、これが時の止まった世界か…やはり体を動かす方がいい」
龍雅はそう虎太郎の手を繋いだままそう言った。
「虎太郎よ。少々色んな意味で危ない気がするがいいか?」
「あぁ、芽衣を救うならばな…それに、お前がいないと勝ち目ないしな」
「では、後25秒行くぞ!」
「応とも!」
龍雅は、大剣と大盾を生成し、虎太郎は大盾を持ち、龍雅は大剣を持った。
『時間停止世界に足を踏み込んだ所で俺に勝てるとは思うなよ!!』
生霊は、急降下し、龍雅に殴りかかろうとすると虎太郎が攻撃を防御した後に、盾で生霊を殴り、龍雅は、剣弾を連射し、生霊は、剣弾を避けつつも、剣が顔や体をかすり、傷を負っていく。
『近距離がダメならばこれでどうだ!?』
生霊は、龍雅を突き刺した剣と槍と生霊を傷つけた剣を念動力で操り、弾幕として放った。
「虎太郎! 踏ん張れ!」
「あぁ!」
虎太郎は、盾を構えた
「クッ…」
虎太郎は、武器の弾幕を盾で防ぎながら、前へと進む
「ハァ!」
虎太郎は盾を地面に突き刺し、壁代わりに使い、弾幕を防ぐと二人は、生霊の後ろに瞬間移動した。
『!?』
生霊が振り向き、すぐさまは二人に殴りかかろうとすると、虎太郎は、拳を握りしめ、龍雅は剣を構え—、二人は、生霊に攻撃しようとすると――
「クソッ!! 時間切れか!」
二人の動きは、止まり、二人は生霊の拳を受けた
(グフッ…)
――クッ…
『残念だったなァ…後ろを取った事は褒めてやる…だが、時間が時間だったようだな。』
生霊は、二人の体を蹴り始める。
『オラァオラオラオラオラ!! ハハハハハハハ!!』
生霊は、龍雅と虎太郎の急所を重点的に攻撃する。
(どうやれば、こいつを倒せるのだ…やはり、殺す気でやらなければ…)
――虎太郎もそう思っている事だろう…なら、俺も殺す気でやるしかないか…
(後、体感時間で5秒後に、能力が再使用できる…5秒間だけ…5秒間だけ耐えねば…)
『さて、お前はこれで終わりだ!!』
生霊は、虎太郎と龍雅の腹を突き刺し、そして引き抜いた。
(ぐふっ…)
――クッ、虎太郎がやられたか…これでは、あの策が使えない…いいや、時を止める手段が無くなったが、奴にも時間停止能力を使用する為のインターバルがある…その隙を狙うしかない…燃費が悪いが、アレを使うしか他ならない…
『時間は、動く』
時間は動き出し、二人は後方へと吹き飛ばされながら、腹から血を噴出し、ゴツゴツとした地面に皮膚を傷つけ、皮膚を抉り、そこから血が滲み出始める。
「クソッ…」
虎太郎は、腹を抑え、立ち上がろうとすると――
「…もうお前は休むがいい…」
龍雅が、そう言って虎太郎の項を叩き、虎太郎を気絶させた。
「安心しろ…お前が次に目覚めた時は、お前の妹がお前に駆け寄っているだろう。」
龍雅は、そう言い、腹の痛みに耐えながら、剣を生成し、構えた。
『無駄だと知りながら、そして唯一の策を消して俺に立ち向かうとは、良い度胸じゃねえか…』
「フン、勘違いするな…何も俺は、無謀な戦いを使用って訳じゃない…俺にはお前に勝つ秘策がある…」
『へぇ、そうか…じゃあ教えてもらいたいものだねぇ!!』
生霊は、龍雅に向かって突撃し始めた。
「決着を付けよう…一騎当千フォルム…」




