第壱拾玖話《秘密の会議には、盗聴者が居る可能性がある。》
「容赦しねえぞ! ゴラァ!!」
誠一が、釘バットを持って龍雅に殴りかかろうとすると――
「待て…矛を収めよ。」
紗里弥は、念力で誠一を空中で停止させ、釘バットを圧し折った。
「会長…」
「うぬらがやっても慢心の無い本気の龍雅には勝てぬ…さっきも見ただろう…電脳世界の街を一瞬で荒れ地にする程の力をな…それに、今の龍雅はさっき映像に映っていた龍雅よりも強い…だからお前達が戦った所で勝てる見込みもない…諦めるがよい…それに、会議室がうぬらによって破壊されるではないか…」
「クッ…」
紗里弥の警告によって能力者全員は、攻撃態勢を解いた
「会長ォ! 俺のバット弁償してくれよォ!」
誠一はそう言って紗里弥に訴えかける
「あぁ、わかった…おい、龍雅…新しいの作ってやれ」
「了解した。」
龍雅が、指を鳴らすと釘バットを造り、誠一に手渡す。
「あんがと…って、これさっきよりも重くねえか?」
「それは、さっきのアルミ製のパイプ製の金属バットではなく釘もバットも炭化チタンで出来た釘バットだ。バットの中身にも炭化チタンが入っている云わばそれは炭化チタンの棍棒だ。」
「マジか…」
「マジだ。気に入ったか?」
「あぁ…ありがとよ。」
誠一はそう言い、バットを担ぎ、自分の椅子に座る
「早速打ち解けたようだな。さて、龍雅よ…先ほど話した通り、今年は東京都の個人競技の参加希望者が少ないのだ。そこで龍雅に個人競技のどれかに参加してもらいたい…親父から聞いたのだが、お前のスポーツの実力は、世界最高クラスらしいな…そこでお前に提案がある…」
「何だ? 見逃す代わりに個人競技に参加しろってか? いいぜ。やってやるよ。」
「フッ、話が早くそして素直で助かる…では、このどれかから選んでくれ…能力者格闘大会男子の部…」
「それで行かせてもらう。」
「即答だな…言っておくが、武器の使用や殺傷力のある攻撃は無しだぞ?」
「わかっている。まぁ、俺が余裕で優勝だがな。」
龍雅は、クククと笑い、余裕な表情でズボンのポケットに両手を入れる。
「慢心は禁物だ。どんなに強者でも油断してしまえば弱者に負けてしまうのだ。この前、私と緋香里と戦った時に負けただろう…あれが、一例だ。」
「フッ、所詮出るのはA級以下の能力者…俺が負けたのは、S級能力者とEX級能力者のみ…A級以下の能力者に負ける筈なんてねぇよ。」
「そりゃ、てめぇ俺達に喧嘩売ってんのか?」
誠一は、新しい釘バットを龍雅に構えて言う。
「そうかな? 確かに、真っ向な勝負ではA級以下がS級に勝つ事は難しかろう…だが、努力と工夫と相性次第では、A級以下がS級に勝てるであろう。油断した格上の相手が、策力を練った格下の相手に負けるという事は、歴史上でもよくある事…6月に開催される体育大会でも同じ事だ。格下がお前を倒す可能性もある。」
「俺に言いたい事は、獅子のように戦えという事か?」
「そうだ。獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすという言葉がある。慢心は早々に捨てる事だ。お前は最強を手にする可能性があるのだが、まだお前は最強ではあるまい…それを自覚するのだ。」
紗里弥は、冷酷な口調でそう言い、それを聞いた龍雅は、無表情になる
「……そうか、俺は、お前の要望に応えてその時だけは慢心無しでいかせてもらおう。」
「ならいい…どうやらあるお偉い方は、東京の誇りを守りたいらしい…それで不利な状況下で有能な能力者の候補を選別する為に、私達まで使う程、必死に探しているらしい…全く…学生の大会に何ヤケになっているのか…」
紗里弥は、頭を抱えてそう言った。
「まぁ、お前がやってくれるのはありがたい事だ。頼んだぞ?」
「あぁ、俺に任せておけ…」
龍雅は、そう言って自信に満ちた表情で、自分の胸を叩く。
「だが、6月と言えば梅雨のシーズン…天気の方は、どうするんだ? 去年は晴れていたが…」
「体育大会の日は、天候に合わせて開催するか、分子運動速度を操る能力者達が、協力して天気を強制的に変化させる。」
「今年は、その能力者は揃っているのか?」
「私一人でも大丈夫だ。何故なら私一人で、体育大会会場周辺の空だけではなく地球全体の空を支配する事が出来るからだ。体育大会会場周辺だけならば、朝飯前だ。」
「なるほど、で? 天気の方は、許可はとってあるのか?」
「あぁ、大丈夫だ。さて、龍雅よ…何故、私が翔妃の能力を使わず態々ここまで来たと思う?」
「さぁ? 俺をおびき寄せる為か?」
「正解だ。」
「それで、何が目的だ?」
「さっきのが、目的だ。一応お前をここへおびき寄せた理由を言わねばならぬ。」
「そうか、ならいい…では、俺はこの辺で置賜させてもらうとしよう。」
龍雅は、跳躍し、バグを使って天井をすり抜けた。
(全くアヤツは、面妖な能力を次々と使う…ゲームに関する機能を拡大解釈して能力にしたものだとこの資料に記されていたが…ご都合主義にも程があろう…)
紗里弥は龍雅が出て行った穴の開いていない天井を見てそう思う。
「では、会議の続きを始めよう。」
紗里弥は、そう言い、会議を再開する。
「では、能力者格闘大会の選手一人が決まったので、次は――」
雨降る地上、遠くに見えるオレンジ色に輝く夕陽と空、上を見上げると、遠くに見える夕陽に照らされている所為か、黒く不気味な雨雲が空を遮っている。
雨は、歴史的な存在をも徐々に破壊していく人類の負の産物、酸性雨…龍雅は、地上に出た時に雨に濡れ、龍雅は、自分が履いている靴が上靴ではなく外靴である事と今いる場所をスマートフォンで確認し、咄嗟に近くにある一人の少女しかいないバス停に入った。
――ふぅ…雨に濡れちまったぜ…まぁ、雲を解体すればよかったんだが、天気を変えてしまってはいけないからな。それにしても渋谷か…少し遠い所に来てしまったな…まぁ、能力を使って飛べば近いけど…
雨に濡れた龍雅は、高嶺の花の様に美しくそして人を狂わせるような色気な放っている
「あっ、あの時の…」
女性向け小説を読んでいた少女は、雨に濡れた龍雅を見るなり、頬を少し赤らめ、小説を仕舞ってタオルをバックから出し、龍雅にタオルを取り出すと、龍雅は、タオルを受け取り、顔と頭を拭いた。
「ありがとよ。」
「どういたしまして」
「って、お前は、あの時のか?」
その少女は、思春期に入りたての中学生と見間違えるような容姿の茶髪で、セーラー服の地味な美少女である。
彼女は、能力を悪事に使う能力者達に襲われかけたが、そこを偶然通りかかった龍雅に助けられたのだ。
それは、数日前に遡る…
「嫌! やめて! 誰か助けて!!」
「へへへ…こんな所じゃ誰も助けに来ねえよ…」
悪の能力者達は、そう言い、少女を念力で縛り付け、服に手をかけようとすると…
「それはどうかな?」
現れたのは、両腕に包帯を巻いた黒ずくめの美少年であった。
「あぁ? なんでてめぇは?」
「さぁな? 強いて言えば俺は裏路地の悪魔と言っておこうかな?」
(何を言っているの? もしかしてあの黒い男が私を助けに?)
「まさか、てめえは…おい、お前ら! あいつに気を付けろ!!」
一人の能力者がそう言うと、その能力者の後ろにいた能力者全員が龍雅に向けて警戒心を向ける。
(まさか、あいつが…Dとでも言うのか?)
能力者一人がそう思ったその刹那、悪の能力者全員が後方に吹き飛ばされ、壁にぶつかり気絶した。
(強い…でも、助かった…)
「お嬢さん? こんな所で何をしているんだ?」
「え…あの、ここらに有名人が通う店があるって聞いて…」
「なるほど…俺と同じか…じゃあ俺と一緒に行こう…それなら、どんな奴が来ても俺がお前を守ってやるよ」
男は、甘美な低い声で、そう言い、白馬の王子様のような爽やかな笑顔を浮かべて少女に手を差し伸べた。
「貴方の名前は?」
「俺の名は、剣ヶ峰龍雅…まぁ、通りすがりの能力者だ。あんたは?」
「私は、葛城香苗、さっきはありがとう!」
「いいって事だ…人が襲われていたら助けるのが、善良なる庶民としての役目だ。それよりも一緒に探そう」
そして、今に至る。
(私の王子様にまた会えるなんて…嬉しい…)
――ククッ…さて、またまた仕事が増える…さて、もう一つ増えた…紗里弥、翔妃、奈菜、緋香里、そして新たに追加された香苗…紗里弥は、もうクリア出来たとして…他の少女はまだクリアできていない…課題がどんどん増えて行くばかりだな。
「なぁ、香苗ちゃん…君、想い人とかいるか?」
「いッ…いないけど、何で?」
香苗は、少し顔を赤くして動揺し、そう言った。
「いや、お前のような可愛い奴なら彼氏がいると思ってな。」
龍雅はそう言い、香苗の顎を軽く持ち上げ、龍雅は顔を近づけた。
「可愛いって…」
――…これは、こいつには想い人が居るな…俺は、寝取りと無理矢理は嫌いだからな…俺は、そいつに想い人がいるならば、俺は諦めよう…
龍雅は、そう思い、手を放し、香苗の顔はどんどん赤く染まり始める。
(私が惚れているのは…貴方よ。)
龍雅は、鞄からスマートフォンを取り出し、香苗は、龍雅がスマートフォンを弄り始めると蘭は、少女漫画を取り出し、龍雅の事をチラチラと見ながら漫画を読み始めた
――俺を見ているな…思い違いだったか…しかし、こいつが受け入れてくれるだろうか…? 俺の夢を…夢を受け入れて来るならば…俺は…
香苗の視線が龍雅の方に向くと龍雅は、爽やかな笑顔を浮かべると、香苗は本で顔を隠した。
――フフッ…愛い奴だ……雨が止み始めたか…
雨が止み始め、龍雅は立ち上がった。
「香苗、また会えて嬉しいかったぜ。」
「うん、私も」
「フフッ、これメアド」
龍雅は、香苗にメールアドレスが書かれたメモを渡す
「じゃあな。香苗…また会おう」
龍雅は、そう言い、空を浮き、天空彼方へと飛んで行った。




