第壱拾捌話《強い奴らが会議をする際に、必ずその中でも強い奴が会議に欠席する。》
――学校の裏組織の会議と聞いたら盗み聞くしかねえだろ…
放課後、鞄を持った龍雅は、裏生徒会の参加者である二人の少女紗里弥と翔妃を追って廊下を忍び足で追跡している。
龍雅は、上靴ではなく外靴を履いているが、その外靴は、汚すのを躊躇う程に汚れが一つもついておらず、靴の裏も砂や埃のついていない綺麗な状態だ。
――ちょうど休日に得たこの状況に最も適した新しい能力を使ってみるか…ステルスアクションフォーム…戦闘力の大幅の低下と一度死んだら自動で時間が巻き戻る所謂ゲームオーバーと引き換えに、速力と視力、単発射撃攻撃の精密性、索敵能力を飛躍的に向上し、更に俺がこの世界に存在しないが如く気配を遮断し、殆どの索敵手段を無効化する隠密性を兼ね備えたチート形態…まぁ、最弱形態死にゲーフォルムや、それの逆の最強形態一騎当千フォルムもあるけどね。
「ステルスアクションフォーム発動…」
龍雅は、誰にも気付かれないような小さな声でそう呟き、龍雅の体が一瞬だけ消え、その後龍雅の体は、視力の良い人でも目を凝らさないと見えない程の透明な体になった。
――よし、これでいい…後は、二人を追いかけるだけだな。
龍雅は、そう言って素早くも静かに二人を再び追いかけ始めた。
二人は、階段を上がって三階へと向かう。
――生徒会室か? それとも、理事長室か? どちらかにある筈だ…
二人の少女の後をつけて龍雅も三階に上がった。
――さてさて、何処に行くか…
三階の廊下を見渡すと、理事長室に二人が入って行く姿を龍雅の目に映った。
――やはり、理事長室か…閉まる前に、入り込むか…
理事長室のドアが閉まる前に龍雅は、全力で走ってスライディングで、理事長室に入り込み、そしてソファーに身を隠した。
――さて、ここからどうするか…
龍雅は、二人の様子を見ると、翔妃は、宙に浮き、部屋の端から端まである巨大な本棚の一番奥の上端の本を押すと、真ん中の本棚が、下がっていき、隠し通路が現れた。
「さて、行きましょうか」
「あぁ…」
――さて、どさくさに紛れて俺も入るか…
龍雅は、二人が入る前に、先に隠し通路に入って二人を待ち伏せし、二人が入ると龍雅は、二人の後に着いて行いていくと、現れたのは、最新式のエレベーターであった。
――エレベーターか…地下に会議室があるという訳だな。
紗里弥が、エレベーターのボタンを押すと、龍雅は、空に浮いてエレベーターに乗り、エレベーターの行き先階のボタンを見るとこの三階と地下七階しかない。
紗里弥が、地下七階のボタンを押すと、エレベーターは、動き出し、あっという間に地下七階に到着し、龍雅は、エレベーターを出るとそこは、誰もいない地下鉄であった。
――地下鉄か…電車はもう来ているな…これに乗るのか?
切欠きホームには、一両しかない小さな電車が停車しており、電車の行き先は、Gクラス会議場東京支部前と表示されている。
――能力者クラス…なるほど、Gとはつまりゴッド又はグレート或いは、グレイテストなどを意味するイニシャル…一年の時に聞いた事がある。E組、D組、F組などの劣等生は、努力をすればA組、B組、C組に昇格できるが、G組はどれだけ努力してもエリートクラスには入る事は出来ないと…これでようやくわかった…紗里弥が隠していた事を…G組は、能力者、能力に覚醒していない者達だけのクラス…俺は、やはり鈍感だな…極星院邸で言われた時点で気付いておくべきであった…東京支部と言う訳は…能力者クラスは、全国にも存在すると言う事か…ここまで来たんだ…盗聴せねば…
龍雅は、二人よりも電車に先に乗り込み、そして二人が電車に乗り込むと列車が発車し始めた。
――さて、行きつく先は、何処か…楽しみだな。
龍雅は、運転席の方を見ると、運転席には誰も居ず、無人運転のようだ。
――無人運転か…大丈夫かな? 人間並みに運転精度が高まったとはいえ、もしものアクシデントに対応できるのか…?
龍雅は、無人運転の電車に不安を覚えながら二人の美少女の可憐な姿を目で楽しむ
――あの二人は、やはり華になる。美しいそして可愛い…見ているだけでも愉悦に浸れるぞ…
龍雅は、そう思い頷き、二人にねっとりとしたイヤらしい視線を向ける。
「なぁ、翔妃…なんか変な視線を感じるのだが…」
「気の所為ですよ。幽霊なんているはずもないし…なんですか? 隠密系能力者が居るとでも言うのですか?」
「あぁ、隠密系能力者は、軍事的にも大きな需要がある。恐らく電車に入り込んでいるのは、何処かのテロ組織の類いであろう。」
「まぁ、その可能性も捨てきれませんね…では、一つ…その不安を消し去る為に――」
翔妃が、紗里弥と翔妃は、電車の一番前に瞬間移動し、翔妃と紗里弥の前に、無数の虹色の光る穴が現れ、穴の一つ一つから無数の武器が、顔を出している
「この技を使わざるを得ませんね…」
翔妃が、そう言って指を鳴らすと無数の穴から無数の武器が射出されたのだ。
――ちょっ、やっべwww撃って来やがったwww
龍雅は、全ての武器の軌道を読み、龍雅は、武器を全て気付かれないように全て避け、射出された武器は、椅子や天井そして出入口などに当たる直前に空間の穴に入り、消え去った。
「どうやら、貴方の勘違いのようだったみたいですね。」
「そうだったみたいだな。」
――あっぶねえ…
「さて、誰も居なかった事ですし…席に戻りましょうか」
「うむ、そうだな。」
――俺は、もう見ないぞ。この電車内ではみんぞ…
龍雅は、冷や汗を流し、二人の美少女の方を見ず目の前の車窓に映る何もないトンネルの壁を見て電車が目的地に着くまで時間を潰した。
――そろそろ駅に着く事かな?
龍雅が、そう思い電車の一番目を見ると、薄暗い灯りに照らされた何やら怪しい雰囲気に包まれた駅のホームが見え始めた。
ホームの一番奥には、エレベータが設置されており、恐らく会議室に行くためのものだろう。
――あそこか…あの先に、会議場があるという訳か…ククッ、どんな話し合いが繰り広げられるのか楽しみだな。放課後の教室でセーブもしてあるし、もしもの場合自害して時間を戻り、情報を持ち逃げするのもいい…
龍雅は、そう思い、立ち上がって電車の出入り口の前に立って降りる準備し、電車は、駅に近付き始めると速度を減速し始め、駅のホームに着くと電車は停車し、ドアが開き、龍雅は後ろのドアからそして二人は前のドアからホームに降り、龍雅は、ホームに並ぶ七つの電車を見てその後に、紗里弥と翔妃に着いて行った。
――さて、面白い話が聞けるかオラ、ワクワクすっぞ。
三人はエレベータに乗り込んでエレベータのドアが閉まった。
「間に合ったか?」
紗里弥は、そう言って扉を叩いていた開き、翔妃と共に会議室に入る。
会議室は、何の変哲もない窓無しの会議室で、特にこれと言った特徴はない。
しかし、東京全域の能力者クラスの代表者が集まった会議室は、まるで悪の組織の幹部達が集まるような重圧感と怪しさが漂う会議室と化す。
――さてさてどんな話し合いかな? 面白い話だといいんだが…
龍雅は、量子トンネルの効果と乱数調整を使ったバグ技を利用し、壁を抜け、会議室に入り込み、龍雅は会議室の床に座り込んだ。
「間に合っている。後も少しで遅刻だったぞ? 紗里弥君、翔妃君?」
乃愛はそう言って二人分の席を念動力で引く。紗里弥の席は、一番奥の真ん中の席で、翔妃の席は、その隣の席だ。
「そうか、ならば良い…」
そう言い、紗里弥と翔妃は、席に座り、翔妃は、指を鳴らすと何処からともなくこの会議室にいる龍雅を除く全員分の緑茶が現れ、全員の席に置かれた。
「あやつは、また来ておらぬのか?」
紗里弥は、出入り口から一番前の真ん中の席を見てそう言う。
「あぁ、そうだよ。令嬢様、あいつはまた忙しいから欠席だよ。」
王子様のような高身長の美少年は、紗里弥の問いに答えた。
「で? 今回は、何の話合いだ?」
そう言って片手に釘バットを持った不良の風貌をした美少年は、最新の電子煙草を吸いながら机に脚を上げ、足を組んでそう言う。
「お前は、聞いていなかったのか? 今回は、新たに発見されたEX級能力者剣ヶ峰龍雅への対応と今年開かれる全国能力者クラス体育大会についてだ。後、会議中は足下げて煙草吸うのをやめろ。」
大和剛司は、腕を組んでそう言い、不良の風貌をした美少年は、足を下げた。
彼の名は、黒田誠一、能力は全ての乗り物と凶器を使いこなす能力だ。
「サーセン…で? 誰だ? 剣ヶ峰龍雅とってのは、どんな能力を持ってんだ?」
「龍雅の能力は、恐らくですが、無限に進化する能力だと推測されています。」
そう言い、タブレットを持った美少女は、そう言って報告をする。
「推測? 一体どういう事だ? 能力は全て資料に記されるんじゃねえの?」
「そうだ。だが、資料として記されていた時の龍雅と私が一回目に戦った龍雅と二回目に戦った龍雅と比べて能力の数も格段に増えておる。今もなお、能力の数は増える一方だ。」
紗里弥は、そう言って龍雅の能力について答える。
「これを見よ。これが龍雅の能力だ。おい、映像を出すがよい」
「はい」
タブレットを持った美少女は、手に持っているタブレットを操作し、紗里弥の後ろにあるモニターに映像が映った。
それは、電脳世界での戦いの様子だ。龍雅の戦っている速さは、常人では捉える事は出来ず、能力者の動体視力を持ってすれば、龍雅の戦いがはっきりと見える。
「何という殲滅力…」
「これは、VRトレーニングの様子か?」
剛司は腕を組んだ状態で紗里弥に問う。
「まぁ、そうだ。我がグループの最新のVRトレーニングマシンのな…」
紗里弥は、剛司と対照的に手を組んで剛司の質問に答える。
『終わりにしてやるよ。』
映像内の龍雅は、全ての敵を分解した所で、映像が途切れた。
「あれは、一体何なんだ? あの敵が全て消え去る技は…」
「あの技は解体…この映像の時は、原子レベルでしかないが…今は物を素粒子レベルまでに分解できる能力になっておる…だが、とうの本人は、この能力は戦闘用ではなく工業用と答えておるのだ」
「工業用…という事は、龍雅は破壊する能力に対為す能力を持っているという事だな?」
「あぁ、対為す能力組立…素粒子を集合させて物を造る能力だ。」
「なるほど…」
「まぁ、私が調べた限りの資料は、配っておく…」
紗里弥がそう言って資料の束を投げると、紗里弥は念動力で資料を動かし全員の元に資料が行き渡った。
「この資料が、龍雅の能力について記された資料か…」
この場にいる全員は、龍雅について記された資料を読み、
「私の方で纏めておいた…しかし、奴はトレーニングを怠らない努力家…もしかするとこの資料は過去のデータかもしれない…」
「過去のデータという事は、龍雅はまた進化している可能性があるという事か?」
――その通りだ。俺は、色んなフォームと新たな能力を得た。故に、その資料は、ただの過去のデータに過ぎない。今日の俺よりも明日の俺の方が強い…昨日の俺は今日の俺と比べて弱い…俺は、留まる事を許さない…
「左様…あいつの成長スピードは異常だ。私が着いて行くだけでも精一杯なのだ。」
「じゃあ、会長さんよぉ…そんな奴が暴れちまったらどうすんだ?」
誠一は、そう言って紗里弥に問いかける。
「暴れた際は、あいつを一回だけ殺せばいい…奴は、あるプライドを持っている。」
「へぇ…そのプライドって何だ?」
「あいつは、ゲームや戦いでもノーコン主義者らしい…だから一回死ぬって事は一回コンテニューしてしまうのと同じであるが故に、一回死んで生き返ったら潔く諦めるだろうよ。」
「そうなのか?」
「あぁ、ここにいるゲーマーなら解るはずだ…ノーコンでクリアしたいというプライドがな…」
「なるほど、誇りか…」
「さて、龍雅の話は、ここでお終いだ。では、次の題材に移る…今年も開催される体育大会の件だが、今年は東京都全域の高校一年の生徒人数が少ない…それに東京都にある能力者だけが集う能力科高校の今年度の入学者数は、昨年よりも少ない。それに比べ、他の地方の入学者数は、平均並みで東京は不利な状況にあり、今年の体育大会の個人参加希望者がこれもまた少ないと来た…そこで、東京都代表選手の候補について話し合いたい…」
紗里弥は、手を組み直し、そう言った。
「まぁ、その前にいいか?」
「何だ? 誠一よ。」
「どうやら、大きさ鼠一匹…この会議場に紛れ込んでいるらしいぜ? 俺にはわかってんだ。姿を見せやがれ…」
――バレたか…仕方あるまい…
「ノーマルフォーム…」
龍雅は、変身を解除して姿を現し、紗里弥、翔妃、乃愛以外の会議室にいる全員が龍雅に敵意を向け戦闘態勢に入った。
「おっと、ハハハ…参ったね…こうも敵意を向けられては…俺の心がワクワクするではないか…一騎当千フォーム!」
龍雅は、そう言うと、龍雅の体から激しい緑色のオーラと圧倒的な気迫を放ち、構えていた能力者全員は、一騎当千フォームになった龍雅を警戒したのか、紗里弥を守るように少し後ろに下がった。
――このフォームは、エネルギーの消耗が激しくすぐにカロリー切れになっちまう短期決戦の形態だが…この状況では仕方ないだろうな…
「さぁ、来い…俺が全員纏めて相手をしてやる。慢心は無しだ…」
龍雅は、殺気を放ち、大量の剣や槍を造って浮かせ、戦闘態勢に入った




