第壱拾肆話《体に重りを付けてトレーニングすると、重りを外した時の体の軽さが俺は好きだ。》
「ほう…面白そうではないか…感覚も同じか、ならば、ストレス発散の時はこれが役に立つな。」
龍雅は、そう言ってリングを持って頭にはめる。そのリングのロゴには、ローマ字で極星院と書かれている。
「それだけではないぞ? このトレーニングマシンは、お前だけならば、肉体に影響があるらしい勿論良い方にな…」
「どんな効果だ?」
「お前をここに招待する数日前に、お前に何かやる物を考えていたらMs.Yと名乗るガスマスクを着けた謎の少女が私の目の前に現れ、龍雅がこの通称オールエクスペリエンスを使ってトレーニングすると肉体に更なる力を得ると言い残してその少女は、跡形も無く消え去った。信憑性はないが、もし嘘だったとしてもイメージトレーニングには役に立つだろう。」
「ガスマスクの少女…その少女は、金髪だったか?」
「あぁ、金髪で身長は156cm程度だ。」
「なら、信じても良さそうだ。」
「嘘かもしれないぞ?」
「かもな…だが、俺はその少女の事は何となくだが信用できる。あいつは、前に会い、虎太郎のコピー能力が俺の能力や一部の能力をコピーできない事を教えてくれたし、あいつ俺を慕っているようにも見えるから、恐らくだが、そのオールエクスペリエンスの事は嘘ではないかもしれない。」
「なるほど…まぁ、物は試しよな。」
紗里弥は、そう言って龍雅からリングに、USBコードを刺し、その後、龍雅の前にあるパソコンに、USBコードのメモリを刺し、紗里弥は、パソコンの電源を入れてパソコンを起動した。
――それにしても、Ms.YSか…Ms.YS…瞬間移動とは空間系能力…そして俺と虎太郎の能力の詳細を知り、的確に助言する知識…恐らくはイニシャルであろうアルファベットのYとS…あの少女は、全知時空の邪神ヨグ=ソトースか? だとすれば、時間も操れるのでは…いや、ヨグ=ソトースは男性だった筈…女である筈もないし異形でもない…それに、神なぞこの世にいる筈もない…だとすれば、ヨグ=ソトースの名を冠した少女という訳か…まぁ、いいやあいつの事はMs.YSと呼ぶとしようか…
「龍雅、どうする? オールエクスペリエンスに私の作ったMODやチートを入れる事も可能だが、試してみるか?」
「例えば、どんなのがある?」
「まぁ、見てくれ」
紗里弥は、そう言ってパソコンにパスワードを入力し、トレーニングマシンのファイルを開き、チートコードとMODのファイルが開かれる。
「痛覚遮断チート…無敵チート…敵を倒す度にスコア+99999…即死チート…全ステージ解放…他にも色々か…」
「どうする? どれを選ぶ? 無敵チートと即死チートとスコア+99999ならば、楽に強くなれるが…どうやら、あの少女は、バトルトレーニングステージのスコアに応じてお前は強くなると言っていた。」
「なぁ、この重力MODってなんだ?」
龍雅は、ある一つのMODファイル重力MODに興味を示して指を指した。
「これは、体にかかる重力の倍数に応じて評価倍率が変動するMODだ。例えば自分にかかる重力が地球の十分の一だと、スコア倍率も十分の一になり、逆に自分にかかる重力が地球の十倍だと、スコア倍率も十倍になるというバトルトレーニング専用のMODだ。」
「なるほど、では、この非現実MODは?」
「これは、私達極星院グループが作ったゲームや私が選り好みしたお前が好きそうな敵キャラクターと装備とステージが全て収められているMODだ。隠しボスやラスボスも入っているぞ。まぁ、使えるのは、バトルトレーニングの中にあるフリーバトルトレーニングモードにしか使えないがな。」
「なるほど、では、重力MODと非現実MODと全ステージ解放チートだけを付けてくれ、それ以外はいい……っていうか…トレーニングマシンというよりこれってゲームじゃないか?」
「確かに、チートやMODがある時点でゲームのようなもの…しかし、一般的なフルダイブVRゲームには、痛覚が備わっていないし、現実世界の自分を電脳世界に持っていく事は出来なくて非現実的な敵と戦う…しかしこれには、痛覚が備わっているし、現実世界の自分を電脳世界に持っていけるが、非現実な敵とは戦えず現実世界の再現データで再現した敵のみを打倒す…この違いで、ゲームかトレーニングかが決まる。」
「なるほど、だが、痛覚遮断チートと非現実MODを入れれば、ただのゲームになってしまうな。」
「まぁ、そうなるよな…お前、プログラミングとか得意だろ? 去年の文化祭見たぞ。お前が、銀河丘高校の為に作ったゲームを…アレ中々面白かったぞ。お前の実力を我がグループに欲しいくらいだ。」
そう、去年の文化祭、龍雅は銀河丘高校のパソコン室で自作のRPGゲームを提出したのだ。
『これ面白いぞ。誰が作ったんだ?』
『もう交代かよ! もっとやりたかったのに』
『よく作り込まれているな~』
龍雅は、去年の事を思い出していた。多くの人が自分のゲームで遊んでくれた文化祭の日の事を…
「確か、お前は今年とは違って目立っていなかったよな。あれって、あの時のゲームが原因か?」
「あぁ、あのゲームは入学する前から作っていたもので、ゲームをいち早く文化祭に間に合わせる為に、人との関わり合いを極力抑えていたんだ。まぁ、今は暇な時にそのゲームに追加要素を入れたり、バグを治したりしてるけどな。」
「そうか…なら、この機器にMODやチート程度入れるくらい簡単な筈だ。私の前でやって見ろ。」
「わかった。それにしても、何故オールエクスペリエンスっていう名前なんだ?」
「それは、この世の万の事を電脳世界で練習できるというコンセプトで作ったからだ。それよりも早く打て」
紗里弥がそう言うと、龍雅は早速、トレーニングマシンの内部データにMODとチートコードを入れ始め、あっという間にマシンに入り、龍雅は早く電脳世界で戦いたいとワクワクしている。
「…早いな…」
「ハハッ! この程度なら朝飯前か寝る前に出来るぜ。早く始めてくれ」
「では、起動する。」
紗里弥は、そう言い、紗里弥は電源スイッチを押し、リングが光り始め、龍雅の体を光のベールが包んだ。
「ん? これは、何だ?」
「これは、お前のデータを読み取っているんだ。それが、お前の力を電脳世界に送る為に必要だ。一回一回起動する度に、データを読み取らなきゃいけないのが難点か…」
「では、電脳世界に行っている間に俺の戦闘力がアップした場合は、現実世界に戻ってからでないと適応されないのか?」
「いいや、電脳世界で戦闘が終われば、自動的にマシンがお前の体のデータを解析するように私がこのマシンが改造した。データの解析時間は最高で30秒、最低で3分…普通の奴ならば、ローディングは最低限必要ないが…お前の強さの為だと思えよ。全く大変だったんだぞ…お前の改造マシンの為に、最高性能のスパコン何台か買ってそれに極星院の衛星を経由してスパコンに接続したんだ。大切に使ってくれよな。」
「わかった…ありがとよ。あっ、眠くなってきた…そろそろか…」
「では、電脳世界で戦って来い!!」
龍雅の意識は現実世界から遠ざかっていき、完全に現実世界から意識が遠ざかった。
『上手くいきましたね』
紗里弥の後ろに、仮面の少女がいきなり現れ、紗里弥に話しかけた。
「あぁ、だがこれで本当に龍雅は強くなれるのか? Ms.YS…お前の指示通りにこの機械で龍雅の心を電脳世界に送ったが…」
『えぇ、貴方が龍雅さん専用のオールエクスペリエンスを使用すれば、能力と上手くリンクして戦闘のトレーニングで得たスコアは、経験値となり、それが龍雅さんの血と肉となり、その力は更に強靭なものとなります。龍雅さんが、力を得れば、私達そして龍雅さんにとってもプラスとなる。』
「そうか、じゃあスパコンを用意した分何かあってもいいだろう?」
『では、これを…』
仮面の少女がそう言って指を鳴らすと、紗里弥の目の前に、アタッシュケースが現れ、紗里弥がアタッシュケースを開くと、そのアタッシュケースの中には、AntiMaterial書かれたカプセルと反物質の取扱説明書が入っていた。
「反物質か…なるほど、私がやった事はそれほど価値のある行動という訳だな。」
『そうです。反物質は、1g当たり、最低でも600億円以上はする代物…しかし私にとってはいつでも反物質を反世界から取り出せるのでその価値はわかりませんがね。』
「そうだったな。お前は、異世界と繋がる力を持つ者…反物質世界の物を取り寄せるくらい容易い事だな。」
『えぇ、では私はこの辺りで…時が来るまで龍雅さんの事…よろしく頼みますよ。』
「あぁ、任せろ」
仮面の少女は、一礼をして空間を捻じ曲げ、空間に穴を出現させ、仮面の少女は、穴に入り、仮面の少女は、その場から消え去った。
「う…う~ん…」
龍雅が目を覚ますと、そこは、カプセルベットの中だった。目を凝らすと、カプセルベットの表面には、無数の0と1が並んでおり、その0と1がここが電脳世界である事を証明している。
「ここがトレーニングマシンの電脳世界か…」
龍雅は、そう言って呟くと龍雅の目の前に、現実世界を映した映像が映し出され、その映像には紗里弥が映っている。
『目覚めたか…こうして現実世界から電脳世界のお前を見ると、お前はやはり女性向けの3DCGゲームのキャラみたいだな。今からMODの使用方法について説明する。まずは、お前の右手に嵌めてある指輪の宝石の部分を押してくれ』
龍雅は、紗里弥の言う通りに、右手を見て右手にいつの間にか虹色の指輪が嵌められている事を確認し、龍雅は虹色の宝石を押すと、龍雅の目の前にフリーモード、ミッションモード、設定、チェンジ、ヘルプと表示されたディスプレイとキーボードが現れた。そのディスプレイとキーボードは半透明でいて空中に浮いている。
『よし、押したな。では次に、エンターキーを押して一分以内に寿限無のフルネームを二回ローマ字で逆から打ってからエンターキーを押してくれ』
「わかった。」
龍雅は、エンターキーを押し、驚異的なタイピング速度でローマ字で寿限無のフルネームを逆から打ち、エンターキーを押すと、半透明なディスプレイの右斜め上の端に、MODデータの読み込みというコマンドが現れ、クリックすると目の前にローディングという文字が現れ、読み込みが完了すると、MOD適応完了という文字が現れ、龍雅はOKを押した。
『よし、後は、チェンジと押して戦闘を選んでくれればいい。では、後は任せる。私はお前の寝顔とお前が電脳世界で戦っている姿を眺めながらゆっくりと待つとしよう…あっ、一つ言っておくべきことがあった…』
「何だ?」
『私の能力は、炎と熱と爆発を操る能力と言っていたな。あれは、分子運動速度を操る能力をお前の為に言いやすくしただけだ。しかし、お前は理系の知識も良さそうだと判断したし、もう私の能力の詳細を簡単に訳さずとも良いと判断した。お前ならば、すぐに分子運動速度というのが判る筈だ。ではな…』
そう言って、現実世界との通信は切れた。
――分子運動速度か…ククッ…なるほど、俺がバカだと思って気を使ってくれたんだな。しかし、無用…俺はアニメ・漫画・ライトノベル・ゲームに出てきそうな言葉と雑学を俺が調べられる範囲でならある程度記憶している。先程の分子運動速度は、アニメとライトノベルに出てきそうな言葉…ホント能力者が多い時代…そしてオタク文化に恵まれた所に生まれて良かったと思うぜ。
龍雅は、電脳世界で寝ながらウンウンと頷く。
「さて、始めるとしようか…」
龍雅は、チェンジを選択し、エンターキーを押すと、デフォルトに歌が選択されており、その他に料理、戦闘、ダンス、プログラミングなどの様々な項目があり、その中で龍雅の目に留まった項目18禁と書かれた表記を見て、龍雅はニヤリと笑う。項目には、18禁以外はサムネイルがあり、それ一層龍雅を興奮させる。
――いや、待て…電脳世界と言えどもここで、やってしまえば紗里弥は激怒するだろう。それにこの俺の行動も見ている筈…危ない危ない…つい誘惑に負けるところだったぜ。
龍雅は、誘惑に負けず、戦闘を選択してエンターキーを押して、メニューに戻り、ミッションモードをクリックすると、様々な戦闘に関する出題がディスプレイに表示される。
――そうだな…やっぱりフリーモードでやるか…
龍雅は、戻り、龍雅は、ヘルプで戦闘モードの説明を全て一通り読んだ後、フリーモードをクリックすると、新規作成、読み取り、編集、開始のコマンドがディスプレイに表示され、龍雅は新規作成をクリックすると、ステージを選択してくださいと中心街、街(高速道路)、砂漠、洞窟、孤島、工場地帯、雪山、火山、荒野、軍事基地、森、ゴーストタウン、宇宙戦艦、魔王城、月面コロニー、神殿、館のステージが表示される。
龍雅は、ステージを街と選ぶと、ディスプレイに2010年代の東京の街が映し出され、龍雅は、エネミーデータを選択し、極星院グループが作ったゲームに出てくる3m級の雑魚キャラを65535体配置した後、それぞれに属性を持つ四体の巨大なロボを配置し、設定画面で自分にかかる重力を二倍に設定し、クリア条件を四体のボスの撃破に設定し、スコアボーナスを30分以内の勝利、ノーダメージ、ノーデス、敵全滅と入力し、保存する。
「さて、やってみるか…」
龍雅は、保存できた事を確認し、戻るボタンを押し、読み込みをクリックして先程作ったステージを読み込んで、開始を押すと龍雅の視界が真っ白になった。これが、龍雅が電脳世界に来た過程である。
「ハハハハハ…愉快愉快…」
――フフフ…この重さ…いいぞ…この重さが俺を更なる高みへと運んでくれる…しかし、普段から自分と同じ重さの重りをつけてトレーニングしているからどうという事は無いけどな…
龍雅が、笑っていると氷の巨大ロボットが龍雅に襲いかかる。
「さぁ、殲滅の開始だァ!!」




