第九十三話
気づくと僕の体は壁に激突し手足の骨が砕けていた。
「いてて…再生能力あってもいてぇな」
治った手足をパキパキ言わせながら立ち上がる僕。そしてアヌビスの方を見るとだいぶ距離があった。
「200mは飛ばされたか。さて、どつしようかね。」
そう言いながら走って間合いを詰めようとした時またしても僕の体は壁にめり込んでいた。
「おいおい、冗談だろ。あの間合いを一瞬で詰めたのかよ。」
意識を失いそうになりながらもなんとか持ちこたえる。しかし流石に衝撃が強かったのか吐血してしまう。
数分後、僕は意識を保つので必死だった。攻撃する余裕などなかった。
そして立つことすら難しくなった瞬間僕の体は真っ二つに切り裂かれた。
「あ、これは死んだな。」
そう思いながら意識がだんだん遠退いてゆく。
目を開けるとそこは自分の精神世界だった。そこに立っている一人の男。
「ついにこの段階まで来たか。」
そう言って男は僕の額に手を当てる。その時頭の中に彼の記憶が入ってくる。
「俺は神楽紅蓮。神楽家初代頭首だ。わかっていると思うがお前は俺の生まれ変わり、だから今俺の記憶を引き継いだ。俺の持っていた神格の力は元々使いこなせていた。だから次はお前自身に眠る神の力をつかってみろ。」
彼がそう言った瞬間精神世界は終了した。
次に僕が目を開けると切れたはずの体が元に戻っていた。そして僕の周りを無数の黒い御札が回っていた。
そして僕の目の前には希莉、涼音、紫紅がいた。更に僕の後ろには暦、姫奈、そして姫奈の父親がいた。
その時僕の頭の中に声が聞こえた。
「今こそ本当の力を開放する時だ。」




