第5話 決別
俺がお調子者仲間と綾音に、本心を吐露したタイミングで、ガラガラガラと音を立て、教室の扉が開く。
担任の山田先生と、背後から、綾音の親友の西川風夏が、ぜぇぜぇと息を切らしながら、教室に姿を見せた。
「ふぅ。ギリギリセーフ……って何かあった?みんな怖い顔して」
異様な雰囲気を感じ取ったのだろう、風夏が問いかける。
「とりあえず席につけ。HR始めるぞ」
山田先生は特に気にした様子もなく、クラス全体に呼びかけ、着席を促した。
このクラスは名ばかりではあるが、特進クラスである為、いくらHRとはいえ遅れは許されない。他のクラスの生徒に示しがつかないからだ。
山田先生の指示に従い、俺は自分の席へ向かう。
「昼休みに続き聞かせろよ。長くなりそうだからよ」
授業の合間の休憩では、時間が足りないと判断したのだろう。皇輝がそんな事を口にする。いや……
中村。
「分かった」
着席する刹那、東條が俺に対して微かに笑みを浮かべた気がしたが、今こいつに構っていられるような、心理状態では到底無かった。
中村以外のグループメンバーは、俺の方を黙って、見つめるだけだった。
◇
四時間目の授業が終わり昼休み。
早速、中村が俺の方へ詰め寄ってくる。
「あれはどういう意味だよ」
「そのままの意味だ。あれ以上、説明のしようがない」
「あれは遊びみたいなもんだって。なあ?」
中村は俺以外のグループメンバーに投げかける。
それに佐々木健也が反応する。
「拓斗、お前がそんなに気にしてたとは知らなかった。悪かった」
案外素直だなこいつ、まあ許す事はないが。
「そういうのいいって、どうせ面倒な事になったとか思ってんだろ?」
俺は呆れたように、佐々木を突き放す。
「ねぇ、たっくん、いつものたっくんらしくないよ?一体どうしちゃったのさ」
「いつもの俺ってなんだよ北原」
「たっくん……」
「私は止めたから。私はっっ」
西川風夏が、嘘告の時と同じく……いやそれ以上に苦い表情で、必死に弁解をしてくるが、俺にはまったく響かない。
「止めたから許されると思っているのか?俺の気持ちは、北原の親友のお前が、一番よく分かっていたはずだぞ西川。結局、止められてもいないしなあ!」
「っっっ」
痛いとこ突いたか?
なんか楽しくなってきたな。
テンションがおかしくなっている事に、自分でも気づいてはいるが、一度本心を口にしてしまうと、ダムが決壊したように止まらない。
「いいね」
後ろの席の東條が、俺にだけ聞こえるような声音で呟く。
「とにかく、お前らとは決別だ。お前らも俺みたいな人間とは話したくもないだろ?」
冷たい声音で、クラス全体に宣言をするように言い放つ。
クラス全体が凍りつく。後ろの転校生を除いて
「そろそろあなた達も、ご飯食べた方がいいんじゃない?昼休み、あと少しで終わるよ」
この騒ぎの発端でもある東條聖奈が、俺達元グループに向けてそう告げると、北原綾音がすぐさま反応する。
「全部、あんたのせいでしょ!!!」
思わず両手で、耳を塞いでしまうような声量で、北原綾音は怒声を上げる。
「この問題を全部、私のせいにするようだから、こうなっているのでしょう?まだ分からない?」
「うるさいうるさい!あんたのせいで、あんたのっっっ」
「綾音、もうやめよう。拓斗の意思は多分変わらない」
佐々木が荒ぶる北原を静止する。
「なんなんだよこいつ、めんどくせえ。ただのガキじゃん」
中村にガキと言われる日がくるとは予想外だ。
「拓斗くん、またゆっくり、みんなと話そうよ。話したらきっと……」
「西川、さっき言ったろ?」
お前らとは決別だ。




