第2話 転校生
始業式の朝
アラームの音が部屋に響く、今日から高校二年生が始まる。
「おはよう、拓斗」
「ああ、母さんおはよう」
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう、琴葉」
「やばいよ……緊張してきた。今日から中学生だよ!!」
朝からソワソワしてると思ったら、そういう事か。
「まあ、気楽にな。俺みたいに最初、ミスらないように」
「お兄ちゃんの中学入学の頃は、めちゃくちゃ空回りしてたもんね〜」
ニヤニヤしながら、琴葉は手元にあるスープを口にする。
そして母さんがトイレに行ったタイミングでスープを置き口を開く。
「てかさあ、ずっと黙って見てたけど、あれから綾音ちゃんとはどうなったん?結局あのままなの?」
トイレにいる母さんに聞こえないように、琴葉はボソボソと話し始める。
「何も変わらないよ。今まで通り普通に接してる」
妹の琴葉には俺が綾音に嘘告された事を話した。
こいつは妹だが、友達みたいな関係性だから、別に隠す必要はないと判断したからだ。
「ふ〜ん」
「母さんには言ってないだろうな?」
「なに、信用ない?」
「いや、そんなことは無いが……」
「ただ、お母さんには何も言わないけどさ、次に綾音ちゃんが、お兄ちゃんの部屋で漫画読んでたりしたら文句言っちゃうかもね」
「やめろやめろ。俺の平穏が……」
「平穏平穏ってそんなんでいいの?自分の気持ちを押し殺してさ」
「……」
胸の内で思っている事を、他者に言葉に出して言われてしまうと遂、考え込んでしまう。
「まあなんとかなるだろ。時間が解決するさ、俺の気持ちの問題だから」
「妹としても、お兄ちゃんが幸せになるのを祈ってるよ」
「うるせ。お前は自分の心配だけしてろ」
「そうだった。やばーーい」
琴葉は慌てた様子で準備を始める。
俺もそろそろ準備しないとな。
◇
学校に行くまでの通学路
会いたくないが、避けられない人物が現れる。
「たっくん。おは〜」
俺に嘘告をしてきた、幼馴染……いや、ご近所さんだ。
「おはよう綾音」
「今日から二年生だね〜。なんかワクワクする」
「なんでだよ。何も変わらないだろ」
「たしかに。クラスも変わらないしね〜」
俺達が通う学校の特別進学クラス……略して、特進クラスだけはクラスが三年間変わる事がない。
「そういえば、こっちゃん、今年から中学生でしょ?早いなあ」
「ほんとだよなあ」
他愛も無い話をしながら学校へ向かう。
教室の扉を開ける前からザワザワと騒がしい。
「拓斗!今日やばいよやばいって」
「二年になったらやばいのか?」
お調子者仲間の皇輝が慌てた様子で駆けてくる。
「なんか、転校生が来るらしいんだよ。しかも女子!!!」
「まじか!?よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
ようわからんがこれくらいのテンションでいいか?
「男ってほんとに……」
綾音が呆れた様子でジト目を向けてくるが、気にせず話を続ける。
「それにしても、よく女子って分かったな?」
「なんか職員室に潜入してた奴が、居たっぽくてよぉ。それで知った」
なにそれ、こわっ。
「俺、狙おうかな?」
「健也やめとけ。最初から、がっついたら引かれるぞ〜」
お調子者仲間に注意喚起していると、ガラガラガラ……とドアが開き担任の山田先生が現れる。
ちなみに担任も三年間変わらない。
個人的な感想だが、当たりでもハズレでもない普通の先生だ。
「ほら、席つけ〜。入学式の前に転校生の紹介するから」
転校生というワードが聞こえてくるとまた一段と騒がしくなる。
「入っていいぞ」
山田先生の合図と共に教室に入ってくるのは誰が見ても分かる美少女だった。
黒髪ロングの清楚系お嬢様。そんな風貌だ。
「東條聖奈です。これから二年間、よろしくお願いします。」
「このクラスは三年間変わらないから、一年生の時に仲良しグループはある程度出来てしまっているとは思うが、仲良く……」
「いえ、無理に仲良くする必要はありません」
ざわざわとしていた教室が静まり返る。
「あ、えっと、らしいでーす」
山田。もっとなんかあるだろ!
とにかく難がありそうな転校生が来たもんだ。
可愛いけど、めちゃくちゃ可愛いけども。
「じゃあ、南の後ろが空席だからそこに座って」
「南?」
「あ〜、悪い悪い。窓側の1番後ろな」
そして俺の後ろかーい!
美少女転校生はトコトコと歩き、席に座る。
「よろしく」
「……」
あー無視ですか、そうですか。
「よし。じゃあ始業式について説明するぞ〜」
変わらぬ日常がまた始まると思ったが、どうやらそうではなさそうだ。
まあ、俺がこの転校生と関わる事は無いだろう。
無視されたしな!




