第1話 嘘告
「たっくん。私と付き合ってみない?」
俺、南拓斗は生まれて初めての告白をされた。
その相手は、家族ぐるみでも付き合いがある幼馴染の北原綾音。
「本当に俺でいいのか?」
「たっくんが良いの」
「ありがとう。俺もずっと綾音の事が好きだった。付き合おう!」
返事をした次の瞬間……
綾音は微かに笑みを浮かべながら
「たっくん!嘘告だよ〜、本気にしちゃった?ごめんごめーん」
軽い感じで謝る綾音。
そして綾音の背後から続々と、よく遊ぶクラスメイト達が現れた。
「拓斗〜わりいわりい。今流行りの嘘告ってやつなんよ」
悪びれもせずに綾音の言葉をリピートするこいつは佐々木健也。お調子者仲間だ。
「本気にしててマジ笑ったわ〜」
腹を抱え……とまではいかないが口を大きく開いて笑ってるこいつは中村皇輝。同じくお調子者仲間だ。
「私は止めたんだけどね……健也たちが……」
やや苦い表情をしているのは綾音の親友で、俺達と絡むようになった西川風夏。
「……なーんだ、そうか。あはは、残念残念〜」
なんとかして冷静さを取り戻そうとするが、チクチクするような痛みが胸に刺さる。とにかく早くこの場から消え去りたかった。
「たっくんとは友達だからいいんだよ〜昔も今も変わらないからね〜」
いつからかは分からないが、ずっと好きだった相手に、これを言われてしまうと絶望しかない。
「だよな〜」
ヘラヘラしながら綾音にそして自分に言い聞かせる。これでいい、そういうノリだ。
ここで俺が変な事を言って場をシラケさせる方がダメだ。
「あ、やべえ。今日、母さんに頼まれ事されてるんだった。もう行かないと……」
「もしかして綾音にフラれて落ちこんじゃったかぁ?」
皇輝が煽るように言う。
「そんなんじゃねえよ。んじゃな」
逃げるようにこの場から立ち去った。
◇
嘘告からしばらく経ったが変わらぬ日常が続いている。
お調子者仲間達と遊び、綾音や綾音の親友の風夏とも遊び、何も変わらない。
だけど、本当にこのままでいいのだろうか?
モヤモヤとした気持ちのままでみんなと関わっていていいのだろうか?
立ち位置がありキャラもある。
自分で言うのもなんだが、俺はクラスの中心的なグループのひとりだ。それを壊すのは躊躇われた。
時間が経てば解決するのだろうか?
自問自答しながら、日々を過ごし気がつけば、春休みも終わり高校二年生が始まろうとしている。
だが、この時の俺は知らなかった。この問題がすぐに解決する事を。クラス全体を巻き込み、俺に救いの手を差し伸べてくれる存在を……




