第19話 変貌
風夏の謝罪を受け入れた翌日の学校
東條といつものように話していると教室が、ざわつき始めたので東條とほぼ同時に入口の方へと俺は視線を向けた。
「おはよう、拓斗くん」
驚いた。
そこに居たのはまるで別人の西川風夏だった。
染められた髪は髪の色を戻して黒色になり、髪型も大人しめになって、メイクもうっすらと落ち着いた雰囲気だ。
「お、おはよう。随分と…… その…… 変わったな」
「今まで結構無理してたから反動出ちゃったかも。どうかな?」
少し恥ずかしそうに笑いながら、風夏は聞いてくる。
「女子ってすげえとしか」
「そこは、可愛い似合ってるだよ南くん。にしても西川さん本当似合ってるよ。前は少し怖い印象だったからさ。いいじゃん」
俺の気持ちを見事に代弁してくれた。
さすが東條だ、お見事。
「東條さん、ありがとう。昨日、拓斗くんにあとで聞いたんだけど、東條さんも背中押してくれたんだよね?ありがと」
「私は大した事してないよ。西川さんが南くんとしっかり向き合ったからこその結果だから」
どこまでも謙虚なやつだ。
東條に背中を押されていなかったら俺は逃げていたかもしれないのにな。
教室内の反応は様々だ。仲直りしたの?と聞いてくる女子生徒だったり、マジかよ南、正気か?と言ってくる男子生徒だったりと反応は様々だった。
その度に俺はその過程を説明した。
第一に風夏はずっとあいつらを止めていた事を強く伝え、昨日改めて俺に謝罪をし、俺がそれを受け入れた事をクラスの連中には説明した。
その後、女子たちは風夏の席の周りに集まっていた。ごめんねと謝っていたり、これからも仲良くしてねと言ったり、なんかさらに可愛くなったねと褒めたり、こちらも反応は様々だった。
「西川さんフィーバーだね」
呆気にとられた様子の東條が、こちらを見ながら言う。
「周りからしたら怖かった印象の元一軍女子が何もかも変わったんだから、そりゃそうなるだろ。あの件についても責められなくなったんだからな、当然だ」
「…… ライバル出現かぁ」
「何か言ったか」
「なんでもない。今の西川さんなら私も友達になれそう」
そう言って、東條が嬉しそうにクラスメイトに囲まれる風夏を眺める。
風夏は俺たちの方に視線を向け微笑んだ。
(よかったな、風夏)
風夏とその周りの変化に俺は心から喜んだ。
◇
【中村皇輝視点】
(なんだよ、なんなんだよ。あれが風夏?しかもしかも、拓斗やあの女とも普通に喋ってるじゃねえかぁぁぁ)
教室に来たばかりで状況が分からない俺は、ひたすら困惑するしかなかった。
ただ、前のような大人っぽい印象の風夏は、消えて少女のような印象になっていて戸惑うしかなかった。
「風夏…… どうしたんだよ、なんで――」
「話しかけないでくれる」
風夏が冷たく俺にそう言うと周りの女子たちも、そうよそうよと同調する。なんか俺への当たりが風夏も周りの奴らも、さらに強くなってないか!?
(これも拓斗のせいなのか?拓斗の影響なのか?)
そんな事を考えていると、拓斗の方に向けて穏やかに笑う風夏の姿が俺の目に映った。
「っっっ」
ショックだった。
風夏が見てるのは俺じゃねえ、あの野郎だったんだ。許せねえマジで許せねえ!
「皇輝」
「……」
「おい、皇輝」
「誰だよ、うるせえな!」
「は?なにそんなキレてんだよ」
健也が話しかけてきていた。
だが、今そんなことはどうでもいい。
「…… キレてねえよ。なんで、あいつら普通に話してんだよ」
「さあな」
「私も何が何だか。どうして、たっくんは風夏だけ急に許したんだろう。それに風夏もめちゃくちゃ様子が変わったし……」
綾音も二人の話に加わる。
「なんでお前が知らねえんだよ。使えねえな」
俺は、綾音に怒りをぶつける。
「皇輝。なんだよ、その言い――」
「はぁ?知らないものは知らない!なに朝からキレてんの。もしかして、風夏の事――」
「黙れ!!」
教室中に俺の声が響き渡る。
その瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。
「なに?あいつら喧嘩?」
「ほんと、野蛮な人達。南くんたちとは大違い」
「アホの相手はしない方がいいな」
「あんなのに一瞬でも従ってた俺たち黒歴史過ぎん。あ、やべ、こっち見てるぞ」
非難や嘲笑が嫌というほどに俺たちに突き刺さる。
そのタイミングで特進クラス担任の山田が、教室に入ってくる。
「ほら、さっさと席に着け。HR始めるぞ」
担任の山田はいつも通りの無表情で生徒を席に座るように促した。
(こいつには血も涙もないのかよ。廊下から絶対聞こえてただろうが!!)
俺をひたすら無視する風夏、話を聞こうともしない担任、呑気な健也、調子に乗るクラスメイト、風夏の親友のくせに何も知らない綾音、この状況のきっかけになった転校生、そしてクソ野郎拓斗。
(拓斗拓斗拓斗、あの野郎クソ野郎クソガキ、俺の風夏を。風夏を。あいつさえギャーギャー騒がなければ、クソックソックソッ)
思い通りにならない現状に俺は、憤りを隠せなかった――




