第17話 苦悩【南琴葉視点】
西川風夏。
あの人の親友でたまに家に来た時は、一緒に遊んだ事もあったけど、お兄ちゃんの件があってからは一度も会っていなかった。
「あんな目立つ場所で騒がれたら大迷惑だから止めてよ」
「だって、私ほんとに――」
「とりあえず、私の部屋で話そう。お兄ちゃんにバレないよう、静かに入るように」
外で話して、もしまた騒がれでもしたら最悪だ。近所で、どんな噂をされるか分かったものじゃない。
もうこれはリスクを承知で家に連れて行って、話を聞くしかない。
(ごめんね、お兄ちゃん、お母さん。私の平穏を守らせてください)
私は心の中で謝りながら、風夏ちゃんを自分の部屋に連れていく事にした。
◇
(珍しい。お兄ちゃんまだ帰ってきてないんだ)
「お兄ちゃんまだ帰ってきてないけど、なるべく、静かに落ち着いて話して」
「うん」
「それで、さっきの止めたって言ってたのは、本当?」
私の部屋に入ってすぐに、風夏ちゃんに続きを話すように促す。風夏ちゃんは今にも泣きだしそうだ。
「嘘告を計画したのは佐々木健也。面白半分に煽りまくってたのは中村皇輝。実行したのは綾音。私は止めてたの最初からずっと。でも……」
風夏ちゃんは順序立てて、一から話し始めた。
多分、嘘は言ってないと思う。風夏ちゃんはそれくらい必死だった。
「それは…… うーん」
こんな事を思ったら、お兄ちゃんに悪いかもだけど正直な事をいうと、風夏ちゃんの場合は仕方ないのかなって思ってしまう。
(もちろん、止めきれなかったのは悪い事だけど…… でも、)
お兄ちゃんもあの日、聖奈さんに背中を押されて感情的になってた部分もあっただろうし、グループ全員を責めたくなる気持ちも分かる。
「…… やっぱり、風夏ちゃんはお兄ちゃんと仲直りしたいの?」
「それはそうだよ、だって拓斗くんは私のヒーローだもん」
「お兄ちゃんが、ヒーロー?」
「中学時代に私を助けてくれたの。でも、私は一度も彼を救えなかった…… それどころか今は距離を置かれて、それが耐えられなくて」
(ここまで話を聞くと察するものがある。もしかして風夏ちゃんって)
「…… 好きなの?お兄ちゃんの事」
「…… うん。だから謝らせて欲しいんだ。綾音たちとも関係を絶ったし、私なりに、けじめはつけた。だから拓斗くんと二人きりで謝らせて欲しい。お願いします」
風夏ちゃんは頭を床に擦りつけた。
この人の覚悟は並大抵のものでは無いと感じた。
(それくらい、お兄ちゃんを大事に思ってるんだ……)
「風夏ちゃん、分かったから顔を上げて」
風夏ちゃんがゆっくりと顔を上げた。
涙で目が赤くなっていた。
「お兄ちゃんに風夏ちゃんと話すように言うから、待ってて」
「ありがとう…… ありがとう琴葉ちゃん」
私はお兄ちゃんにメッセージを送った。
もちろん私はお兄ちゃんの味方だけど、ここまでされると動かざるを得なかった。
(私って優しすぎじゃない?優しいよね?)
お兄ちゃんの返信を待ってる間の空気は地獄だった。




