第16話 接触
「ねぇ、南くん。今更だけど私達って、連絡先交換してないよね」
「本当に今更だな……」
俺はスマホを素早く操作して、QRコードが表示されたスマホ画面を見せる。
「読み取ってくれ」
「ありがとう」
スマホをめちゃくちゃ近づける東條
もしや、これは……
「もしかして読み取り初心者?あ、友達がいないか――」
パンッと乾いた音が響く
肩パンされた……
意外と痛いな、お嬢様みたいな見た目のくせに。
「こういうのはグループから追加したり勝手に、追加されたりするものでしょ?ねぇ、私、間違ってる?間違ってるなら――」
「間違ってない、間違ってない。もうやめて。痛いから」
東條がそう言うんだから間違ってないんだろう。多分。それにしてもこいつ、怒ってる顔も可愛いな……
「まったくもう。南くんだって、私以外に友達いないくせに」
「はいはい、そうだね〜 ……」
「どうしたの、急に黙って」
「いや、最近あいつら喋ってないなって」
「あいつら?」
「北原と西川だよ。あいつら仲良かったのに」
いつも二人仲良く下らないお喋りをしていたが、最近は互いに目も合わせていない。
「何かあったのかな」
「気になるなら聞いてみれば?」
「あんな決別宣言しといて、今更話しかけられるかよ。それにどうでもいいよ、あいつらなんて」
「どうでもいいような相手の事、気にしないと思うけど」
「……」
「まあ、南くん次第だよ」
東條にはそう言われたが、決心がつかなかった。
俺との仲が悪くなるだけならまだしも、あいつらまで仲が悪くなる必要はないと思うし、何とかしたいところだが、今の俺にはどうする事も出来なかった。
◇
【南琴葉視点】
中学校は小学校とは全く違った。
環境も変わり、新たな人達との出会い。
楽しいけれど、精神的にも体力的にも、まだまだ環境に慣れていないので相当疲れていた。
「紗良ちゃん、今日の仮入どこにする?」
この子は小学校からの友達で、私の親友の紗良ちゃん。
中学ではクラスが別々になってしまったけどまだクラス内の友達も少ないので、放課後の仮入部期間は一緒に行動していた。
「今日はね〜、あ、ここはどう?茶道部」
「いいね。お菓子食べられるかな」
「やっぱ、それが楽しみだよね〜」
この中学校では仮入部期間が、四月末までと定められていた。
私は特にやりたい部活もなかったので、友達の紗良ちゃんと毎日違う部活を体験した。
仮入部期間なのでちょっとした動作だけを教わり、先輩方と軽く雑談をして、一時間程度で終了した。
「何だかんだ楽しかったね〜。お菓子も食べられたし先輩も優しかったし、茶道部にしようかなあ私」
紗良ちゃんが可愛らしく笑いながら話す。
「入ってからしんどそうじゃない?毎回、お菓子出すわけじゃないでしょ。さすがに」
「そっか〜、もうちょっと考えようかな」
「お菓子食べたいだけなのウケる」
帰り支度を整えて今日あった事を話しながら、校門前まで着いた時だった。
「…… 風夏ちゃん」
校門前に居たのは北原綾音の親友、西川風夏だった。
「琴葉ちゃん。どうして連絡したのに無視したの?話したい事があるのに」
「ええっと、じゃあまた明日ね。こっちゃん!」
意外と人見知りの紗良ちゃんは、慌てたようにその場から走り出した。
「話す事なんてないからだよ。風夏ちゃんも、お兄ちゃんを傷付けたんでしょ?」
『だから、私は止めたんだって!!』
驚くような声量で風夏ちゃんは突然叫んだ。
(え、え、なに?)
こんなに感情的な風夏ちゃんを初めて見た、私は、やや引き気味になってしまう。
「どうした、何かあったか」
校門前に立っていた先生が何事かと慌てて、私達に話を聞きに来る。
「いえ、なんでもありません。風夏ちゃん、ちょっとこっち来て!」
私は険しい顔をしながら、風夏ちゃんの右腕を強く握って走りだした。
あんな目立つ場所で風夏ちゃんに騒がれたら、私の中学生活が初めから終わってしまう。それだけは避けたかった。
(もう!お兄ちゃんの次は私の平穏が〜〜)
自分達の運命を呪うしかなかった。




