↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/24

第14話 後悔【北原綾音視点】

 学校までの通学路。

 いつも当たり前のように、私の隣に居た彼の姿はもう無い。


 たった一回の過ちで、私のほとんどを失ってしまった。


 周りのノリ、遊び、好意の有無、そんなものは言い訳にならない事は、こっちゃんやお母さんに言われてよく理解した。


 後悔している。

 ただ……


 ただ一つ理解出来なかった事があるとするならば、それは……


 風夏。

 そう、私の親友だったはずの風夏だ。


 たっくんがグループから抜けて寂しいのは分かるが、それでも何故、私は彼女に突き放されたのか。


(仲良かったのになあ。それとも仲が良いと、思ってたのは私だけだったのかな?)


 私が、たっくんとの仲直りは難しい事を話すと、風夏の様子がいきなり変わり始めた。


「…… 私、グループ抜けるから。嘘告なんて酷い事する人達と関わりたくないし」


 急に? 何故?


「私は止めたもん!拓斗くんが傷つくのは見ていられなかった。でも皆が」


 傷つくのが見ていられなかった……

 その理由は?友達だから?いや、違う。


 思い返してみると、それほど考えなくても答えはすぐに出た。


 今更の気付きかもしれないけど……


(風夏はずっと前から、たっくんの事、好きだったんだ。たっくんと一緒にいる為に私は――)


 その先を考えたくもなかった。


 ◇


 教室に入ると、最近になって変化が訪れた。


 あの件が教室で起こる前までは、くだらない話をしたりしていた、私の席の近くにいるクラスメイト達の様子が変わり始めた。


 私が登校してくる度に会話を止める。そして話題を変更したのか、会話を再び始める。


 ここまでされると、薄々勘づいてしまう。

 私の事を話しているんだ……って。


 表向きには言えない私の悪口を仲間内で共有しているんだ。


 傷付いてはいけないはずの私だけど、心が凍るように冷たくなる。


「綾音ちゃん、おはよう〜」


「おはよう、カナちゃん」


 怖かった。


 この言葉の裏には、どんな事を思っているんだろう?と考えてしまう。


 そんな時だった。


 あの女とたっくんが仲良さげに、話をしているのが目に映る。


「南くん。この漫画、面白かった。早く続きが読みたくて、月曜日を楽しみにしてたよ」


(あ!あの漫画、私が好きな漫画だ)


「それは良かった。お嬢様の好みに合ったようでなにより」


「お嬢様って…… どこから出てきたのそれ」


「雰囲気」


「偏見が過ぎるよ。恥ずかしいからやめて」


(そうか…… もう私の居場所なんてどこにもないんだ)


 早く、学校終わらないかな。

 そんな事を考えていると。


「綾音。大丈夫か」


 健也が私に話しかけてきた。


「大丈夫…… では、ないかな」


「今日の放課後、少し話さないか。色々と状況を聞きたい」


「うん…… 皇輝は?」


「誘わないでおいた。あいつがいると話が進まないからな」


「そう」


 一人で抱え込むには限界があった。

 健也に話を聞いてもらおう。


「綾音、もう俺達のせいでって言わないんだな」


「さすがに気付いた。私がやった事だから私が悪い」


「……」


 健也は黙ったまま、何かを考えている様子だった。


 ◇


 放課後


 皇輝に悟られないよう、私達はファミレスに現地集合の約束をした。


 席に着きドリンクバーをタッチパネルで素早く注文し、席にドリンクを持ってくる。


「早速だが聞かせてくれ。何故、風夏までグループを抜けたんだ。やっぱり、あの事が原因か?」


「……うん」


(多分、あの事だけではないけどね)


「そうか…… 俺達が提案したちょっとした遊びでこんな事になるとはな」


「ほんとだよ。おかげで私は…… 」


「綾音、すまなかった」


「え、」


 驚いた。健也が初めて、私に謝罪の言葉を口にした。驚く私に対し、健也は話を続ける。


「俺は、お前のそんな顔が見たかったわけじゃない。俺は――」


 健也が私の目をじっと見つめる。


「お前の事が好きだ。だから、そんな顔をしないでくれ」


「え、えっと…… 」


 突然の告白に私は言葉を失ってしまう。


「言葉が足りなかったな。拓斗が綾音を好きな事は、何となくだが分かっていた。だから少しでも拓斗が綾音の事を嫌いになればいいと思ったんだ。俺は綾音が好きだから」


 健也が何を言っているのか、理解出来ているようで理解出来なかった。


「は、はぁ。え、そんな事のために?じゃあ、こうなる事が分かっていて健也は狙ってやったって事?」


「違う!ここまで大事になるとは本当に思ってなかった!」


 店内に健也の声が響く、健也は申し訳なさそうに周囲に軽く頭を下げた。


「…… 私が健也に怒る権利なんて無いのは分かっているけど、最低だね私達。人の好意を蔑ろにして」


「そうだな。拓斗には、本当に申し訳ない事をした。後悔してる」


 私達は分かっていた。後悔しても、もう遅いと。ただ、言葉に出さずにはいられなかった。


 それくらい今の状況は未熟な私達にとって、受け入れがたく重い現実だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。