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コックリさんが通る  作者: 神泉灯


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7/18

海辺の恐怖 下

 一連の様子は他の目撃者によって警察に通報され、海上保安庁にも連絡され、すぐに捜索されたが、しかし男は遺体で発見された。

 そして海上保安庁の支部責任者、深山に九字姉妹は詰問を受けることになる。

「どういうことなんだ?

 なぜ彼が次の犠牲者になると分かった?」

 優璃が説明する。

「法則性です。

 初めは、女子高校生が、次に息子が。

 なら、次は彼になるのではないかと」

「これは殺人事件だというのか?

 だが、どうやって そんなことが出来た?

 警察も我々も捜査したが、一切そんな痕跡は発見できなかった。

 もし殺人事件だとしても、容疑者に上がるのは君たちだ。

 君たちは身元も不確かだし、いかにも怪しいからな。

 だが、それはあり得ないのは理解できる。

 あの時、他にも目撃者がいたが、彼は自分から海に出たし、それに君たちは危険を知らせていた。

 しかし、怪しいことには変わりはない。

 君たちは一体 何者なんだ?」



 その時、深山の娘と孫がやってきた。

「父さん、ちょっと良いかしら」

 深山は、

「今は取り込み中だ。

 後にしてくれ」

「でも一也が、なんだか様子がおかしいの」

 その一也は一目散に蜜華の腕を掴んだ。

 蜜華は戸惑うが、しかし落ち着いて一也に話を訊く。

「落ち着いて、どうしたの?」

 一也は一枚の絵を渡す。

 それは灯台の近くにある家の絵だった。

 そして一台の赤い自転車。

「これを私に?」

 一也は何度も頷く。

 この子は何かを必死に伝えようとしているのだと、蜜華は理解する。

「この家に手がかりがあるのね?」

 一也はさらに頷く。



 深山は一度 深呼吸して落ち着く。

「今日はここまでにしよう。

 だが、町から出ないでくれ。

 君たちは一連の事件の参考人だ」

 優璃が答える。

「分かりました」



 車のところまで戻った九字姉妹は、一也が渡した絵を見ながら考える。

 蜜華は推理する。

「あの子は父親が亡くなるとき、その様子を見ていた。

 その時、悪霊と接触したんだわ。

 そのせいで霊感が鋭くなった」

「じゃあ、深山一家も狙われているってことね」

「そうよ。

 このままだと、あの子たちまで犠牲になる。

 手がかりは、この絵。

 この家を突き止めれば、手がかりが掴める」



 ネットのマップで灯台付近の家を検索し、その場所を突き止めた。

 そして その家で起きた事件を知る。

「優璃、この家で起きたことが分かったわ。

 三十七年前、海で子供が亡くなっている。

 遺体は死後一週間も経過してから発見され、損傷が激しかったみたい。

 母親は独身で、他に子供はいない。

 警察や海上保安庁が捜査したけど、不審な点はなく、ただの事故として処理された。

 ただ、この母親は殺されたに違いないって主張している。

 子供が乗っていた自転車が見つからなかったそうよ。

 自転車で中学校に通っていて、いつも まっすぐ自転車で家に帰ってきていた。

 でも、その日は帰ることはなく、遺体で発見。

 自転車も行方不明。

 自転車の特徴は、一也くんの描いた絵の自転車と同じ、赤色ね」

「じゃあ、悪霊の正体はその時に死んだ子供」

「事件の真相が見えてきた。

 この死亡した子は事故で死んだんじゃない。

 殺されたのよ。

 犯人は深山さんと例の父親。

 虐めか なにかがエスカレートして殺してしまった。

 それを黙っていて、証拠隠滅のために自転車を隠したのよ。

 そして悪霊は三十七年間 待ってから、復讐を始めた。

 子供や家族を失う苦しみを与えてから、最後は自分を殺した者を殺す」

「じゃあ、あの責任者の深山も」

「加奈子さんと一也くんも危ない」



 二人は急いで車を走らせた。



 深山宅にて、加奈子は気分転換に、軽く入浴しようと、湯船にお湯を張り始めた。

 すると、一也が母親の袖を引っ張った。

「どうしたの?」

 一也は母親の袖を引っ張って、入浴するのを阻止しようとする。

「えっと、ちょっとお風呂に入るだけよ。

 ね、リビングで遊んでいなさい」

 お湯は湯船にどんどん溜まっていく。

 一也は執拗に母親の袖を引っ張り、泣きそうな顔で首を振っている。

「いったいどうしたの?

 ただのお風呂よ。

 なにを怯えているの?」

 一也は しかし沈黙のまま。

 そうしている内に、湯船からお湯が溢れ始め、加奈子はお湯を止めようと、蛇口に手を伸ばした。

 その時、



 一緒に遊ぼうよ……



「え?」

 加奈子は一也ではない子供の声を聞いた。

 その瞬間、湯船から子供の手が現れ、加奈子を頭からお湯へ引きずり込んだ。

「ガボゴボゴボ!」

 一也が母親を助けようと、必死に引っ張るが、しかし非力な子供では助けることが出来ない。

「ゴボゴボゴボ!」

 そこに、ピンポーンと玄関のチャイムがなった。

 一也は玄関へ走り、解錠すると玄関を開ける。

 九字姉妹だった。

 一也はその姿を見ると、必死に訴える。

 その ただ事ではない様子に蜜華は訊く。

「どうしたの!?」

 一也が腕を引っ張ると、九字姉妹は土足のまま家に入り、そして浴槽へ。

 そして加奈子が溺れているのを見ると、二人がかりで引き上げた。

「ゲホッ! ゲホッ!」

 息も絶え絶えだったが、なんとか無事だった。

「……嘘でしょ……

 こんなこと……」

 加奈子は恐怖で涙を流していた。



 加奈子を落ち着かせ、話を訊くことにする九字姉妹。

「……いったいどういうことなの?

 あれは一体 何?」

 優璃が静かに質問する。

「気持ちは分かりますが、なにがあったのか話していただけますか」

「……子供の声……子供の声が聞こえたの……そうしたら浴槽から子供が現れて、私を溺れさせようと……」

「その子供は、なんと言っていましたか?」

「……一緒に遊ぼうって……」

 次に蜜華が訊く。

「加奈子さん。

 お父さんの小学校や中学校のアルバムはありますか?」

「……あるわ」

「見せていただけますか」

「……ええ」

 加奈子は小学アルバムと、中学アルバムを持ってきた。

 九字姉妹はそのアルバムから集合写真のページを開く。

「いた。

 例の子供の写真。

 ネットの記事の写真と同じよ」

 溺れ死んだ子供の姿。

 その子供の顔は無表情で生気が感じられない。

「加奈子さん、お父さんの姿は写っていますか?」

「これがそうよ。

 小学校の卒業の時の……」

 海上保安庁支部の責任者、深山の子供時代の姿。

 全員 死亡した家族の父親の子供時代の姿らしきものも。

 蜜華が告げる。

「接点を見つけたわね」



 不意に一也が蜜華の腕を引っ張った。

「どうしたの?」

 一也に促されるまま、ついて行った蜜華と優璃、そして加奈子は庭に出た。

 一也が広い庭の隅の地面を指さす。

「ここに何かが埋まっているのね」

 加奈子からスコップを借りて地面を掘ってみる。

 すると、硬い何かに触れた。

 さらに掘ると、そこに現れたのは自転車のハンドル。

「ここに証拠を埋めていたのね」



 そこに深山が現れた。

「お前たちなにをしている!?」

 深山は自転車のハンドルを見ると青褪め、

「お前たち一体 何者だ?

 記者というのは嘘だな!

 本当の目的は何だ!?」

 優璃が話をする。

「いいですか、落ち着いて聞いてください。

 この事件は生きている人間の仕業ではありません。

 あなたが殺した子供の霊、悪霊の仕業です。

 あなたは小学校を卒業して すぐに、とある子供を虐めで殺害してしまった。

 その時の共犯者は、事件の犠牲者となった彼ですね。

 あなたたちは そのことを隠し続け、事件の真相は闇に葬られた。

 でも、生きている人間からは隠せても、殺された本人は分かっている。

 その子供が復讐を始めたんです

 それも、あなたたちを殺すだけでは飽き足らず、家族まで。

 家族を失う苦しみを与え、そして最後にあなたを殺すまで、復讐は終わらない」

「なにを馬鹿げたことを……」

「父さん!」

 加奈子が声を荒げる。

「本当なの?

 今の話は本当なの?

 お願い、答えて!」

 深山は苦渋の表情だったが、静かに頷いた。

「……どうしてそんなことを?」

「……遊びのつもりだった。

 俺たちは あいつをからかって いつも遊んでいた。

 あの日は、それを やり過ぎてしまったんだ。

 俺たちは子供で、まだ善悪の区別も、良識も、分別もついていなかった。

 あいつを海に沈めて遊んで、そうしていたら、あいつは そのまま浮かんでこなかった。

 怖くなった俺たちは誰にも言えずに……」

「なんてことをしたの……」

 優璃が二人を落ち着かせるように、静かに話す。

「私たちは あなたの罪を暴きに来たのではありません。

 悪霊の犠牲を止めに来たんです。

 方法はあります。

 遺灰を浄化することです。

 それだけで、悪霊は力を失い、無害化する」

「悪霊だと?

 そんな馬鹿げた話を信じろというのか?」



 一緒に遊ぼう……



 あ、子供が一也を呼んでいるね。

 一也は……あー、声に誘われて海に行ったよ。

 おーい、二人とも。

 海を見た方が良いぞ。



「一也くん?」

 蜜華は一也の姿がないことに気付き、周囲を見渡すと、海辺にいる一也の姿を発見した。

 一也は海の中に少しずつ入っていく。

「一也くん!」

 蜜華と優璃は走り始め、そして続いて深山親子が走った。

 しかし その瞬間、一也が海に引きずり込まれた。

 そして深山は確かに見た。

 もう一人の子供の姿。

 自分が虐めて殺した、あの子供の姿を。

「そんな……本当にあいつが……」

 蜜華と優璃は海に飛び込み、一也の姿を探す。

 しかし、一也の姿は見つからない。

 さらに加奈子が海に入ろうとするが、優璃が慌てて止める。

「あなたは駄目!

 海に入らないで!

 悪霊はあなたも狙っている!」

「でも!」

「私たちに任せて!」

 そして優璃は再び海中に潜った。

 しかし一也の姿は見つからず、優璃は息が切れて海面に上がる。

「一也くん!

 どこなの!?」



 少し離れた場所で深山が海へ入り始めた。

「やめてくれ……俺のせいなんだ。

 お前を殺したのは俺なんだ。

 孫に手を出さないでくれ。

 殺すなら俺にしてくれ。

 俺を殺せー!」

 次の瞬間、子どもが海中から現れ、深山を海中に引きずり込んだ。

「父さん!?」

 加奈子が悲痛な声を上げる。



 優璃が せめて一也だけでもと、海中に潜るが、やはり子供は見つからない。

 息の限界にきて、海面に上がるが、どこにも一也の姿はない。

「そんな……」

 優璃が絶望的な表情をすると、加奈子は悲痛な声を上げた。

「いやぁあああああ!」



 その瞬間、蜜華が海面に上昇した。

 一也を抱えて。

 そして砂浜まで引き上げると、呼吸を確かめる。

「ゴホッ、ゴホッ」

 一也はすぐに息を吹き返した。

「……よかった……」

 母は息子を抱き締めた。



 次の日、九字姉妹はその町から離れることにした。

 子供の遺灰は、昨日のうちに発見し、すでに浄化し終えた。

 これで もう あの親子が悪霊に狙われることはない。

 でも、犠牲者は戻ってこない。

 優璃は蜜華に告げる。

「私たちは精一杯やった。

 でも、全ての人を助けることが出来るわけじゃないわ」

「そうね……私たちの力が及ばないこともある」

 そしてホテルのロビーでチェックアウトを済ませていると、深山 加奈子と深山 一也がやってきた。

「もう行かれるのですね」

 優璃が答える。

「他にも解決しなくちゃいけない事件がありますから」

「これ、良かったら昼食にどうぞ。

 一也と一緒に作ったんです」

 ちょっとしたご馳走を渡してきた。

「ありがとうございます」

 そして一也は言葉を発した。

「お姉さん、助けてくれて ありがとう」

 蜜華は驚いたが、しかし次には笑顔になる。

「ええ。

 昼食、大切に食べるわ」

 一也は昼食を渡す際、なにやらモジモジしていたが、しかし意を決した表情になると、蜜華に思い切って告げた。

「キレイな お姉さん、僕が大きくなったら結婚してください」

 三人は ぽかんとした。

 しかし優璃が、姉に向かって少し意地の悪い笑みを浮かべる。

「姉さん、モテるわね」

 加奈子も微笑ましそうにする。

「まあ、この子ったら」

 蜜華は どうすればいいのか少し迷ったが、やがて笑顔で答えた。

「そうね、将来いい男になっていたら結婚してあげる」

「ほんとう?」

「ええ、いい男になっていたらね」

「わかった、ガンバってカッコよくなる」

「頑張ってね」



 こうして事件は解決した。

 だが二人の旅は まだまだ続く。

 次の話を楽しみにしてな。


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