第二十二話、金髪で短パンでタンクトップ
魔獣で学園に降りたつのは、
別に珍しい光景じゃない。
「ただいま! ココ!」
キマイラから降りると、
たまたまソコにココがいて。
「おかえり。あれ? その恰好……」
「お兄様に買ってもらった、どう?」
「うん、可愛い」
「一番実用性があって、
一番デザインが良いのにしてもらった」
「ラウルの服も新しいねぇ」
「アーク様が……僕のは良いって
言ったんだけど、買ってくれて」
すごく嬉しそうだ。
後ろで、
「キマイラ預けてくるから、
ちょっと待っててー」
と、アークが叫んでいる。
「そうだ、ココ、これ、おみやげ」
思い出して、ココの頭にかぶせる。
「え? 麦わら、帽子?」
「お兄様に買ってもらったの。
キマイラの世話を任せちゃったし。
バジリスクの時に無くしちゃったから」
おっきな、麦わら帽子。
「あ……あの」
ん?
「あ、ありがとう……」
なんで顔隠すの?
なんで顔赤いの?
ちょっと、貴重な!
貴重なココの照れてる顔!
「気にしなくて良かったのに、僕のまで」
「もう、すっごい酷い目にあったから、
お兄様にいっぱい買ってもらったの。
酷い……本当、酷い」
「よほど酷い目にあったんだねぇ」
「でもアスナ、いつもの4分の1くらいしか
掛かって無いって、
アーク様はビックリしてたよ」
「そうなの? 相っ当、高いの買ったよ」
どれだけ買ってたのアスナちゃん。
「ところで、君の後ろでしがみ付いて、
僕を睨んでる男の子は誰だい?」
ココが足元を指して。
「あぁ、うん。新しい、友達」
金髪、短パン、タンクトップの男の子。
「服は何とか覚えさせて、
擬態できるようになったんだけど。
靴はまだ難しいみたい」
「ふうん」
ココが笑顔でしゃがんで、
視線を合わせる。
「ウゥゥゥゥ……ガウ!」
「僕が嫌い? 君には見えるんだねぇ」
見える? 何が?
首を傾げた時、
遠くから聞きなれた声がした。
「おい! お前」
「あ、ジル」
「お前、それティアバラスだろ」
「良くわかるね、遠目から」
「毒、大丈夫か?」
「お兄様に対抗施術してもらったから、
今は少しは。一度倒れたけど」
「おいこら」
「早めに毒を出さないように教えなきゃ」
「まさか使役すんのか」
「うん、名前は『ニーナ』」
もう定着してしまった。
「冗談じゃねぇぞ。ティアバラスだぞ、
どんだけ難しいか知ってんのか」
「ガウ! ガウガウ!」
「おぉ、上等だ犬っころ」
ジルが、ニーナの頭をガッシと掴んで。
「俺にお前の毒は聞かねえよ。
ガキの頃から慣れてるからな」
「ゥゥゥゥ……ガルル」
「大体こんな可愛い顔の必要ねぇだろ。
なんか、どっかで見た顔だな……」
「俺の顔じゃ不満か? ジルディット君」
「いっ! な! あ、アーク……先輩!」
ジルが飛び上がる。
珍しい反応だ。
「やぁ。ブレーナムんとこの三男坊が、
ずいぶん立派になったね」
「はい。いや……」
「シルビア、元気?」
「姉貴は、変わらずやってます」
「俺の事なんか言ってた?」
「『次、会ったら、四肢をもいで、
消し炭にする』って」
「そう、じゃあ、まだ会えないねぇ」
はっはっはっ、とアークが笑う。
「ジル、お兄様と知り合いなの?」
こっそり、ジルに聞いてみた。
「姉貴と知り合いで……
昔、何度か、うちにきた」
「お姉さん? 消し炭って……」
「付き合って別れて、を繰り返してんだ」
な、なるほど。
いろいろ……あったんだろうなぁ
「ときにジルディット君」
「はい!?」
「妹によく突っかかる、
と報告が来ている」
「へ? あー、
そ……そんな時期も、ありました」
「『胸を触った』と、聞いた」
「い?!」
あー、そういやそんな事もあったけな。
一番最初、
私が『羽根を触らせて』
と、ジルに言った時に。
「お兄様、それは」
「アスナは黙ってなさい。
ちょっと、詳しく聞こうねー
向こうで」
「いや……あの」
アークがうむを言わさず
ジルを連れて行く。
「あー、ジルにもお土産あったのにー」
「ああいうジルあんま見ないよねぇ」
ココがニコニコ笑って言う。
麦わら帽子あげてから、
なんか、ごきげんだ。
「でも、お兄様。
なんであんなに詳しいんだろ」
ジルの事とか。
話してないのに。
「そりゃ、僕が定期的に報告してるから」
ラウルが当然のように言って。
「そうか……うん?」
「ん?」
「報告って? 何を?」
「え? そりゃアスナの学校生活の全部。
成績、試験、誰と仲良くて何を食べて、
トイレに何回行ったとか……」
「ちょ! え? ……な、なんで」
「なんでって、当然だろう。
僕がそのために居るからだよ」
「いや、トイレの回数はやめてください」
「ダメだよ」
ニコと笑って、ラウルが否定する。
ダメですか、そうですか。
「君の事はすべてアーク様に報告する。
それが僕の勤めだからね」
いまさらながら、
アスナちゃんが、
ラウルに冷たくなった理由が
少し分かったような気がした。
ココがソローと
「僕、席外すから、二人で話しあって……」
と、離れようとしてたので、
「行かないで!
説得を手伝って!
おかしいって言って!」
「えー、お家騒動に巻き込まないでー」
「せめて、トイレは止めて!
気軽に行けなくなる!」
「ガウ、ガウガウ」
懇願する私に、
ラウルがにっこり笑って言い放つ。
「ダ・メ・だ・よ」
結局、何言っても
聞いてくれなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『次回予告』
「心配してくれたんですか?」
「……そうね」
「私がいなくて寂しかったんですか」
「まぁ、そうね」
毎日更新!
今日も
お仕事お疲れ様!
モフモフー




