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35歳おっさんの同人即売会の楽しみ方  作者: 国米


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5/6

コスプレイヤー

(さて彼のサークルはどんな感じかな?確かこの辺のはずだが・・・)


何故か見つからない。

もう一度、周辺を見回ってみるが、彼の姿が見つからない。


(あれ?合ってるよな・・・。)


もう一度カタログで場所を確認すると、今までは絶対にありえない光景が見えた。


なんと彼のサークルブースに人だかりが出来ていたのだ。


(どういう事だ?)


人波に入っていくと、彼の姿・・・ではなくコスプレした女性の姿が見えた。

「西方(セイホウ)」の主人公の一人である「幽夢(ユウム)」のコスプレである。

彼女はキャラの巫女姿を完璧に表現していた。

艶やかな黒い髪に赤いリボン、白と赤を基調としたスカート風の巫女服・・・顔立ちも化粧?でキャラの顔立ちを再現している・・・流石と言うほかない。

人だかりが出来るのも納得である。


「新刊お買い上げありがとうございます。」


彼女は笑顔で同人誌を売っていた・・・俺のよく知っている「金の豚」の4コマ漫画だ。

その隣には俺のよく知った顔・・・ダルダルTシャツの作家が座っていた。


(売り子を、雇ったのか?)


「完売しました!ありがとうございました!」


俺が驚いている間に完売してしまったらしい。

周囲からは温かい拍手が送られる。


「これからもよろしくお願いします!」


最後の挨拶と共にサークルの名刺を配り、アフターフォローも完璧だ。


俺はその人込みがなくなるまでボンヤリと見ていた。

その間もコスプレイヤーと作家は親しげに何か話していた。

たまにボディタッチも入り、楽しそうだった。


(どうゆう事だ・・・売り子・・・にしては距離が近すぎる。まさか彼女なのか?)


俺は彼女いない=生きてきた年数の男である。

真実はどうかわからないとしても、どす黒い感情を抑えられない。


(俺は女性とは全く縁がないのに・・・あんな小汚い恰好をした男にはあんな綺麗な子が・・・)


ハッキリ言ってショックだった。

しかし彼らには彼らのコミュニティがあり、その中で出会いがあるのだろう・・・俺と違って。


「すみませんお客様。」

「えっ・・・あっ!」


俺はあまりのショックにサークルブースの前で立ち尽くしていたらしい。

目の前のコスプレイヤーが心配そうな顔で見つめていた。


「ああ、すみません。邪魔でしたよね・・・すぐに移動します。」

「ではこれを・・」


そう言って渡して来たのは、今回の新作本だった。


「えっ・・・完売だったのでは?」

「いつも来てくれるので、お受け取り下さい。」


(覚えてくれていた?いや彼女とは初対面だ・・・という事は・・・作家から聞いていた?)


たしかに俺は顔を隠しているが、イベントに行くときは同じ格好をしていたので、体系と雰囲気を照らし合わせれば気付いてもおかしくはない。

ただ、彼女が知っているという事は・・・作家と彼女は深い仲の可能性が高い。


(同士や女友達の線もあるか・・・いや、不毛な思考はやめよう。)


「あ・・・ありがとうございます。ではお金を・・・」

「いえいえ、これは差し上げます。」

「と・・いう事は無料?」

「もちろんです。」


俺は作家の方を見ると、ウンウンと大きくうなずいている。

さすがに無料は・・・とも思ったが、同人仲間では無料で配るのは結構あるとは聞いた事がある。

ここは受け取るのが礼儀なのかもしれない。


「ありがとうございます。」

「また来てくださいね。」


彼女は笑顔で答えてくれた。

コスプレイヤーはあまり好きではないが、彼女は魅力的だった。

熱中する人の気持ちがわかった気がした。


俺は離れて、遠くからそっと彼らを観察した。

まだ何か親し気に話している。


(楽しそうだな。俺は彼らを下に見て優越感を持っていたが、何もない俺よりリア充じゃないか。今まで買ってきた人たちもそうなのかな・・・。)


それを考えると、急激に自分がみじめになってきた。


(可愛い彼女もいて、好きな事もやって・・・なんだよ。)


俺は、無気力感に襲われながら・・・その場を後にした。

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