夢
俺は同人誌即売会の戦果を整理していた。
「購入したのは・・・聖地巡礼集、鎧コスプレ集、造形指南書・・・」
イベントの余韻を楽しむように一つ一つ読み込んでいく。
クオリティはあまり高いとは言えないし、尖った内容で、ある程度オタク知識がある俺でも全ては理解出来ない。
ただそこにつぎ込む情熱は感じられた。
「俺も何か作れば、情熱を持てるのかな?いや・・・違うな、情熱があるから作るのか。」
俺も多少絵を描いたり、何かを作ったりすることはあった。
確かに楽しかったが、凄い人の作品を見ると、俺には無理だとすぐ諦めてしまった。
でも、そうじゃない・・・勝つか負けるかの世界じゃなく、やりたいから作るという感覚なのだろう。
「もう情熱がない俺には無理だな・・・。」
そっと、戦利品を押し入れの奥底へとしまう。
すると突然、体に疲れによる倦怠感が襲った。
「しかし、疲れたな・・・酷く眠い・・・」
俺は心地よい眠気と共に暗闇へと落ちていった。
◇◇◇
(・・・どこだろうここは・・・)
気が付くと、俺はイベントで何かを売っていた。
「どうしたの?」
声をかけられて隣を見ると、【幽夢】のコスプレをしている女性の姿があった。
「えっ・・・まさか「金の豚」の売り子さん?」
「そんな他人行儀な言い方しなくていいよ。私達、恋人でしょ?」
「恋人・・・そう言えばそうだったな。」
もちろん恋人どころか名前すら知らない。
ただ、この時点で夢だと理解していたので、少しでも楽しもうと思った。
「そういえば君の名前はなんていうんだい?」
「私の名前?当ててみて?」
「う~ん・・・」
俺は彼女の顔をじっくりと見る。
笑顔の彼女に何か既視感を覚えた。
(あれ・・・この笑顔、どこかで・・・。)
その時、頭の中である言葉が浮かんできた。
《私は【コスプレイヤー】なんですけど、【同人イベント】とか好きだったりしますか?》
〇〇と二人で帰った時の会話である。
「まさか・・・君は〇〇?」
◇◇◇
「ハッ!」
目が覚めると、いつもの汚い天井が目に入って来た。
俺は汗びっしょりの体を起こして、夢の内容を思い出す。
(夢・・・だったよな、間違いなく。)
混乱した頭を整理して現実を夢を切り離して、整理してもう一度彼女の言った言葉を思い出してみる。
《私は【・・・・】なんですけど、【・・・・】とか好きだったりしますか?》
(二人で帰った時に彼女の言っていた事は、やはり聞いていない。あの夢は俺の思い込みによって生み出されたものだろな。)
ただ、無意識化で実は聞いていて、夢でそれが再現された可能性もある。
(そうだ、姿だ・・・姿が合致していたら・・・)
コスプレ衣装の彼女を思い出してみる。
服装は参考にならないとして、体系や身長は酷似していたか・・・体形は似ていたかもしれないが、身長は座っていたからわからない。
顔は酷似していたか・・・全体的な形は似ていたような気がする。
(正直に言うと、確証はない。確かめるには本人に確認するしかないだろう。)
しかし、もし外れていたら大恥である。
ただ、彼女の顔がこびりついて離れない。
気になって、このままでは眠れない。
「よし!やはり本人に確認ししよう!」
「【幽夢】のコスプレイヤーが【金井さん】かどうかを!」




