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始まりの町ベルルにて  作者: 鼻村鼻太郎
18/20

18 勇者の契約書

 その隙に、コルネはアレスの右足のアキレス腱をナイフで突き刺す。

 

 アレスは鋭い痛みに叫び声を上げた。


 思わずアレスは自分の持っていた剣を手放すと、すかさずコルネがそれを奪い、アレスの胸に剣を突き立てる。アレスは叫び声を上げる間も無く、胸を串刺しにされた。



 続いて、コルネは司祭の方に向かって歩いていく。


 司祭は、祭壇に置いてあった勇者の契約書を奪われない様に右手に持つと、『近づくな! この裏切り者! 王を裏切り、民を裏切り、私を殺した! この悪魔!』と罵る。



 コルネは一切司祭の罵倒に反応せず、右手に持っていたナイフで逃げ場を失った司祭の首を切った。



 首を押さえ地面に横たわる司祭から二枚の紙をひったくると、苦しそうに地面にうずくまるメルを背中におぶる。


 そして片手に持ったナイフで、階段の入り口を塞ぐ植物を切り裂きながら、教会の地下から脱出した。


 もうすでに火の手は教会全体を包み込んでおり、熱気で空気がゆらゆらと揺れている。


 苦しそうにするメルを一刻も早く救う為に、コルネは急いで教会の出口へと向かった。



 コルネはやっとの思いで一階まで階段を上りきり、ようやく出口から教会の外へと出る事が出来た。


 教会は真っ赤な炎に包まれており、火の粉が宙を舞っている。


 ようやく新鮮な空気を吸う事が出来たメルは、大きく咳き込みながら肺をいっぱいに膨らませた。



 コルネが助かったと安堵していると、燃え盛る教会から何者かが飛び出してきた。


 コルネはそれに気が付かず、一瞬の間に背中を剣で突き刺される。


 衝撃で、メルの顔に血飛沫が付いた。



 メルは必死にコルネの名前を呼ぶ。



 コルネはゆっくり後ろを振り向いた。


 コルネの背後に立っていたのはアレスだった。



「無駄だって。分かってたんだろ? こうなる事は」



 アレスはそう言うとコルネの背中から剣を抜き、袖で血を拭った。


 痛みで膝をついたまま動けないコルネに、我が物顔でアレスは言う。



「魔王とその一族を殺さなきゃ、死ねないんだよ。司祭様も、私も、お前もな。ここで一生殺し合うか? それもいいだろう。だが、結局は不毛だ。あのデミヒューマンの女を殺さなきゃ、前に進めないんだよ」


「よせ、この子に近づくな」



 コルネは威嚇する様にアレスに向かって叫んだ。


 アレスはそんな動けないコルネを、剣で弄んだ。


 メルは煙を深く吸ってしまった影響か、今だに苦しそうに咳き込んで身動きが取れない状態だ。


 そんなメルを必死にコルネは庇っていた。


 遅れてやったきた司祭は、コルネに向かって悪態をつく。



『この私を二度も殺すとは、絶対に許さんぞ』といい、司祭はアレスから無理矢理剣を奪い、コルネの心臓に向かって剣を深く突き刺した。



「コルネ、逃げて……」



 メルはか細い声で、訴えかける様にコルネに言う。


 しかしコルネはメルの事を庇い続け、その場を動かなかった。


 コルネの胸から血が滴り落ちていく。


 コルネがしゃがみ、俯いたまま動かない様子を見て司祭は、コルネの耳元に顔を近づけて言った。



「千年という時間は人を易々と変えてしまう。貴様のおかげで色々と思い知ったが、これからはこの不死の力を私の為に使わせてもらうぞ」



 と言い、コルネの胸に刺さった剣を思いっきり引き抜いた。


 うめき声を上げて動けないコルネの姿を見て、司祭は『痛かったか? 本番はこんなものじゃないぞ』と吐き捨てる様に言う。



 コルネはしばらく俯いていたかと思うと、急に胸を押さえながらよろよろと立ち上がった。


 司祭はコルネの足元に、二枚の紙が落ちているのを見つける。



 それは、勇者の契約書だった。



 一枚は、千年前コルネが交わした物。


 もう一枚は、アレスが新たに司祭と契約した物。


 アレスが契約した物には、魔王の名前は書かれていないはずだった。しかし、そこには赤い文字で誰かの名前が書かれている。



 それはコルネの名前だった。



 コルネはアレスの契約書に、自分の血で自分の名前を書き込んだ。


 完全に更新された勇者の契約に、千年前コルネが交わした契約書は灰になって消えていった。



「一体何をした?」



 司祭の問いに、コルネは答えず司祭の方に向かって近づき、ナイフで心臓を突き刺した。


 司祭が仰向けに倒れ込むと、ナイフを引き抜き今度は、アレスの方に向かって近づく。



「俺に近づくな!」



 そう言ってアレスは魔法を使い、また植物の蔓を使ってコルネの動きを拘束しようとしたが、動きを止める前に、コルネによって喉元にナイフを投げられた。


 それが首に刺さるとアレスは思わずよろけ、自分の首に刺さったナイフを引き抜く。


 すると、同時におびたたしい血が首から吹き出した。



 アレスは違和感を覚えた。



 体に力が入らないので、その場に倒れる様に座り込む。


 首から噴き出る血を右手で止めようと抑えるも、一向に血が止まる気配が無い。



「何だ……これ?」



 勇者の契約上、アレスは魔王が死なない限り不死身のはずだ。



 そして、その契約を取り持った司祭も立場上不死の呪いを受ける。


 そのはずが、司祭が地面に横たわったまま動かない様子に、アレスは気付いた。



 自分がもう、不死の存在では無い事に。



 アレスは地面に向かってうつ伏せに倒れた。


 

 コルネは胸から血を流しながら、その場に座り込む。


 すっかり血の気の引いた顔で、虚な瞳をしていた。


 その様子を見てメルは何かを察したのか、肩で息をしながらも必死に立ち上がって、コルネの方へと駆け寄る。

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