17 コルネとアレス
アレスの罵倒を無視してコルネはメルの方を見る。そして、穏やかに宥める様な声で言った。
「怪我は無いか?」
その質問に、メルは涙目で震えながら首を縦に振って答えた。
それにコルネは心の底から安堵する。
コルネはボロボロになった上着を脱ぎ捨て上半身を露にすると、引き締まった筋肉の上に痛々しい無数の傷跡が見えた。
コルネは司祭を睨みつけると、怒鳴る様に言う。
「コーネリウス。いつ、その餓鬼と勇者の契約を行った? このままじゃ二重契約だな」
それに対して、司祭は今まで見せてこなかった感情を顕にするかの如く、捲し立てる様に返答する。
「貴様は勇者としての責任を放棄して裏切った大罪人よ。もうすでに、神の加護も消えているだろう。唯一不死の呪いだけが、貴様がかつて勇者だった事の証に過ぎない。故に真の勇者はアレスだ」
そういうと、司祭は祭壇から一枚の古びた紙を取り出す。
古びてはいるが、劣化しないように強固な魔法をかけられている。
その紙には古の神々の文字が書かれていたが、唯一コルネの名前とメラトリーネの名前だけは人間の文字で書かれている為、読み取れた。
それは千年前、司祭とコルネが契約した勇者の証。
そして、さらにもう一枚司祭は紙を取り出す。そこには、アレスの名前が書かれていたが、魔王の名前の部分が空欄だった。
「これが何を意味するか分かるか? ここに魔王の名を書けば、正式に貴様との契約は終わり、貴様は不死の呪いから解放されるだろう。だが、敢えてそうはしなかった。貴様には自ら殺してくれと懇願する様な酷い目に合ってもらう。貴様自ら私に死を願った時、ここにあの小娘の名前を書き、殺して楽にしてやろう」
その司祭の言葉を鼻で笑いながら、コルネは『やれるものならやってみろ』と言って挑発する。
「ようやく、会えたな裏切り者。お前が私の先祖を、アレイスト王国の王を裏切りさえしなければ、私はこのような惨めな人生を送らずに済んだんだ。アレイスト王国が滅び、我が一族は奴隷の様な扱いを受けてきた。まるで生き地獄さ。貴様には、今まで我が一族が受けた苦しみ以上の地獄を味わってから死んでもらう。そして私が新たな勇者として民の羨望を集め、再びアレイスト王国の王として君臨するのだ!」
そう言ってアレスは腰から剣を抜き、コルネに襲いかかってきた。
コルネはそれを躱すと、腰に括り付けられていたナイフを取り出す。
素早くメルの体を拘束する蔓を切り、彼女を解放した。
部屋中に充満する煙の影響で、メルは息苦しさを感じ咳き込んでいる。
そんなメルを一刻も早く逃がそうと、コルネは彼女を抱えて逃げようとするが、アレスが植物を操り一階に繋がる階段の入り口を塞ぐ。
「ここまで来て、みすみす逃す訳無いだろ。この部屋から逃げたければ、この私を殺すしか無いな」
苦しそうに咳き込むメルを見て、コルネは一刻も早くここから出なくてはと焦った。
覚悟を決め、アレスと戦う事を決意する。
コルネは持っているナイフを構え、アレスに襲いかかった。
アレスは一歩下がって剣でそれを受ける。
アレスが呪文を唱えると、剣が赤く発光し、熱を帯びた。
たまらずコルネはアレスから離れる。
「どうした? そんなものか先輩。今度はこっちの番だ!」
そう言ってアレスが目を瞑り、何かに意識を集中しながら呪文を唱えると、地面から無数の針の様なものが生えてきた。
コルネは躱そうとしたが、その針がメルの方に向かっている事に気付くと、メルを庇う様に針を迎え撃った。
地面から生えた無数の針が、コルネの足から先を串刺しにする。
コルネは苦痛で顔を歪ませながら、何とかメルを背中に抱え、襲い来る針の群れからメルを守った。
「必死だな。女を庇ってばかりいると、痛い目に会うぞ? 私はその方が楽しいが、いつまで精神が持つかな?」
アレスの挑発に、コルネは静かに怒りながら低い声で脅す様に言う。
「粋がるなよ小僧」
コルネは地面に生えた針から自分の足を引き抜くと、メルを床に寝かせた。
火の勢いは収まるどころか次第に強まっていく。
石造の教会とはいえ、柱や壁や装飾にはふんだんに木材が使われていた。
アレスの操る植物から燃えやすい柱や壁に火が移り煙が部屋に充満してきた影響で、メルはさらに苦しそうに咳き込んでいる。
このままではメルの身が危ないと思ったコルネは、決着を早めなくてはと内心焦った。
「あまり時間が無い。とっとと終わらせる」
そう言って、コルネは再びアレスに向かってナイフで襲いかかる。
しかし、アレスはすでに魔法を使って剣を熱しており、したり顔でコルネを待ち受けていた。
振り下ろされたナイフに合わせアレスは剣を構えるが、ナイフを剣で受け止める前に、コルネに足を払われて、アレスは地面に仰向けで倒れ込んだ。
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