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始まりの町ベルルにて  作者: 鼻村鼻太郎
15/20

15 コルネが捨てられた日


 それに両方持っていたって昨日は化け物一匹、追い返す事すら出来なかったのだ。


 しかし、コルネは今にも魔法で操られた植物の蔓に首をへし折られそうになっている訳で、迷っている余裕は無い。


 メルは無我夢中で意識を集中する。コルネを助けたい一心で、自分の中のありとあらゆるエネルギーを左手の一点にかき集めた。


 自分の思いを全てぶつけるかの様に、メルは大声で火の魔法の呪文を叫ぶ。



「エルムっ!!!」



 メルは今まで制御した事の無い大きなエネルギーを両手に感じ、それをコルネに放った。


 放たれた光弾は、大きな火の玉となり、コルネに絡みつく植物をコルネごと焼き尽くす。



「嘘……やだ! コルネ! コルネっ!」



 火の勢いは瞬く間に広がり、一瞬のうちに天井まで燃やし尽くした。


 メルは心の内で静かに呟く。やっぱり無理だった、制御出来なかった。


 私に、誰かを助けることなんて出来るはずがなかったと、メルは心の中で後悔する。


『ごめんね、ごめんね』と、涙を流しながらメルは何度もコルネに謝った。



「はははっ! これは傑作だな! 自分を助けようとした人間を焼き殺すとは、中々に滑稽だ!」



 メルを馬鹿にするように、アレスは言った。


 しかし、アレスのメルに対する暴言を否定するかのごとく、コルネは常人では到底生きていられないほどの灼熱の炎から、まるで不死鳥の様に這い出てきたのだ。



「どうして……」



 その様子を見てメルは絶句する。


 コルネの服は火で焼けてしまい、多少ボロボロになってしまったが本人は何事も無かったかの様にピンピンしている。


 その理由を知っているかの様に、アレスが言った。



「まさか貴様が『裏切り者の勇者』だったとはな。しかし、不死の呪いはしっかりとその魂に焼き付いているみたいだな」



 その言葉にコルネは自分の過去を思い返す。










 コルネは、とある小さな村の農民の五人目の男の子として生まれた。



 しかしこの村ではここ数年の雨不足により、作物の不作が続いており、これ以上彼の両親は誰かを養う余裕が無かった。



 コルネが三歳の誕生日を迎える頃、彼は魔女の森と呼ばれている場所に捨てられた。



 他の兄弟に比べて生まれた時から体が弱く、小さく、栄養不足で満足に歩くことも出来ないコルネは、生きてゆく事は出来ないと両親に見捨てられたのだ。



 魔女が住み着き、無闇にこの森へと訪れたものは殺されるという伝承があるこの森に、いらない子供はよく捨てられていた。


 それは別に、この村だけの悲しい風習では無かった。


 彼の生まれたこの村を始め、隣町や別の村でも当たり前の様にこの悲劇は行われていた。



 皆、生き残る為に必死だったのだ。



 そして、コルネもこの森に捨てられた他の子供たちと同じ様に飢えて死ぬか、森に住む化け物に食われて死ぬか、どちらかしか選択肢は無かった。



 そのはずだった。



 コルネが生きようと、芋虫の様に森の中を這いつくばっていた時、メラトリーネという一人のデミヒューマンの少女に救われた。


 コルネが三歳、メラトリーネが十二歳の時だ。



 彼女はエルフという種族で、生まれた時からこの森に住み、自然を愛し守りながら生きているデミヒューマンだった。


 彼らは魔法を扱う事が出来るため、森を伐採して荒らそうとする人間はそれで追い払ってきた。


 エルフと人間はあまりいい関係とは言えなかったが、彼女は人間だとかデミヒューマンだとか関係無く、困っている者を見つければ構わず助けようとする心の優しい娘だった。



 コルネは彼女やその家族に育てられ、立派に成長していった。


 コルネはメラトリーネのことをメラトと呼び、メラトは彼にコルネという名前を与えた。


 今まで家族に奉仕する為の道具としてしか扱われてこなかったコルネは、新しく出来た居場所、そして家族と自分を救ってくれたメラトを心の底から愛していた。


 

 コルネは人間である為、魔法を扱う事は出来なかったが、メラトから森と一緒に共存していく術を学び、自然を愛する心を学んでいった。


 コルネは成長していくと徐々に歩ける様になり、森でエルフたちと生活していく中で、体を鍛え上げられていった。


 成人する頃には、筋骨隆々のガタイのいい青年になっており、森の中を縦横無尽に駆け巡る事が出来る様になっていた。


 

 そして、彼が立派に成人すると、メラトはコルネに旅に出る様促した。


 コルネは実の親に捨てられた事をずっとコンプレックスに思っており、その心の傷を何とかしようとメラトなりに精一杯考えての事だった。


 旅に出て、立派になった自分自身を他の人間に認めてもらえれば、彼の心の傷が少しは癒えるのでは無いかとメラトは考えていた。



 コルネが今まで育ってきた森から旅立つ日の朝、メラトはお守りにと浮遊岩を手渡した。


 上部に小さな穴が空いており、そこには首にかけられるよう紐が通されていた。


 浮遊岩の中心には蛍火石が入れられており、メラトが自分で加工してはめ込んだ物だった。



 メラトは『何かあったらこれを地面に叩きつけなさい。何処にいても、私たちがコルネのことを必ず助けに行くから』と言った。


 その瞳には涙が浮かんでおり、コルネはメラトの思いに感激して思わず抱きしめた。


 メラトは、旅立つコルネの後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと彼を見送り続けた。そして心の中で『どうか彼が無事旅を終える事が出来ます様に』と願った。



 それからしばらく、コルネは困っている人たちを助けながら放浪の旅を続け、十年後アレイスト王国の首都アリアに辿り着く。



 そこで、魔王の脅威から救ってくれる勇者を募集する張り紙を見つけたコルネは、自分という存在を他人に認めてもらう絶好の機会だと思い、勇者に志願する為王の住まう城へと向かった。


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