12 教会にて
それを傍から見ていたコルネは、アレスの胡散臭い言動と表情に疑いの目を向けている。
こいつは、何か裏があるのではないか? と。
そんなコルネの心の内を知ってか知らずか、メルは上機嫌になってアレスに話しかけた。
「本当に、私が司祭様に直接会えるのですね?」
それに対して、アレスはにこやかな表情で自信たっぷりに『はい』と言った。
メルはコルネの方を見る。
コルネはメルに対して、心配そうな顔で『やめた方がいい』と言った。
「私は大丈夫だから。司祭様に会って色々お話を聞きたいの」
メルはそう言ってアレスの提案を了承した。
それならせめてと、コルネはメルに杖と本を持っていくように提案した。
メルは『大丈夫、心配しないで』と言ったが、コルネが『念のために』と言うので仕方なく、アレスにも杖と本を持っていくのを納得してもらい、彼の後をついていくことにした。
メルがアレスに連れられて行くのを見守りながらコルネは思った、嫌な予感がすると。
コルネは二人の後をつけることにした。
あの司祭が、自分の見間違いでは無く『あの男』なのだとしたら、メルが危険だ。
ある種の強迫観念にも似た様な感情で、奴を二人より早く見つけなくてはならないと強く思っていた。
べルルの中心街から少し外れた場所に、大きな教会がぽつりと立っている。
この建物も他のべルルで建てられた物と同じく石造で、古びて所々欠けたり、崩れたりしている部分は千年の時の流れを感じさせるかの様な、壮大で厳かな雰囲気に包まれている。
教会の窓は光の角度によって七色に変わり、神聖な空気を感じさせた。
アレスに案内されるがままこの教会にやってきたメルは、その壮大な雰囲気に圧倒されて息を呑む。
「さあ、こちらへ。この中に司祭様がいらっしゃいます」
アレスの声に導かれる様に、メルは教会の扉の前まで来た。
しかし、ふと何か思い返した様に立ち止まる。
「どうかなされましたか?」
メルの不可解な行動に、アレスは思わず尋ねた。
メルは困った様な顔をしながら『ちょっと緊張しちゃって』とアレスに向かって言う。
「気にすることはありません。司祭様はとても心の優しい方です。貴方も、会えばすぐに気に入ることでしょう」
不安そうなメルに、アレスは満面の笑みでそう言った。
「あの、やっぱり不安なのでコルネを呼んできてもいいですか?」
メルの突然の提案に、アレスの笑顔が引き攣る。
「コルネ……貴方と一緒にいたあの怪しげな風貌の男ですか」
「はい。司祭様に一人で会うのはどうしても恐れ多いというか……」
メルは、アレスにコルネも一緒に呼んでいいかと頼み込んだ。
アレスは少し困った様な顔をして、メルを説得する様に『あの男を呼ぶ必要はありません。大丈夫です、司祭様は快く貴方を歓迎するでしょう』と繰り返し言う。
「ごめんなさい。やっぱり私帰ります」
メルは司祭と直接会う事に、土壇場になって怖気付いてしまっていた。
ここまでウキウキでやってきて、なぜこんな事になってしまったのか、メル自身にも分からなかった。
私がデミヒューマンのハーフだと分かったら、やっぱり嫌われてしまうのではないだろうか。
本当はいい人のふりをして、私を騙そうとしているのではないだろうか。
考えたくは無いが、急にそんな考えが頭の中でぐるぐると渦巻いて、ずっと不安でしょうがなくなる。
「そうですか……それでは仕方がない」
アレスは残念そうに言った。
メルは、そんなアレスに対して申し訳なくなって深々と頭を下げる。
アレスは優しげな声で、『頭を上げてください』とメルに言った。メルがゆっくりと頭を上げると、アレスはメルに向かって小声でぼそりと、呟く様に言う。
「ここまで来て、むざむざ帰す訳無いだろ」
「えっ?」
先ほどまで優しかったアレスの顔は、まるでメルのお父さんを見殺しにした村人や、メルをデミヒューマンのハーフだと知って掌を返してきた人間たちと同じ様な、軽蔑の瞳で歪んだ恐ろしい表情に変わっていた。
アレスは急にメルの右手首を左手で強く握ると、自分の方へ強く引っ張った。
「その赤い髪、朱色の瞳。そして長く尖った耳。間違いない、お前が『最後の生き残り』だ」
「ど、どういうこと? 痛い! 離して!」
「うるさい黙れ!」
アレスは右手でメルの頬を平手打ちすると、『忌々しいデミヒューマンのガキが。調子に乗るなよ』とメルを罵った。
「騙したの……? 私を司祭様に会わせると言って嘘をついたの?」
メルはぽつりと呟く様に言った。
絶望感で力が抜け、目に涙を浮かべる。その様子に、アレスは満足げな表情で言った。
「安心しろ、会わせるさ。その為にここまで連れてきたんだ。わざわざ、お前の様な汚らわしいデミヒューマンを連れて教会までな」
メルはアレスを睨みつける。それを嘲笑う様にアレスは口の端を吊り上げた。
「離して……離さないと」
「離さないと? なんだ? その左手に持った杖で、魔法でも使うというのか。所詮、魔導書と杖が無ければ魔法が使えない、三流エルフにこの私が倒せるとでも?」
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