11 勇者アレス
コルネは、目の前の自称勇者と名乗る青年を警戒しながら注意深く観察していた。
「『勇者は千年前に滅びた』そう思うのも無理はありません。しかし、勇者は魔王に滅ぼされてはいなかった。この千年という節目に、司祭様は様々な方と協力して、勇者を復活させようと尽力されたのです」
声高々に語るアレスにコルネは訝しみながら言った。
「お前が勇者だと?」
「お前では無く……私の名前はアレスです。そう言う貴方はどこの誰ですか?」
喧嘩腰のコルネに対して、アレスも不快感を露わにしながら言葉を返す。その様子に、メルは慌てて仲裁しようと二人の間に割って入った。
「す、すみません。私たちこの町にやってきたばかりで……」
メルが申し訳なさげにそう言うと、アレスは大きなため息をついてコルネを一瞥し、次の瞬間には爽やかな笑顔になってメルに向かって言った。
「いえ、私も大人げない事をしてしまいました。ところで話を戻しますが、司祭様に会われたいのですか? であれば、私は勇者として貴方の助けになる事が出来ます」
急にやってきた願っても無い申し出に、メルは困惑する。
確かに、メルは司祭に直接会いたいと思った。
それは、母から聞かされていた勇者伝説の中でも司祭が、勇者に力と助言を与える最も重要な人物だったからだ。
メルはどうしても知りたかったのだ、優しい勇者のことを。
千年前の話とはいえ、何か記録があるはずだ。メルは少しでも、母の語る優しい勇者に近付きたくて、この千載一遇の機会を生かそうと居ても立ってもいられなかった。
昨日べルルの町の石碑を見たり、コルネに勇者伝説を尋ねたりして、一年に一度ベルルのお祭りに司祭がやって来ると知り、メルはこの願っても無いチャンスを何としても、ものにしたかった。
しかし、目の前にいる自称勇者と名乗る青年は、メルにとっては知らない人間だ。
コルネとも知り合ったばかりだが、彼には命を助けられ、ベルルの町を案内して貰いさらには大事な物を頂いたという恩がある。
メルは、『人間を信じたい』という気持ちと『もう騙されたくない』という気持ちの狭間で揺れ動いていた。
そんなメルの迷いを断ち切るかのように、コルネがアレスに向かって一言『いや、彼女は司祭に会うつもりは無い』と言った。
「しかし、彼女は確かに司祭様に会いたいとおっしゃっていました」
「そもそも、他人の会話を立ち聞きして尚且つ割って入るなんて、勇者としてどうなんだ?」
コルネの強い口調に、アレスは苛立ちを覚える。
「私は彼女に話しているのであって、貴方には関係ない」
「いや、ある。俺は彼女と一緒にこの町に来た。言わば道連れの関係だ」
もはや収拾のつかない事態になりそうな雰囲気に、メルが思わず『やめてください!』と一言大きな声で叫ぶ。
すると、熱くなっていた二人は我に帰り、ばつの悪そうな顔をして押し黙った。
「アレスさんの話、私にとってはとても有難い話です。でもーー」
メルはそう言って、今まで必死に隠していた長い耳を露わにするべく、目深く被っていたフードを上げる。
メルの突然の理解し難い行動に、コルネは慌てて『やめろ!』と制止するも、間に合わず彼女のありのままの姿が晒される。
「私はデミヒューマンのハーフです。今までそのせいで、人に忌み嫌われてきました。貴方が勇者だというのなら、私は貴方にとって敵になるかもしれない存在です。それでも、私のことを信じていただけますか?」
メルの勇気ある行動に、アレスは感心したのか一言『素晴らしい』とだけ言った。
コルネは苦虫を潰した様な表情でアレスを睨む。
メルは真剣な表情でじっとアレスの目を見た。
そこに、恐れやあるいは侮蔑の感情が現れないか、注意深く観察しているのだ。
だが、アレスは恐れや侮蔑とは程遠い、歓喜の表情でメルの方を見た。
メルはそれに少し安堵する。今まで自分の正体を知った人達は、掌を返して虫を追い払うような顔でメルの事を遠ざけたからだ。
「デミヒューマンかつ、そんなに幼い身で人の国を生きるのはさぞ大変だった事でしょう。立派な方だ。貴方こそ、司祭様に会われるのに相応しい」
「あ、ありがとうございます」
お父さん以外の人間に、そこまで褒められたのは生まれて初めてだ。
メルの心に淡い希望という火が灯る。
もしかしたら彼は優しい勇者の末裔で、だからこそ、彼は私を差別せずに受け入れてくれたのではないかと、メルは期待してしまった。
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