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陽炎 あなたを連れて 季節は巡る  作者: 氷雨


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4/5

季節の移ろい

「ハァハァ…ッ」


暗闇の中、誰かが全速力で走っている。


「どこ…どこなの…!」


いくら進めど辺りは闇。探し物は見つからないようだ。


「約束…約束を!私は…まだっ!」


*****************************************************************************************************************


「ピピピピピピピピ」


 聞き慣れた電子音が静寂を忘れさせる。

 窓からのそよ風がカーテンを揺らし、水中から見る光のように朝日が揺れている。少し開けていた窓から夏の朝特有の匂いがする清々しい風が部屋の中を、肺を、満たす。時計は午前7時半を表示している。

 何か夢を見ていた気がするのだけど...。何だったのだろう。まぁいいわ。...氷依はもう起きてるのかしら。きっと起きてるわね。おはようのメッセージでも送っておこう。一緒に喫茶店で朝食をとるなんていつぶりかしら。9時まであまり時間もないし準備済ませちゃおっと。

 ヘアアイロンを温めて化粧をする。なんということもないモーニングルーティーン。


「行ってきます。」


 だれに向けた言葉でもない。けれどつい言ってしまう。

 

 家から少し歩く場所、黒猫と植物の蔦の看板が目印の赤レンガと木造りの昔ながらのレトロな喫茶店。


「カランカラン」


 見慣れた景色、落ち着く雰囲気。私の一番好きな場所。


「夏織。こっちよ」


 氷依に呼ばれたほうへ歩みを進める。入口からすぐの窓際。陽の光が当たる温かい席。


「おはよ!氷依!今日も早いわね。」

「おはよう、夏織。私も今着いたところよ。」

「少しずつだけど涼しくなってきたわね~。もうそろそろ夏も終わって秋が来るかしらね」

「夏には夏のいいところがあるから終わってしまうとなると寂しいものがあるわね」


 二人でモーニングセットをそれぞれひとつずつ注文する。今日集まったのは昨日の模様について調べるためだ。腹が減っては戦はできぬ。ということで今日は二人で朝食をとっているというわけだ。


「この後はとりあえず一番大きな図書館に行って各自で調べてみる。その後それぞれの集めた情報を交換してまとめるってことでOK?」

「それで大丈夫よ」

「あ!来たみたいね」


 食器の鳴る音が聞こえてくると同時に食欲を刺激するすごくいい匂い。待ちに待った朝ごはんの時間だ。


「やっぱり一日の始まりはこれよね!」

 結露がグラスを濡らす珈琲と小麦色に焼けたトースト、半熟の目玉焼きにフレンチドレッシングの色鮮やかなサラダ。喫茶店のモーニングといえばのイメージ通りのものが並ぶ。それがまたいいと思う。食器の触れ合う「カチャカチャ」という音も雰囲気が出て心地いい。普段はクールな氷依も幸せそうな表情を浮かべている。


「やっぱりこれに限るわね!」

「これからも一緒に食べましょうね」


 そういって見つめてくる瞳は晴れ渡る真夏の空のようで綺麗だった。



**********************************************


「腹ごしらえも終わったし図書館へ向かいましょうか!」

「なんだか高校生の頃を思い出すわね。勉強するために図書館に向かっているようで」

「そうなの?高校生の時はあまり勉強しなかったのよね~氷依の高校時代を知りたいわ」

「またいつかね」


 向かっている図書館は国内でも最大級の大きさ、貯蔵量を誇る大型の図書館。大体の資料はここに行けば何かしら手に入るといわれる図書館だ。

 図書館なだけあって中は静かで歯車で動く時計のカチカチという音が響き渡っている。あたり一面本棚が所狭しと並んでいる。真ん中あたりまで行くと少し下に下りる階段があり机が置いてあるスペースが設けられているという2階構造になっている。


「じゃあここからはいったん二手に分かれて行動ね」


 小声でそう氷依にささやく


「わかったわ。またあとでね、夏織」


 銀色の髪を揺らし私とは反対方面に歩いていく。

 私は私で気になることが実はたくさんあるのだけどとりあえずは模様のことよね。全く違う場所に同じ模様があったことを考えると旧時代に使われていた共通の何かのシンボル的なものだと思うのだけど...。今のところの共通点はどちらも確認できたのは「神」にまつわる場所ということ。一つ目は廃れた鳥居、2つ目は...おそらく...神が封印されている、又は住む世界かそれに近しい世界。神話に関する本を読んでみるのがいいのかしら...。鏡面仕上げの背景に大きな木、蛇...ね。とりあえず、スピリチュアルな系統の本が集まっているコーナーに行ってみましょう。


***********************************************


夕刻、二人は図書館の外、自動販売機の前で集合した。

「じゃ、情報交換と行きましょうか」

「まずは私からね。神社等の役割についてなんだけど。あれは何かを祀っているだけじゃなくて、神に類するもの、人類の手には負えないような者を分割して弱体化、封印をするための施設という説が浮上したわ。それにしては不可解な部分もあるという点が引っかかるところではあるのだけれど...」

「次は私ね。あの模様についてだけれど鏡面仕上げの背景、大樹、尻尾を噛む蛇

あれはそれぞれ意味がありそうなの。鏡は神霊の依り代の役割を、大樹は世界樹、彼岸、此岸をつなぐもの、蛇は循環、円環を示すものらしいわ。」

「...これだけだと何もわからないわね」

「まだまだ情報不足ね、これからも探検を頑張ってみる必要があるわね!」


 ...何かしらつながりがありそうなものだけど...。どちらにせよまだまだ情報不足ね。近いうちに何かわかるといいのだけど。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

コメントや感想、質問等、評価付けをいただけると非常にうれしく、モチベーションにもなると思うので気軽に送っていただけると嬉しく思います。

探り探りやっていくことになると思われるためご迷惑をおかけすることも多々あるとは思いますが、次回もぜひよろしくお願いいたします。

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