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陽炎 あなたを連れて 季節は巡る  作者: 氷雨


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3/5

言い伝えの所以

ep1,2と引き続き読み進めてくれている方々、非常に感謝です!

 二人は商店街を抜け、線路沿いを歩いている。


「ここね」


 踏切の前で、夏織は立ち止まる

 踏切の先には人2人分あるかないか程度の幅の細道と階段が続いている。


「これを上っていくの?」


 パッと見かなり長い階段だ。溶けてしまいそうな程の気温の高さと、強い日差しを考えると結構つらいものがある。


「まぁ頑張って登ろうよ!この道を上っていけば上から街と海の全体を眺めることができると思うしきっときれいな景色だと思わない?それに、猫もたくさんいるらしいわよ!運がいいとみられるかもね!」


 そういって夏織は期待に満ちた顔でどんどん進んでいく。

 この暑さと日差しの中であれだけ元気なのは名前に夏を冠しているからだろうか。そう思いながらも彼女の後ろに並んで道を進んでいく。

 ルビー色の瞳が時々こちらを覗く。ちゃんとついてこれているかを気にかけてくれているのだろう。目線が合うと微笑んでくれる。その顔が太陽のようにまぶしい。


「この道を右ねたぶん。方角的に」

「方角的にってあなたね....」


下調べをしっかりしてるのかしてないのかよくわからないなと思いつつ進んでいく彼女を追いかける。


「このあたりはすごく不思議な感じがするわ。昔の景色を時間ごと切り取って閉じ込めているみたい。」

「そうね~。ものすごく古い型の洗濯機が外にそのまま放置されていたり現代と違うと感じるところが多々あるわね。それでも、現役当時は何かを守るために作られた塀や家屋が朽ちていたり所々崩れていたりするところを見ると時間の流れを感じるわね。何者も時間の流れには勝てないのよ。猛きものもついには滅びぬ。盛者必衰ってことね。」

 その表情はどこか寂しそうにしている。


「ねぇみて!猫が歩いてるわ」

 さっきまでの表情はどこに行ったのかと思わせるような明るい笑顔。

 彼女の指す先には塀の上を我が物顔で歩いてる黒猫がいた。


「近くに行って写真撮りたいな~」


 猫が逃げないようにゆっくり近づいていく。

 静けさを切り裂くシャッターの音。


「見て!すっごくいい写真が撮れたわ!」


 そこに映っていたのは、この街の特色であるレトロな街並みとまた違う姿を見せている島々とキラキラと輝く水面。これらを背景に優雅に歩く黒猫。写真館にあっても不思議ではないくらいの芸術的な一枚に仕上がっていた。


「この写真も帰ったら一緒にもらえる?」

「もちろん今日撮った写真は全部あげるわよ!二人の思い出だもの。」


 二人は歩みを進める。

 いくつもの寺をめぐり、いくつかの曲がり角を曲がったところでふと違和感を覚える。


「夏織、ちょっと待って。このあたり、何かある気がする」


 木々が生い茂、道もいまいち整備されていないようなところで何かを感じる。


「もしかして今日は当たりってことかしら?ワクワクするわね!」

「何かあるかもしれないんだからちゃんと気を引き締めて。このあたりを探してみましょ」


 よく見渡すとさっきまで他の人もいたのに確かのこのあたりには人影がない。噂に聞く人払いの類のものが仕掛けてあったのだろうか。気を引き締めないと。


「夏織、あそこに祠があるわ。」

「え?どこ?」


 道を少し外れた一段下。そこには確かに石造りの人が入れるほどの大きさの祠がある。確かにそこにあるのに夏織には見えていないらしい。


「一般人には見えないものなのかしら。そういうものもあるのね。氷依がいてくれて助かったわ。そこまで連れて行ってくれない?」


 そういって、手を差し出してくる。


 夏織の手を引いて祠の近くまで行く。近くで見てみると見たことない模様?のようなものがびっしりと彫られている。


「この辺にあるのね?」


 そういって夏織は手を伸ばす。


「本当だ...確かに何かある。見えはしないけど触れることはできるんだ。」


 触れることができるということは確かに現実には存在しているということだ。見えないのはこの模様が関係しているのかしら? 

 突如眩暈がした。横を見ると夏織が倒れている。やばい...このままだと....意識が.....



 冷たい感触、ほのかに甘い香り。どれくらいこうしていたのだろう。起き上がってあたりを見渡してみる。薄暗い空間に一面には水が張ってある。あたりには蓮の花がびっしりと咲き誇っている。真ん中には長方形の石。隣には夏織が横たわっている。呼吸はしている。まだ目を覚ましていないだけのようだ。


「夏織、起きて。夏織」

 

 体を揺さぶって呼びかけるとすぐに目を覚ました。


「おはよう。夏織、体に異常はない?」

「おはよう。氷依、大丈夫だと思うわ。氷依も大丈夫?」

「大丈夫よ」


 不思議だ。さっきは気が付かなかったが、床一面に水が張ってあり、そこで横になっていたのに私たちの服も髪も何も濡れている様子はない。


 「動けそうなら少しこのあたりを見て回ってみましょ!」


 二人で探索してみてわかったことは、水に濡れないのではなく触れられないということ。これは蓮の花も同様のようだ。空間は円形になっており、天井はドーム型になってそうだということ。壁にはうっすら蔦のような模様が恐らく彫られている。が、くぼみに触れることはできないということ。


「あとは真ん中の石だけね。あれは触れられるのかしら?」


 近づいてみると石というよりかは棺のようなものだということが分かった。


「これは...棺?中は靄がかかっていて見えないわね」

「氷依、ここ見て」


 棺の真ん中には模様が彫ってある。


「この模様、見覚えがあるような...」

「この模様って、前回の鳥居で見たものと似てない?」


 確かに似ている。あの時の模様の完全体だろうか。蛇が自分の尻尾を噛むように円形を形成している。真ん中には大きな木が描かれていて背面は鏡のように反射している。

 でも鳥以外でもどこかで見た記憶があるような...もっと昔に...?

 カシャッ

 思考を遮るシャッター音


「触れなくても写真にはちゃんと写るみたい。触れられないものも取れるから昔の人は魂が抜かれる~なんて考えたりしたのかな?なんてね。

 今はそんなにむつかしい顔して考え込まないでいったんここから出ることだけを考えましょ。元の空間に戻れば文献もたくさんあるしいくらでも調べようがあるわよ。ね!」

「そう...ね。そうしましょう」


 どうやら変に気を使わせてしまったようだ。こういうところは本当にかなわないと思う。


「もう一度当たりを探索してみましょ。何か手がかりがあるのかもしれないわ!」


 さっきは気が付かなかったがよく見ると壁に扉のような模様と文字?と思われる羅列が彫ってある。


「夏織、これ、なんだと思う?」

「結びの根に触れしものを捧げろ...?読めないし見たこともない文字のはずなのに意味が分かるわ。どうして...?」

「わからないわ。でも結局何をしたらいいのかしら。」

「捧げろっていうくらいだから何かをあの棺の中に入れればいいのかな。」

「結び...結びってことは何かと何かをつなげるということよね...」

「あ!もしかしたら!」


 そういって夏織はカメラからSDカードを取り出した。


「それをどうするの?」

「何かと何かを繋ぐ。このSDカードの中には私と氷依を繋ぐ思い出がたくさん入っているわ。ならこれを捧げればいいってことじゃないかしら!大切な写真がたくさん入っているけど命には代えられないもの。やれることはやってみるべきよ!」


 そういって夏織は私の手を引きながら棺の近くまで行き


「この模様のデータもなくなっちゃうからちゃんと覚えておいて」


 SDカードを中に入れた。


 世界が急に明るくなった。高い気温。木陰から差し込む日差し。元居た場所に立ち尽くしている2人。

蝉しぐれ。あれは何だったのだろうか。


「夏織、さっきの出来事覚えてる?」

「ちゃんと覚えてるわ。蓮の花に石の棺。SDカードを捧げたところまで、ちゃんと...」


彼女はカメラを操作してSDカードが本当になくなったかを調べる。


「無い...あれは現実だったんだ...すごい...すごい体験だよ!これはっ!やっぱり魔法は実在したんだ!」

「帰ったらあの模様について調べてみましょ。」

「そうね~。でもせっかくだしまだ時間もあるから残りの観光場所もこのまま行ってみましょ!今日は33年に一度の観音様御開帳の初日みたいよ!せっかくだし見ていきましょ!」


 定期的に姿を現していたという言い伝えの正体ってこれのことでは...?なら今日がその日でなければあそこにはもしかして...。危なかったかもしれない。これからはもっと気を付けなければ。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


自分の世界観をもってそれを広げるって世の作家様は簡単にしているように見えますが結構とんでもないことをやってるんだなと感じます。


コメントや感想、質問等をいただけると非常にうれしく、モチベーションにもなると思うので気軽に送っていただけると嬉しく思います。

探り探りやっていくことになると思われるためご迷惑をおかけすることも多々あるとは思いますが、次回もぜひよろしくお願いいたします。

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