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陽炎 あなたを連れて 季節は巡る  作者: 氷雨


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2/5

潮風かおる貴女との旅路

 ガタン ゴトン ガタン ゴトン...

 電車の心地よい揺れが二人をまだ見ぬ世界へ運ぶ。


「そとはとてつもなくあっついのに電車の中はエアコンのおかげで快適でいいわね!こうやって揺られているだけで目的地まで運んでくれるし、文明の利器様様ね~」

「普段電車に乗ることなんてあまりなかったけれどたまにはこういうのもいいものね。」

「そうでしょ?めぐるめく変わる景色を楽しむこともできるし、普段あまり目にすることがない自然に触れ合うこともできるし本当に素晴らしい乗り物だわ!」

「といっても今は山の中を走っているだけで前回の旅と同じような景色が広がってるけどね」

「でもこの山を越えるとあとはずっと海沿いを走ってくれるはずよ!氷依は確か山より海派だったわよね」

「そう。だからこの電車旅は結構楽しみにしてるのよ。」


 3つの陸に囲まれ、大小数多くの島々が入り乱れる様子がとても美しいと評判の海。それぞれの陸地は船や橋でつながっている。


「そろそろ乗り換えよ!氷依、降りる準備はできてる?忘れ物しないようにね」

「大丈夫、全部持ってるわ」

「...工場が近いせいか...少し変わった臭いがするのね?」

「まぁすぐ電車も来るはずだし気にしないようにしましょ」


 そうこう言っているうちに電車が来た。

 氷依が海の景色を楽しみにしていたから海岸側の席に座りたいけど...

 熱気の中に潮の香が混ざったそよ風に包まれる空気から涼しい空気に変わった。乗車人数に対して車内は広く、席数も多い。望み通りの席に座ることができた。


「バイクがたくさん走ってるわ!」


複数台のバイクが隊列を組んで走っている


「今日の目的地はツーリングやサイクリングで人気の町だそうよ。みんな私たちと同じところへ向かっているのね」


 人間十人十色、目的は違えど皆で同じ方向を目指して動いてるってなんだか不思議な感覚を覚える。


「氷依、そろそろ海が見えてくるはずよ」


「綺麗...」


 青色の瞳を輝かせながら氷依は景色に釘付けになっている。水面に反射する光が氷依の銀髪を輝かせる。夏特有の蒼天、アクセントとなる島々、それに見入る銀髪の女の子。一枚絵として完璧なものだと感じる。


「時よとまれ、汝は美しい。そう言いたくなる気持ちもわかるわね」

「何の話?」

「気にしないで、ひとり言だから」


そういって目線を同じ海に向ける。

本当にこんなゆったりとした時間がいつまでも続けばいいのに...


「...」

「...」


「氷依、そろそろ帰ってきて!降りるわよ」

「...!わかったわ。とてもきれいな景色で満足できたわ」


 ハッっと我に返るようなしぐさ、本当に現実を忘れてしまうくらい見入っていたらしい。自分の趣味に突き合わせている分こういったことで楽しんでくれているというのは嬉しいものがある。普段は大人びている分こういうところを見ると、よりかわいらしく見える。


「それはよかった。街並みもすごく気に入ってもらえると思うよ!」

「それはとても楽しみね」


やはり電車の外は暑い。それでも街中と比べると山々に囲まれ海に隣接している分まだマシに思える。


「とても落ち着いた街並みで素敵ね。雰囲気もいいし、どこか懐かしい感じがするわ。せっかくだしこの辺りを散策しない?」


氷依からそんな提案をしてくるなんて珍しい。よほどここが気に入ったらしい。


「あっちの陸橋から反対側まで渡れるみたいよ。せっかくだし高いところから街並みを眺めながら歩かない?」


そういって氷依は私の手を引く。


「そんなに急がなくても時間に余裕はあるし、景色は逃げないよ」

「...なんだかこれだと普段と立場が逆ね。少し癪だわ」


そういって不服そうにしながらも足取りは変わらず、どんどん階段を上っていく。


「下から眺めていただけだとわからなかったけど近くの商業施設すべてとこの道でつながっているのね。」


そうは言いながらも彼女は橋の上から見える海に視線が釘付けになっている。


「電車の中から見た一面海で人工物が目立たないような自然そのものの景色もいいけれど、造船所や船が浮いてるような文明と自然の調和がとれているような景色も素敵なものね。科学技術が発展する前はここ一体にも人工物がないただの海だったのかしら。そう考えると人間の力ってすごいわね」

「そうね、でもこのまま人の手が入り続けてしまうと人工物でいっぱいにいなってしまうのかな。それはそれで便利にはなるのだろうけどすごく寂しいね...」


「氷依、せっかくだし記念撮影していかない?私が撮ってあげるわ」

「ん-そうね。せっかくなら撮ってもらおうかしら」


 そういって陸橋の角に立つ。

 潮風に吹かれ揺らぐ髪は水面の反射光のようで美しい。瞳の色も相まってとても海が似合う女の子度と感じる。


「とるわよ~。はい、チーズ。」


彼女は微笑む。

シャッター音が風を切る。

時間が空間ごと切り取られ、保存される。


「綺麗に取れたかしら?」

「それはもうもちろん!男なら速惚れるレベルできれいな写真が撮れたわ!」

「言い過ぎよ。」

「ほんとだってー、一枚絵になりすぎてるもん。帰ったら現像して渡してあげるね。楽しみにしてて。

このまま降りて目的地まで海沿いを歩いて行こっか。」



「道が木で舗装されていていかにもお散歩ルートって感じね。素敵だわ」

「風も気持ちが良いしほんと最高ね!」

「私、いつかこの街に住みたいわ。」

「いいわね、のんびり腰を落ち着かせるには最適かもね。」

「いつか...ね。」


何か含みのある表情をする彼女。


「そういえば今日の目的地はどんなところなの?」

「かつての神様の一柱を祀っていたとこらしいわ。数十年に一度のみその姿を現すとされていたと文献に残っていたわ。神様が本当に定期的に姿を現していたんだとしたら何かありそうじゃない?」

「今回の旅も何事もなければいいのだけど。」

「まぁ観光地になっているくらいだから大丈夫だと思うわ!四季折々いろんな楽しみ方ができるそうよ。春には桜の名所として、夏には花火、秋は紅葉、冬には雪化粧 どれも一度は見てみたいわね」


 そういって二人は並んで歩みを進める。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

2話しか書いてない新参者ながら世の中にいる作家様たちはすごいなぁと痛感している今日この頃...。

コメントや感想、質問等をいただけると非常にうれしく、モチベーションにもなると思うので気軽に送っていただけると嬉しく思います。

探り探りやっていくことになると思われるためご迷惑をおかけすることも多々あるとは思いますが、次回もぜひよろしくお願いいたします。

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