まぁ落ち着け。野菜は逃げん。
『スープ。』
「オードブルの次は、スープだな」
「スープか! スープは知ってるぞ!」
いや当たり前だから。
「ハル! スープはどこで食えるんだ!」
「まぁ落ち着けって。すぐそこだからついてこいよ」
興奮気味のサラダさんをなだめながらスープのもとへ向かった。
校庭の隅。
そこに設置された水道の蛇口を捻り、後ろのサラダさんに声をかける。
「さぁサラダさん! 僕のおごりだからジャンジャン飲んでくれ!」
「……」
あれ。返事が無いぞ。
「おいどうした! 遠慮すんなって!」
「……なんの冗談だ」
「は? 冗談?」
サラダさんの言葉に首をかしげる。
「それは水だ!」
「いやスープだから」
「それは水だッ!」
「いや、違うって」
確かにこれを水と判断するヤツは沢山居るだろう。
無色透明な、ただの水。
しかし僕はそう思わない。
今まで数々の水道水を飲んできた僕だが、この水道水ほど清らかな水は飲んだことが無かった。
こんな素晴らしい水道水はただの水じゃない。そう、言うなれば一種のスープであると。
「……そう僕は思うんだ。だから、一口でいい。一口でいいから飲んでくれないか?」
「……ハル。わかった! 私は飲むぞ!」
流石サラダさん! 一瞬だが、確かに友情めいたものを感じたぞ!
と、少し感動しながら水道水を飲むサラダさんを見つめる。
「なんかサマになってんな」
実にワイルドだ。
「んぐんぐ……ぷはーっ」
「ど、どうだった?」
「……美味い!」
そりゃよかった。
『前菜。』
「さて、スープの次は野菜だな」
「そうだったのか!」
「どうだったかな。まぁ食えればなんでもいいんじゃね?」
「間違いないな!」
どうやら僕達とコース料理は一生縁がなさそうだ。
ちなみにスープの次は魚料理である。
「野菜はどこで食えるんだ!」
「まぁ落ち着け。野菜は逃げん」
またも興奮気味のサラダさんをなだめながら、野菜のもとへ向かった。
学校を出てすぐのところに大きな畑がある。
野菜を求めてやってきたのは、その大きな畑だった。
「コソ泥か! 望むところだ!」
「コソ泥? 違うな。そもそもこの畑はウチの学校のだから、少なくとも盗みではない」
我が曇底高校には野菜を育てる授業があり、この畑はその授業で使うためのものだ。
自然の素晴らしさを身につけるための授業。実に素晴らしい。
「ということで、今から食う野菜は僕自作の野菜だ」
「おぉ! 手料理だな!」
ちょっと違いますけど。
「これが僕の丹精込めて作った菜の花だ。ホラ、遠慮すんなよ?」
その辺にあった、じゃなくて自分の作った菜の花をサラダさんに手渡してやる。
「おいハル! このまま食うのか!」
「僕がなにか持ってるとでも?」
「それはない!」
「んなら、そのまま食うべし」
たまには生の野菜を食べるのもいいぞ。新鮮だしな。
なによりこの菜の花には学生の愛情がたっぷり詰まっているのだ。不味いわけがない。
「「いただきまーす!」」
菜の花をそのまま口に含む。
「……ぉう」
「んんっ!?」
二人揃って吐き出したのだった。




