おもしれー女暗躍編 3
「じゃあ、お二人も両思いだったんですね!!」
翌日の放課後。四人が集まった談話室に、リリアの声が響いた。
「リリア、声が大きいです」
「だって、よかったです! エレノア様、ずっとユリウス殿下のことがお好きだったんですよね?」
「なぜ知っている?」
「見ていればわかります!」
ユリウスがエレノアを見た。
「……リリアには、なぜかわかっていたようです」
アルフレッドは特に驚いた様子もなく、話を進めた。
「これで四人の希望は決まったわけだ。俺はリリアと、エレノアはユリウスと婚姻したい」
「ずいぶん簡単におっしゃいますね」
「希望の確認だ。実現が簡単だとは言っていない」
その実現のために集まったのだった。
「まずは、わたくしと殿下の婚約を解消しなければなりません」
エレノアとアルフレッドの婚約は、王家とヴァレンティス公爵家の結びつきを強めるために決められたものだ。
「お父様のお考えを確認する必要があります」
「でも、エレノア様がユリウス殿下と結婚するなら、王家との縁はなくならないんですよね?」
リリアに言われ、エレノアは頷いた。
「ええ。ですから、お父様を説得すること自体は、それほど難しくないかもしれません」
「僕からも話すよ」
ユリウスが当然のように言った。
昨日までなら、自分の父なのだからと一人で話をつけようとしていただろう。エレノアはそれに気づき、素直に頷いた。
ユリウスは少し嬉しそうに笑った。
「では、案外なんとかなりそうですね!」
「いや」
アルフレッドが否定した。
「問題はリリアだ。婚約を解消したあと、なぜ君を新たな婚約者に選ぶのか。その理由が必要になる」
「殿下が私を好きだから、では駄目なんでしょうか」
「駄目ではないでしょうが……」
エレノアが答えた。
「近頃は貴族にも恋愛結婚が増えておりますし、本人たちの希望は以前より尊重されるようになっています。ただ、殿下は王太子です。お二人が想い合っているというだけで、皆が納得するとは限りません」
リリアは難しい顔をしている。
アルフレッドが答えた。
「王太子妃としての資質を示すか、国に利益をもたらすような実績があれば、話は通しやすくなるだろう」
「なるほど。では、手柄を立てましょう!」
リリアは名案だとばかりに顔を上げた。
「何をするつもりだ?」
ユリウスに聞かれ、リリアは黙った。
手柄というものは、立てようと思って都合よく立てられるものではない。
「これまでリリアが殿下と調べていたことの中に、何か使えそうなものはありませんか?」
エレノアが尋ねると、リリアは考え込んだ。
「あの税金は、徴収に費用がかかりすぎていることがわかりましたけど、赤字ではありませんでしたし……」
「制度を変えるほどではなかったな」
アルフレッドが言う。
「第十二代国王が謝るのが苦手だったという話は?」
「たぶん当たってると思うんですけど、証明しても国の役には立ちません」
「そうでしょうね」
残るのは――。
「あ」
リリアが声を上げた。
「王宮の葡萄です。あれ、まだ途中でした」
王家では古くから葡萄を豊穣の象徴として使っている。けれど、王都周辺は葡萄の栽培に適した土地ではない。
「二百七十年ほど前に南部出身の王妃様が嫁いできて、そのころから王宮の葡萄の意匠が増えたところまでは調べたんです。でも、その王妃様が葡萄を持ち込んだという記録は見つからなくて」
「王宮の記録にもなかった」
アルフレッドも調べていたが、結局そこで止まっている。
「それ、もう少し調べてみませんか?」
「だが、王宮に葡萄の意匠がある理由がわかったところで、君の実績にはならないだろう」
「今のところは、です」
リリアは鞄からノートを取り出した。
「でも、まだ理由がわかってないんですよね。だったら、何が出てくるかもわかりません」
「では、調べてみましょう」
「はい!」
「ただし、何も出ない可能性もありますよ」
「そのときは、別の手柄を探します!」
「手柄を探す、という言い方も妙ですが」
リリアはもうノートを開いていた。
「まず、どこまで調べたか整理しますね。王妃様が嫁いできたのが二百七十年くらい前で、その少しあとから葡萄の意匠が増えて――」
四人は机を囲み、以前の調査記録を広げた。
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