↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役令嬢は、おもしれー女が好きな殿下をおもしれー女にお譲りして幸せになりたい!  作者: カワシロツカサ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/21

おもしれー女恋愛編 4

 舞踏会から数日後、リリアとエレノアは学院の女子生徒用の談話室にいた。


 最近では、放課後に二人で勉強することは日常になっていた。もっとも、今日の課題はすでに終わっている。リリアは出された菓子を食べながら、先日の舞踏会について話していた。


「それで、葡萄のこと、わかりました」

「ダンスの感想より先にそちらですか」

「だって気になってたんです」


 結局、葡萄を豊穣の象徴として使い始めた正確な経緯はわからなかった。ただ、二百七十年ほど前に南部出身の王妃が嫁いできて以降、王宮の装飾に葡萄が増えたということまでは突き止めたという。


「殿下が、普段は簡単に閲覧できない王宮の記録まで調べてくださったんです」

「まあ」


 ずいぶん熱心なことである。

 リリアは嬉しそうに紅茶を飲んだ。


「最近、殿下とよくお話ししているようですね」

「はい。昨日も、学院の池の魚は誰のものなのかって話をしました」

「なぜそのような話に?」

「池の魚を勝手に釣ったら窃盗になるのかなって思って」

「釣るおつもりなのですか?」

「いえ。気になっただけです」


 リリアは当然のように答えた。


「殿下は、王家の土地だから王家のものだって。でも、魚は勝手に泳いできたかもしれないじゃないですか」

「学院の池まで?」

「鳥が卵を運ぶこともあるらしいですよ」

「そういう問題ではありません」


 エレノアが指摘すると、リリアは笑った。


「楽しいのですね」


 何気なく言うと、リリアは菓子へ伸ばしかけた手を止めた。


「……はい。楽しいです」


 少し考えてから、もう一度言った。


「最近、殿下といるの、すごく楽しいです」

「それは何よりです」

「でも、変なんですよね」

「何がです?」


 リリアは菓子を皿へ戻した。


「前は、こう言えば殿下が喜ぶかなとか、こうしたら興味を持ってもらえるかなとか、ずっと考えてたんです。でも最近は、話したいことがありすぎて、考えるのを忘れちゃって」


 エレノアは微笑んだ。


「それでよろしいのですよ」


 リリアはしばらく考え込んだ。


「私、殿下に好きになってもらいたかったんです」

「存じています」


 リリアは気まずそうに紅茶を飲んだ。


「でも、なんというか……前とは違う気がするんです。殿下に会うと、昨日考えたことを話したくなるし、何かおもしろいものを見つけると、殿下ならどう思うかなって考えるし」


 そこで言葉を切り、リリアは自分の手元を見た。


「次に会うのが楽しみなんです」


 それを聞いて、エレノアにはようやくわかった。


「リリア。それは、あなたが殿下をお好きだということでは?」


 リリアが止まった。

 まばたきを一度して、二度して、それから見る見るうちに顔が赤くなる。


「でも、私、最初から殿下が好きで」

「ええ。そして、殿下に好かれたかったのでしょう?」


 リリアは口を閉じた。

 王太子に見初められたい。彼の婚約者になりたい。そのために興味を持たれたい。

 それと、アルフレッドと話したい、次に会いたいと思うことは、少し違う。


「……そうかも」


 リリアは両手で顔を覆った。


「どうしましょう、エレノア様」

「何がです?」

「本当に好きになっちゃいました」

「それは、よかったのではありませんか?」

「婚約者の前で言うことじゃないですよね?!」


 今さらである。

 リリアは指の隙間からエレノアを見た。


「エレノア様は、殿下のこと、お好きじゃないんですか?」

「とても大切に思っておりますよ」


 意外な答えだったのか、リリアが顔から手を下ろした。


「幼いころから一緒に育ちました。幸福でいてほしいと思っていますし、王として成功してほしいとも思います」

「じゃあ――」


 リリアは言いかけて黙った。


「わたくしは殿下を尊敬していますし、婚約がこの国にとって最善なら、その妻になるつもりでした。それを不幸だとも思っていません」


 エレノアは紅茶に目を落とした。


「殿下があなたと話しているとき、とても楽しそうでしょう?」


 リリアが目を瞬いた。


「わたくしは、ああして殿下が楽しそうにしているのを見るのも嬉しいのです。ですから、もし殿下もあなたを大切に思うようになるのなら……もしかすると、別の道があるのかもしれないと……最近は、そう考えることもあります」


 まだ、そうなると決まったわけではない。

 それでも、以前なら考えもしなかった未来だった。


 リリアはエレノアをじっと見た。


「エレノア様」

「何でしょう」

「もしかして、エレノア様にも好きな人がいるんですか?」


 エレノアの手が止まった。


「どうしてそう思うのです?」

「だって今の言い方、なんか――」


 リリアはそこで口を閉じた。

 窓の外へ視線が動く。

 エレノアもつられてそちらを見ると、中庭をユリウスが歩いていた。こちらに気づいたらしく、軽く手を上げる。

 エレノアも小さく手を振り返した。


 向かいの席から、妙な気配がした。


 リリアを見る。

 リリアは窓の外のユリウスを見たあと、エレノアを見て、もう一度ユリウスを見た。


「……あ」

「リリア」

「はい」

「お黙りなさい」

「はい」


 どうやら、リリアは余計なことまで気づくようになったらしい。

お読みいただき、ありがとうございます!

「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、リアクション・評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。