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鬼と月コラボ

 数日後。


 鬼宮鬼神の配信画面には、いつもとは違う名前が表示されていた。


月城ミナ


「……というわけで」


 鬼神がマイクに向かって話す。


「今日は月城ミナさんと一緒にゲームをやっていきます」


『よろしくお願いしまーす!』


 明るい声が返ってくる。


「よろしくお願いします」


『鬼神さん、やっとコラボできましたね!』


「そうですね。DMいただいてから結構早かったですけど」


『だって、ずっと気になってたんですよ!』


「俺のこと?」


『もちろん!』


 ミナが即答する。


『魔王杯見てたんですけど、普通に強すぎて』


「いやいや」


『いやいやじゃないですよ! 最後の判断とか本当に凄かったです』


「ありがとうございます」


『あと……』


「?」


『カナタさんの話も聞きました』


「……ああ」


 凛は少し嫌な予感がした。


『リアルだと可愛いんですよね?』


「……」


『しかもかっこいいんですよね?』


「カナタさん……」


『あはは!』


 ミナが笑う。


『すごく気になってます!』


「普通ですよ」


『絶対嘘!』


「本当に普通です」


『じゃあ今度オフでも――』


「それはまた機会があれば」


 凛がさらっと返す。


『あ、逃げた!』


「逃げてないです」


 コメント欄も盛り上がる。


『鬼神またリアルの話されてるw』


『カナタのせいでどんどん興味持たれてるな』


『鬼神のオフコラボ見たい』


「……カナタさん、余計なこと言いましたね」


『でも褒められてましたよ?』


「それは……まあ」


 少し照れたように笑う。


『あ、今絶対照れた!』


「照れてません」


『コメント! 鬼神さん今照れましたよね!?』


『照れた』


『絶対照れた』


「……ゲーム始めますよ」


『逃げたー!』


 笑い声が響く。



ゲーム開始


「ミナさん、右お願いします」


『了解!』


「敵一人います」


『見えた!』


「じゃあ俺が――」


 凛が一気に前へ出る。


 数秒後。


敵撃破。


『えっ』


「一人」


『はやっ!?』


「もう一人来ます」


『え!?』


 さらに一人。


 そして二人。


 凛は冷静に位置を変えながら、次々と敵を倒していく。


『ちょ、鬼神さん!?』


「はい?」


『本当に強いんだけど!』


「普通ですよ」


『それ魔王杯優勝者が言う台詞じゃない!』


 コメント欄が爆笑で埋まる。


『鬼神、通常運転』


『ミナ完全に置いていかれてるw』


『この二人相性いいな』


 試合が終わる。


 見事勝利。


『楽しかったー!』


「俺もです」


『またやりましょうね!』


「ぜひ」


『次はもっと強い人も呼びたいですね』


「それも面白そう」


『じゃあ次のコラボ、決まり!』


「まだ決まってないですよ」


『今決めました』


「……強引だな」


 凛は笑った。



配信終了後


 凛が配信を切る。


「……」


 静かになった部屋。


 凛は椅子にもたれた。


「コラボって、結構楽しいな」


 最初は一人で始めた配信活動。


 それが今では。


 魔王杯で知り合った人。


 カナタ。


 ひより。


 そして今回のミナ。


 少しずつ、一緒に遊べる相手が増えている。


 そのとき。


ピコン。


 スマホに通知。


 SNSだった。


月城ミナ


今日の鬼神さんとのコラボ、楽しかった!


また遊びたい!


 すぐに反応が増えていく。


『次も見たい!』


『鬼神×ミナもっとやって!』


『鬼神の交友関係広がりすぎw』


 凛は画面を見ながら笑う。


「……次は誰とやることになるんだろ」



一方、別の場所。


 星乃ひよりも、そのコラボ配信を見ていた。


「……」


 配信終了。


 ひよりは椅子に座ったまま、しばらく画面を見つめる。


「やっぱり……」


 ひよりは小さく呟いた。


「鬼神さん、楽しそうだな」


 最近。


 鬼神の名前を耳にする機会が本当に増えた。


 魔王杯。


 歌ってみた。


 カナタとのコラボ。


 そして今日のミナとのコラボ。


「私も……」


 ひよりは少し迷ってから。


「また一緒に配信したいな」


 そう呟いた。


 しかし。


 その日の学校で。


 ひよりが鬼神の話をしていた相手は――


 朝倉凛。


 そしてその凛こそ。


 今、ひよりが「また一緒に配信したい」と思っている鬼宮鬼神本人だった。


 ――二人の距離は。


 少しずつ。


 確実に近づいていた。

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