魔王杯
魔王杯当日。
大型配信イベント専用の待機ロビー。
そこには、すでに数多くのVTuberが集まっていた。
「うわ、緊張するんだけどこれ」
「去年より人多くない?」
「いや、空気重いって……」
軽口と緊張が入り混じる中。
「皆さん、準備はよろしいですか?」
スタッフの声が響く。
「はーい!」
「大丈夫です!」
「いつでもいけます!」
そして。
「鬼神さん」
「はい?」
「緊張してる?」
星乃ひよりが横から覗き込む。
「……ちょっとだけ」
「私もです」
「ひよりさんも?」
「だって魔王杯ですよ?」
ひよりが笑う。
「去年は“見る側”だったのに、今年は“出る側”ですからね」
「……確かに」
その会話に割り込む声。
「おいおい、二人とも固すぎ」
天城レオだった。
「レオさんは余裕そうですね」
「余裕なわけないだろ」
レオは肩をすくめる。
「でもな」
視線が鋭くなる。
「始まったら関係ない。勝つだけだ」
「……相変わらずですね」
そこへ別の声。
「ふふ、今年も熱そうだね」
小鳥遊ユナが笑う。
「鬼神ちゃん、噂通り緊張してる?」
「……まあ」
「大丈夫大丈夫! 私も最初ガチガチだったし!」
「ユナは今もう普通にうるさいけどな」
獅堂ガクがぼそっと言う。
「うるさいって何!?」
「事実」
「ひどい!」
周囲が少し笑う。
その空気の中。
静かに立つ影。
「……騒がしいな」
白鐘セナ。
「セナさん」
「鬼神」
短い視線。
「期待してる」
「……俺も」
それだけで終わる会話。
だが空気は少しだけ引き締まる。
────────
そして。
画面が切り替わる。
《魔王杯2026 開幕》
中央に現れる男。
「――集え」
魔城院暁。
「我が眷属たちよ」
「今年もこの舞台に立つことを歓迎する」
コメント欄が爆発する。
『魔王きたwww』
『今年も始まった』
『鬼神いるの熱すぎる』
暁は続ける。
「今年は特に面白い」
「新たな“鬼”がいる」
カメラが鬼神を映す。
「鬼宮鬼神」
「よろしくお願いします」
『新人じゃない雰囲気出てる』
『もう貫禄あるの草』
────────
チーム抽選
「では、チーム分けを行う」
暁が指を鳴らす。
────────
チームA
• 鬼宮鬼神
• 星乃ひより
• 小鳥遊ユナ
• 朝霧カナタ
「よっしゃあああ!」
ユナが叫ぶ。
「鬼神ちゃんと同じチーム!」
「よろしくお願いします」
カナタも軽く手を振る。
「頼りにしてる」
「……頑張る」
ひよりが小声で笑う。
「これは心強いですね」
────────
チームB
• 天城レオ
• 白鐘セナ
• 獅堂ガク
• 黒瀬レイ
「……強いな」
鬼神が呟く。
レオが笑う。
「鬼神」
「はい」
「決勝でな」
「……うん」
セナが小さく頷く。
「楽しみ」
ガクは一言。
「勝つ」
レイは軽く笑う。
「面白くなりそうじゃん」
────────
「最初の敗北」
「行きます!」
ユナの声。
「右来てる!」
カナタが叫ぶ。
「見えてる」
鬼神が撃つ。
敵一人。
「ナイス!」
ひよりがカバー。
順調に見えた。
だが。
「後ろ!」
「え?」
カナタが倒れる。
「ごめん!」
「大丈夫!」
鬼神が振り返る。
そこに――
「よぉ」
レオチーム。
「来たか……!」
セナが静かに撃つ。
ガクが前線を崩す。
レイが裏を取る。
「連携が……」
鬼神が呟く。
圧が違う。
そして。
撃破。
────────
『惜しい!』
『今のレオチーム強すぎる』
『連携えぐい』
────────
ひよりが笑う。
「でも、いい感じでしたよ」
「……うん」
鬼神は頷く。
「次は勝つ」
────────
「鬼の成長」
試合を重ねるごとに。
空気が変わる。
「ユナ、右カバー」
「了解!」
「カナタ、引いて」
「OK!」
「ひよりさん、3秒後に詰める」
「はい!」
『指示出してる鬼神かっこいい』
『完全に司令塔じゃん』
────────
そして。
「今!」
全員が動く。
一斉攻撃。
敵崩壊。
CHAMPION
「やったあああ!」
ユナが叫ぶ。
「チームで勝った!」
ひよりが笑う。
「いい連携でしたね」
鬼神は静かに息を吐く。
「……悪くない」
────────
第27話 「鬼と英雄」
準決勝。
レオチーム。
空気が変わる。
「鬼神」
レオが言う。
「今度は負けない」
「……俺も」
────────
撃ち合い。
鬼神とレオ。
同時に敵を落とす。
「そこ!」
「読んでる!」
そして。
相打ち。
────────
『うおおおおお!!』
『この二人やばい』
『名勝負すぎる』
────────
レオが笑う。
「やるじゃん」
「そっちこそ」
────────
「決勝」
決勝。
チームA vs チームB。
全員が本気。
「行くぞ」
レオ。
「勝つ」
セナ。
「面白くなってきた」
レイ。
「絶対勝つ!」
ユナ。
「落ち着いていきましょう」
ひより。
「……勝つ」
鬼神。
────────
激戦。
ユナ撃破。
カナタ撃破。
ひより撃破。
そして。
鬼神一人。
対。
レオ一人。
────────
「最後の一発」
「やっぱりな」
レオが笑う。
「ここだと思った」
「……俺も」
────────
撃ち合い。
HP僅差。
一発。
二発。
外れる。
そして。
「ここだ!」
レオが踏み込む。
鬼神が横へ。
「――そこ」
一発。
────────
CHAMPION
────────
「鬼宮鬼神という名前」
『鬼神優勝』
『魔王杯2026』
『伝説の1vs1』
────────
「やば……」
「鬼神10万いったぞ」
「新人じゃねえだろこれ」
レオが笑う。
「次は負けねぇ」
ひよりが泣き笑い。
「すごすぎますよ……」
ユナが叫ぶ。
「鬼神ちゃん最強!」
セナは一言。
「またやろう」
暁は満足げに。
「面白いものを見せてもらった」
────────
そして学校。
「凛!」
「ん?」
「この鬼神って人やばくない!?」
「……そう?」
「めっちゃ好きになった!」
「へぇ……」
(……それ俺なんだけどな)
────────
鬼宮鬼神という名前は。
もう一人の“世界”として。
確かに広がり始めていた。




