初コラボ
土曜日。
午後八時。
「…………」
朝倉凛は、PCの前に座っていた。
配信開始まで。
あと一分。
「……緊張するな」
今日。
初めて誰かとコラボする。
相手は。
StellaLive二期生。
登録者8.5万人。
星乃ひより。
「……よし」
マイクを確認。
ゲームを起動。
配信画面を確認。
そして。
「始めるか」
────────
午後八時
配信開始。
画面に二人のモデルが映る。
銀髪に黒い毛先。
二本の角。
クールな衣装。
鬼宮鬼神。
そして。
明るい雰囲気の少女。
星乃ひより。
「こんばんはー!」
『こんばんは!』
コメント欄が一気に流れる。
『きたあああ!』
『鬼神×ひより!!』
『待ってた』
『初コラボ楽しみ』
ひよりが笑う。
「今日は鬼神さんと初コラボです!」
「どうも、鬼宮鬼神です」
『なんか鬼神さん、緊張してません?』
「してない」
『してる』
「してないって」
『してますよね?』
「……ちょっとだけ」
『やっぱり!』
コメント欄が笑いで埋まる。
『鬼神かわいい』
『ひより強いw』
『もう距離縮まってる』
────────
「今日はFPSをやります」
『はい!』
「ルールはチーム戦」
『私たち二人で組みます!』
「負けたら……」
『罰ゲーム?』
「それは聞いてない」
『今決めましょう』
「嫌な予感しかしない」
『負けたら次回の配信で恥ずかしいセリフを言う』
「……」
凛が沈黙する。
「絶対勝つ」
『ふふっ』
ひよりが笑う。
『鬼神やる気満々で草』
────────
ゲーム開始。
「行きますよ」
『はい!』
キャラクターが走り出す。
最初は順調。
ひよりが後ろ。
鬼神が前。
「敵、右」
『右?』
「二人いる」
『え、どこ?』
「そこ」
『あっ、いた!』
銃声。
敵が一人倒れる。
『えっ、鬼神さん上手!』
「普通」
『普通じゃないですよ!』
「いや、これくらいは」
『じゃあ私も!』
ひよりが撃つ。
「……」
『……』
「ひよりさん」
『はい』
「弾、全部外れてます」
『言わないでください!』
コメント欄が爆笑。
『ひよりwww』
『鬼神の冷静なツッコミ』
『相性良すぎ』
────────
数分後。
敵チームとの交戦。
『鬼神さん! 後ろ!』
「分かってる!」
『えっ、分かってた!?』
「いるのは分かってた」
鬼神が振り返る。
敵を撃つ。
一人。
二人。
三人。
「……」
『…………』
ひよりが黙る。
「どうした?」
『鬼になってる』
「は?」
『さっきまで普通だったのに』
「ゲーム中だから」
『怖いです!』
「ひよりさんも撃って!」
『はい!』
ひよりが慌てて撃つ。
敵を一人倒す。
『やった!』
「ナイス」
『褒めてくれた!』
「一応ね」
『嬉しい!』
コメント欄。
『ひよりめっちゃ嬉しそう』
『鬼神のナイスが効いてるw』
────────
中盤。
二人の連携はどんどん良くなっていった。
「ひよりさん、左お願い」
『はい!』
「俺が右行く」
『了解!』
左右から挟み込む。
敵が混乱。
一人。
二人。
撃破。
『ナイスー!』
「ナイス」
『鬼神さん、私たち息ぴったりじゃないですか?』
「……確かに」
『ですよね!』
「初コラボとは思えない」
『私も思いました』
その言葉に。
凛は少しだけ笑った。
「……話しやすいからかな」
『私もです』
コメント欄がまた騒がしくなる。
『距離感どうなってんのw』
『初コラボとは思えん』
『てぇてぇ』
『この二人もっとコラボしてくれ』
────────
そして。
終盤。
「残り一チーム」
『勝てそう!』
「油断しないで」
『はい!』
二人で進む。
敵を発見。
「いた」
『どこ!?』
「正面」
『分かった!』
交戦。
ひよりが撃つ。
「ナイス!」
『やった!』
鬼神が撃つ。
敵が一人倒れる。
「残り一人」
『行けます!』
「一緒に行くぞ」
『はい!』
二人で突撃。
敵が出てくる。
「撃て!」
『はい!』
銃声。
画面に表示される。
WINNER
「…………」
『…………』
「勝った?」
『勝ったー!!』
ひよりが叫ぶ。
「やったな!」
『やりました!』
二人の声が重なる。
コメント欄が一気に流れる。
『神回』
『初コラボで勝利!』
『鬼神かっけえ』
『ひよりもナイス!』
『二人の相性良すぎる』
────────
ゲーム終了。
『楽しかったー!』
「俺も」
『またやりたいですね』
「……うん」
凛は少し考える。
「次は別のゲームでもいいかも」
『いいですね!』
「ひよりさん、ゲーム選んでいいよ」
『本当ですか!?』
「うん」
『じゃあ次は――』
ひよりが嬉しそうに話し始める。
そして。
そのまま雑談へ。
ゲームの話。
好きな食べ物。
最近ハマっているもの。
休日の過ごし方。
話しているうちに。
予定していた配信時間を少し過ぎていた。
「……もうこんな時間か」
『えっ、本当だ』
「そろそろ終わりますか」
『はい!』
最後に。
ひよりがカメラに向かって笑う。
『今日は鬼神さんと初コラボでした!』
「ありがとうございました」
『またコラボしましょうね!』
「もちろん」
『約束です!』
「約束」
────────
配信終了。
画面が暗くなる。
「…………」
凛は椅子にもたれた。
「……楽しかったな」
初コラボ。
思っていたよりずっと楽しかった。
そして。
妙に話しやすかった。
「……なんなんだろうな」
その理由は。
まだ分からない。
────────
一方。
ひよりも。
「……楽しかった」
笑っていた。
「鬼神さん、やっぱり面白い人だなぁ」
そして。
配信終了後。
SNSを開く。
通知が止まらない。
『鬼神×ひより最高』
『またコラボして』
『二人の空気感好き』
『鬼神さん、ひよりと相性良すぎ』
「…………」
ひよりは嬉しそうに笑う。
「またやりたいな」
────────
そして翌朝。
凛のスマホ。
通知。
「…………?」
画面を見る。
登録者数。
3,200人
だったはずが。
5,700人。
「…………」
「え?」
凛は目を見開いた。
さらに。
SNSのフォロワー。
通知。
コメント。
切り抜き。
そして。
ランキング入り。
「……嘘だろ」
初コラボをきっかけに。
鬼宮鬼神の名前は。
一気に。
広がり始めていた。




