本気
「……残り三チーム!」
ゲーム画面を見ながら、ひよりは息を呑んだ。
最初は楽しかった。
先輩たちと喋りながらゲームをして。
同期と笑って。
コメント欄を見ながら騒いで。
でも。
ここまで来ると。
「……勝ちたい」
『お?』
ミナトが反応する。
「勝ちたいです!」
『いいね』
レイが笑う。
『ひより、さっきより目が本気になってる』
「だって……!」
ひよりは画面を見る。
「せっかくみんなでやってるんだから!」
『その意気だよ、ひより!』
ルナも応援する。
『私はもう倒れてるけど!』
「ルナ先輩は復活できないんですか!?」
『できません!』
「じゃあ応援してください!」
『任せて!』
コメント欄が盛り上がる。
『ルナ応援団長w』
『ひより頑張れ!』
『ミナトが完全に司令塔』
⸻
その頃。
Bチーム。
「……敵、来ますわよ」
アリスが冷静に告げる。
『え、どこ?』
こはくが辺りを見回す。
『右』
ましろが答える。
『あ、本当だ』
「こはくさん、前に出すぎです」
『大丈夫大丈夫!』
「それ、毎回言ってますわよね?」
『大丈夫!』
次の瞬間。
「うわあああ!」
こはくの叫び。
『やられた!』
「だから言ったでしょう!」
『ごめーん!』
コメント欄が笑いで埋まる。
『こはく草』
『アリスの胃が心配』
『ましろママ頑張って』
⸻
しかし。
Bチームも負けてはいない。
アリスが指示を出す。
「ましろさん、左をお願いします」
『分かった』
「こはくさんは――」
『もう復活した!』
「まだ話してる途中ですわ!」
こはくが突撃。
敵を一人倒す。
『ほら!』
「……結果オーライですわね」
ましろが笑う。
『でしょ?』
アリスはため息をつきながらも笑っていた。
「このチーム……本当に自由ですわね」
⸻
そして。
Aチーム。
「敵、二人」
ミナトが呟く。
「二人……」
ひよりの手に力が入る。
『レイ、左』
『了解』
レイが移動。
『ひよりはここで待って』
「分かった」
『絶対に出ないで』
「うん」
しばらく沈黙。
銃声。
「……!」
ひよりが身を縮める。
『一人倒した』
レイの声。
『残り一人』
「……!」
ひよりは敵を探す。
そして。
見つけた。
「いた!」
『ひより、撃って!』
「はい!」
発砲。
敵のHPが減る。
もう一発。
「倒れて!」
最後の一発。
敵が倒れる。
「やった!」
『ナイス!』
『ひより、めちゃくちゃ上手くなってる』
「本当!?」
『うん』
ミナトが珍しく少しだけ笑った。
「やった……!」
⸻
残り二チーム。
AとB。
「……まさかここまで来るとは」
アリスが笑う。
『最初、ルナ先輩が一番最初にやられた時はどうなるかと思った』
レイが言う。
『ひどい!』
ルナが叫ぶ。
「でも、まだ勝負は終わってません!」
ひよりが言う。
『お』
こはくが反応する。
『ひより、熱くなってる』
「勝ちたいから!」
『かわいい』
「えっ」
『ひよりちゃん頑張ってー!』
こはくが笑う。
『私たちも負けないよ!』
「負けません!」
画面越しに。
8人の声が響く。
⸻
最終決戦。
両チームが同じエリアへ入る。
「……来た」
ミナト。
「……」
ひよりは息を止める。
『ひより』
「はい」
『私が合図したら撃って』
「分かった」
『レイ、準備』
『OK』
数秒。
そして。
『今!』
「――っ!」
発砲。
レイも撃つ。
ミナトも撃つ。
敵側からも銃声。
『うわっ!』
こはくが叫ぶ。
『ひより! 右!』
「右!?」
敵が飛び出してくる。
「――っ!」
ひよりは反射的に銃を向けた。
撃つ。
一発。
二発。
三発。
「倒れろぉ!」
敵が倒れる。
『ナイス!』
ミナトが叫ぶ。
「やった!」
しかし。
その直後。
『ミナト、やられた!』
「えっ!?」
Aチームの司令塔が倒れる。
「ミナト!」
『ごめん』
「大丈夫!」
ひよりは銃を握り直す。
残っているのは。
ひよりとレイ。
そして。
Bチーム。
「……二人」
アリスが呟く。
『こっちは三人』
ましろ。
『勝てるよ』
こはく。
『行こう!』
ひよりは緊張していた。
でも。
不思議と。
怖くなかった。
楽しい。
勝ちたい。
それだけ。
「レイさん」
『何?』
「一緒に行こう」
『もちろん』
⸻
最後の交戦。
銃声が響く。
画面が揺れる。
「――今!」
ひよりが飛び出す。
『ひより!』
レイが援護。
一人。
二人。
敵が倒れていく。
そして。
最後の一人。
「……!」
ひよりと目が合う。
撃つ。
相手も撃つ。
HPが減る。
「お願い!」
もう一発。
敵が倒れる。
画面に表示された。
WINNER
「…………」
数秒。
「……勝った?」
『勝った!』
「勝ったぁぁぁ!」
ひよりが叫ぶ。
『やったー!』
『ひよりナイス!』
『すごい!』
8人の声が重なる。
コメント欄も一気に流れる。
『神回』
『ひより覚醒してて草』
『ミナトの指示が神』
『全員面白すぎる』
『次もやってくれ!』
⸻
ゲーム終了。
「いやー、楽しかった!」
ルナが笑う。
『次は私が最後まで生き残るから!』
『それ毎回言ってる』
レイが突っ込む。
『ひよりちゃん、すごかったね』
ましろが褒める。
「ありがとうございます!」
『最後のひより、めっちゃかっこよかった』
こはくも言う。
「本当?」
『うん!』
ひよりは嬉しくなる。
すると。
『そういえば』
アリスが口を開いた。
『最近、個人勢で話題になってる子がいるでしょう?』
「……?」
『鬼宮鬼神さん』
「!」
ひよりの反応が一瞬早くなる。
『ああ、あの子ね』
ルナも知っている。
『最近切り抜き回ってるよね』
『FPS上手い人』
ミナトも続ける。
「うん!」
ひよりが少し嬉しそうに答える。
「私も見ました!」
『ひより、好きそうだもんね』
「えっ」
『え?』
レイが笑う。
『この前も話してたじゃん』
「そ、それは!」
『コラボしたいとか言ってなかった?』
「……言ったけど!」
コメント欄が一気に流れる。
『鬼神コラボくる!?』
『StellaLive×鬼神見たい』
『ひよりちゃん鬼神好きすぎw』
「まだ何も決まってませんから!」
ひよりが慌てる。
『でも面白そう』
ルナが言う。
『個人勢とのコラボって、あんまりやったことないし』
『確かに』
アリスも興味を示す。
『今後、そういう企画もありかもしれませんわね』
ひよりの胸が少しだけ高鳴る。
「……いつか」
小さく呟く。
「話してみたいな」
まだ。
名前しか知らない。
まだ。
直接話したこともない。
それでも。
少しずつ。
距離は近づいていた。
⸻
その夜。
配信終了後。
ひよりはスマホを見ながら、鬼宮鬼神のSNSを開いた。
フォロワーは。
また増えている。
「……すごいな」
数日前より。
明らかに勢いがある。
「本当に人気になってきてる」
そして。
その頃。
別の場所でも。
凛がスマホを見ていた。
「……StellaLive、全員コラボか」
おすすめに流れてきた切り抜き。
鬼神として最近少し注目されるようになってから。
他のVTuberの配信も目に入るようになった。
「……ひよりも出てる」
画面の中で笑う星乃ひより。
凛は何気なく見ていた。




