饑神
補足、饑神は現代で言うところの、糖分不足からくるハンガーノック(ロードバイク用語)や、舎利バテ(登山用語)を指す様です。
饑神とは?
その前に、何故?鬼の酔い処に、不知火拳志郎、侍園秋子、最勝寺花瀬が集まったかを話しよう。
花瀬が不知火に仕事の以来をしたのが、3日前の朝だった。
「不知火、お前に頼みたい案件がある。都合はどうだ」
「久しぶりじゃないか博士、もう忘れられたかと思ったぜ。それで、今回は何をすればいい?」
「それは、こっちに来てから話そう。その前に受けるか返事を聞こう」
「仕事の中身が分からず受けろと…」
「駄目なら、他に回すだけだが…」
不知火は知っている。
最勝寺花瀬と言う人間は、出来ない仕事は依頼しない。
不知火に出来ると踏んでいるから、今回の依頼をしていると…。
「報酬は?」
「前金で50万、成功報酬として150万、合わせて200万円の依頼になる」
この金額の案件となると、一筋縄ではいかない案件の様だが、不知火は二つ返事で了承する。
「良いぜ博士、話を進めてくれ」
「そうか。話は九州支部に通しておく。今回は特別に仕度金を用意した。そこで受け取ってくれ」
そう言うと、電話は切れた。
「久しぶりのデカい仕事だ。今日は奇麗どころのいる店に決定だな」
自堕落な只のおっさん不知火は、祓い屋九州支部に意気揚々と向かった。
日曜日の昼下がり、鬼の酔い処は昼営業を終えたところだった。
そこに1本の電話が入る。
「はい、鬼の酔い処です。あー博士、遊悟ですか。少々お待ちを」
電話は最勝寺花瀬からだった。
「はい、遊悟です」
「最勝寺だが、近いうちに、剣呑な覇気を纏った只のおっさんが、鬼の酔い処に現れるはずだ。来たら一報くれないか」
特徴の説明は一切無いが、遊悟は額に左手の人差し指と中指を数秒あてると、全てを理解する。
「まだ、はっきりしないけど博士の言う人、明日か明後日には来ると思います」
「そう、じゃあよろしくね。遊悟君」
それだけ言うと、花瀬は電話を切った。
「博士の能力、相変わらず凄いなぁ。あ、マユさんが、いきなり警戒しそうだから言わないでおこっと」
自分で拵えた賄い飯を、食べながらマユに教えない選択をする遊悟だった。
そして、今この状況に至る。
「電話が、あったから来てみれば、此奴がいるし…分かったいたら、絶対来なかったです」
愚痴りながらも、ビールを呷り山盛りの焼き鳥を頬張る秋子だった。
「まぁそう言うな秋子。こうでもしないと絶対来ないのが分かっていたからな」
花瀬も冷酒に変えて、焼き秋刀魚と一緒に、手酌で冷酒を静かに呷る。
「それで博士、あの不知火拳志郎で無ければならない理由って何ですか?」
饑神を討伐出来る祓い屋は、少なくはあるが他にも数人いる。
その一人は、八ッ坂標だが、今回は都合が悪るかったようだ。
「奴は、既に十五年前、饑神を討伐った事がある。それに朱鳥の事もあるしな」
「朱鳥ですか…あぁ、能力の相性が良いと?」
朱鳥の能力は百眼、そして不知火の能力は百耳『壁に耳あり、障子に眼あり』能力の相性は申し分ない。
しかし、…だ。
「不知火に朱鳥を当てるのは、危険じゃないですか?」
不知火拳志郎は、金とギャンブルと女に堕落しなく、朱鳥が襲われないとも限らない。
そんな男に朱鳥がボロボロにされるのを、指を咥えて見過ごす訳にはいかない。
「いや、そこは心配ないだろう」
「あんな男でも仕事だけは、きっちりやる男ですが、理由をお聞かせ下さい」
花瀬は、少しだけ顎に手を当て思考を巡らせた。
「奴は耳がいい。聞かれるとも限らんので、ここでは控えよう。時期に分かる」
「まぁ博士が、そう言うなら追求はしませんが…時期に分かる…か」
納得はしていない様子の秋子ではあったが、この小さな体の何処に、これだけの量のビールと焼き鳥が、入っていくのかと思う程の食いっぷりで、口一杯詰め込んだ焼き鳥と一緒に、この話を咀嚼しビールで流し込み、話を饑神へと移した。
「それで博士、饑神は何処に出没したんですか?」
「玉造公園だ」
「えっ?奥深い山中や渓谷では無く公園…ですか」
「あぁ、そうだ」
玉造公園は住宅街の、ほぼ真ん中にある様な静かな公園だ。
そんな場所に饑神が出現する事が、秋子には疑問だった。
諸説あるが饑神は、山で亡くなった者の亡霊や山神だと言われている。
故に、主に山中で憑れるのが一般的だ。
どんなに屈強な男でも、ひとたび饑神に魅入られると、体に力が入らなくなり動けなくなる。
対処法ある。
昼飯を全部食べずに残しておく事。
饑神に憑れたら、残した昼飯を食って早々に山を離れる事で回避出来るが、饑神が消えた訳では無い。
そのまま山に残ってしまった場合、次は確実に取り殺されるのだ。
ミイラの様に、干涸らびた姿となって…。
それが今回は、公園の様な公共施設で饑神に憑依れたとなれば、何か只事ではない事が起きている可能性もある。
「公園での変死体と言う事もあり、警察も事故、他殺の線で捜査したが、どうも怪異絡みでは?と言う事で吾潟君から以来があり調査の結果、饑神と判明した」
今回は祓い屋調査班が、玉造公園の調査と遺体の様子から饑神と結論付けた。
「本当に市街地の公園に、饑神が現れたんですか?」
「そこなんだ。饑神単体で人の領域に出で来るのは、どう考えても無理がある。第三者の関与が疑われる訳だが、それが怪異なのか人間なのかは、今のところは不明だ」
そこへ、一本の電話がかかって来た。
「どうした不知火…あぁ、金か。仕度金と前金50万は渡しただろう」
「流石、博士話が早い。実は一本50万の酒だったらしく足りないだ。成功報酬前借り出来ねぇか」
「自業自得だ。自力で何とかしろ」
そう言い放ちスマホの通話を終了しようとした時だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ俺は耳がいいんだ。この店は、間違い無く絡んでいるぜ」
花瀬は寸前で指を止めた。
「…嘘じゃ無いだろうな」
「博士も来れば、分かる事だ。だから今回はな…」
皆まで言わずとも分かるだろうと、不知火は言葉を止める。
「分かった。成功報酬から、差し引いておく」
「えーっ、経費扱いには、出来ないのかい博士」
「馬鹿を言うな。しっかり楽しんだろう。金を出すだけ有難いと思え。で、店の場所と名は」
「恋慕通りの、サンクチュアリビル、禁断のアリスと言う店だ」
「分かった。今から向かおう」
「サンクチュアリ…聖域か。ふざけた名のビルだ」
不知火との通話を終えると、続けて電話をする。
「あ、岩さん、突然で済まないが、頼まれてくれないか」
岩神龍彦、通称ガンさんは所謂、興信所兼請負人の頼まれ屋だ。
「おや、最勝寺さんだね。突然でも対応可能なのが岩神調査人材派遣社です。何時でも対応可能ですよ。今回はどんな用向きです?」
「恋慕通りにある、禁断のアリスに潜入調査をお願いしたい」
「お安い御用ですよ。まずは私が、ご一緒しましょう」
「よろしく頼む。では恋慕通り西口で30分後で大丈夫だろうか?」
「問題ないですよ。では、後ほど」
電話を切ると、花瀬と秋子は恋慕通りへと向かった。
キャラ設定第二弾
不知火拳志郎
178cm、62kg、かなりの痩せ型
能力、地獄耳(百耳)+α
侍園秋子
153cm、53kgらしい、長めのショートボブ
能力、十八羅漢刀術(柔剣)




