夢の続き
マイペースで、ぼちぼちやってます。
高天原朱鳥の夢の話です。
恋愛要素、多分ありません。
「おかしいなぁ。八ッ坂さんと、ここで待ち合わせだったよね…私、間違えたかな?」
とある田舎のバス停前で、待ち合わせのはずだったが、いくら待っても八ッ坂標は来なかった。
「仕方ない。歩いて先に行こう」
高天原朱鳥は、前にも来た事のある道を一人歩き始める。
しばらく歩くと、小さな畑で作業する地元住民と思われる二人の男性が現れた。
「あの人達に訊いてみよう。すいません道を教えて下さい」
二人の男性も、こちらに気付いたらしく立ち上がると、朱鳥に向かって軽く会釈する。
「こんにちは、どちらに行くんです?」
何処に行くかと訊かれて、場所を伝えようしたが、何処に行きたかったのか思い出せない。
(あれ…何処に行くんだっけ?)
声を掛けた手前、場所を忘れましたとも言い出せず何をしているか訊いてみる。
「何をされているんですか」
「あぁ、花壇の手入れですよ。この学校は、来年で廃校になるんです」
朱鳥は、言われて始めて目の前の、木造二階建て校舎に気付いた。
「今まで、お世話になった学校に、感謝の意味を込めて綺麗にしようと思いまして、手入れをしている次第です」
シルバーグレーの髪を綺麗にオールバックにした初老の紳士が話す。
「良かったら、校舎の中をご案内しましょう。きっと、お探しの場所が見つかるかも知れませんよ」
もう一人の、スーツに蝶ネクタイを締めた刈り上げの男性が進言してきた。
「そうですね。では、お願いします」
朱鳥は、スーツの男性に言われるがまま、校舎の中に入っていった。
導かれるままに、ここにいるのが、まるで当たり前かの様に、朱鳥はスーツの男性の後ろを着いて歩く。
「貴女がお探しの場所は、これではありませんか?」
指差す先には、如何にも古そうなアンティークのランプが置かれた小さな部屋があった。
「いえ、違うと思います」
「そうですか。では次に行きましょう」
スーツの男性は、また歩き始めた。
「高天原君、ここにいたのか」
声のする方を見ると、そこには八ッ坂標が立っていた。
「八ッ坂さん、探しましたよ。待ち合わせ場所に来ないから、どうしようと思ってました」
「何を言ってるんだい。ここが待ち合わせ場所だよ」
(ここだったかな?)
「すみません。間違えたみたいです」
今いるのは、下駄箱が立ち並ぶ校舎の入り口だった。
しばらく、廊下を歩いて階段まで来たところで、黒い影が横切る。
「今、何か通りましたよ。八ッ坂さん、あれ?八ッ坂さんが、またいなくなった」
ついさっき逢ったばかりの八ッ坂では無く、スーツの男性が、こっちを見ていた。
「どうされましたか?」
「いえ、今何か通った様な…私、ちょっと見て来ます」
影の消えた先には教室があった。
「ここに入ったのかな?」
教室の扉を、恐る恐る開けて中を覗き込むと、そこにあったのは幾つかの楽器だった。
楽器と言っても、全てが玩具サイズの小さな物ばかりで、ピアノ、トランペット、トロンボーン、サクソホン、フルートにティンパニーもあった。
「音楽室?それにしては、楽器のサイズがミニチュアだなぁ」
一歩、教室に足を踏み入れた時だった。
それぞれの楽器達から手足が生えて、一斉に逃げ出した。
「えっ!何何何?どう言う事?」
楽器達の消えた教室から、ピアノの音が聞こえる。
「この曲は…聴いた事が、カンパネラだったかな?…あぁ何だろう。眠くなって…きた」
朱鳥は、そのまま倒れると深い眠りへと入った。
目が覚めた。
時間を確認する為、手に取ったスマホは1時35分だった。
朱鳥は小学生の頃、良く行っていた近くのショッピングモール1階の、中央広場にあったストリートピアノを思い出していた。
何故、あのピアノの事を思い出したのか深くは考えなかった。
家以外で、唯一ピアノのあった中央広場だけが、霊や怪異が近付いて来ない朱鳥にとって、安心して外出が出来る場所だった。
その当時の流行した曲から童謡にクラッシックと、たくさんの人が、たくさんの曲を思い思いに弾いていた。
音楽には悪霊を祓う力がある。
今なら分かるが、当時は何故、ここに霊や怪異がいないのか考えた事はなかった。
あの時、ピアノを習っていたら霊や怪異に怯える日々が、平和な日常が少しは、あったのかな?と思うところはあるが、ピアノ教室に行くまでの道程が怖くて、とても一人で行くなんて無理だった。
「あぁ、そうだ。穴の中に引き込まれそうになって、怖くて寝込んだのか。ハハハ」
母親にピアノ習いたいと無料体験後、月謝まで払ったのに、ピアノ教室初日に、霊に腕を掴まれて家まで逃げ帰ったのだった。
「結局、あのあと学校にも殆ど行けなくなったんだよね…そう言えば、あの曲何だったかな」
日曜日の午前10時、同じ人が座り、同じ曲を1曲だけ弾いていたショッピングモールのストリートピアノ。
あの日も同じ様に、その曲が流れていた。
「お嬢ちゃん、この曲の時は何時もいるね。この曲が好きなのかい」
声のした方向を見上げると、優しそうな目をした蝶ネクタイにスーツの老紳士が立っていた。
「うん、とっても好き。この曲は何て言う曲か知ってますか」
「そうかい。この曲はラ・カンパネラと言う曲だよ」
「ふ~ん、何でカンパネラって言うの?」
振り向くと、もうそこに老紳士の姿はなかった。
ただ、心地よいピアノの響きで、ラ・カンパネラが奏でられていた。
朱鳥は、バス停の前に立っている。
「朱鳥こっちだ。現場に行くぞ」
振り向くと八ッ坂標が立っていた。
(八ッ坂さんに、呼び捨てにされたぁ。しかも下の名前で、でも悪い気はしないなぁ…むしろ嬉しいくらいかも)
朱鳥は標の傍に駆け寄ると、標の左腕を掴み腕を組んだ。
「私の事、朱鳥って呼びましたよね。とても嬉しいんですが、仕事中は高天原君って呼んで貰った方が、みんなに勘違いされないかなって」
すると、標は不思議そうに朱鳥を見ながら、こう応える
た。
「何を言っているんだ朱鳥?僕達は結婚したじゃないか。むしろ高天原君と呼ぶ方が不自然だと思うけど」
(あぁ、そうか私達、そうだった結婚したんだ)
朱鳥は、標と見つめ合う。
少しずつ近付く標の顔に、朱鳥は目を閉じた。
(起きて、早く!寝てちゃダメだ)
朱鳥は、聞き覚えの無い叫び声で、目が覚醒めた。
目覚めると、スマホを手に取り画面を覗く。
「まだ、4時56分だよ。あぁ眠いけど、二度寝したら起きられそうにないな」
仕方なく起き上がる朱鳥は、目を擦りながら、何度も欠伸をする。
「何だろう?凄く楽しい夢を見ていた気がするんだけど…う~ん、思い出せない」
夢から目覚めた朱鳥は、記憶の無い夢の幸福感で頬を緩ませると、自然と笑顔が溢れた。
「八ッ坂さん、今頃何してるかな」
そして、八ッ坂標を思い出しながら、何度目かの欠伸と共に、ベットから這い出した。
少し、キャラ設定してみました。
八ッ坂標
身長176cm、やせ型
能力、神鬼模倣
高天原朱鳥
身長163cm、眼鏡、セミロングのストレートヘア、勤務中は、ポニーテール多め
能力、百眼




