008 森の西の町(5)
森の西の町に、馬に乗り赴く一隊がいた。
それはマルスが鳥を使って連絡していた相手だった。
町の門に近づいたその時、サンリが窓を破壊して地面に激突する音が響いた。
「なんだ!」
隊の一人が叫ぶと、隊長らしき人物が言った。
「急ぐぞ!」
「ハッ」
一隊は馬を駆って急いだ。
◆◇◆◇
ヨハンはサンリと対決していた。
既に何回か致命傷と思われる斬撃を与えていたが、サンリの身体を覆う闇の魔力が威力を吸収しているのか、効いていないようだった。
「クソ、あれをなんとかしないと……」
サンリは身に纏う魔力を、ムチのようにして攻撃していた。
その攻撃を剣で受け流していたが、左腕がまた麻痺してきた。
「加勢します!」
領主の兵士数人が援助に来たが、サンリの標的になった。
「うかつに近づくな!」
ヨハンが言うより早く、サンリのムチが兵士を襲った。
ヨハンが一人の兵士をかばって、ムチの攻撃を受けた時、左腕が動かなくなった。
(やられる……)
ヨハンは次の攻撃を防ぎきれないと思った。
それでもムチの攻撃を両手で剣を握り、受け止めた。
その時。
左腕から全身に電流が流れるような感じがして、ムチを剣で跳ね返した。
(これは……)
左腕が動く、いや逆に以前より力が増している感じがする。
全身に力がみなぎるような感覚がした。
ヨハンは試しに左腕だけで剣を握り、サンリを攻撃した。
その威力でサンリは吹き飛び、サンリは壁に当たってめり込んだ。
ヨハンは不思議に思っていると、マルスがレイラを抱えてやってきた。
サンリがマルス達の方に近づいてくる。
マルスはレイラを下ろしながら言う。
「ヨハン、みんなであいつを倒しましょう、腕は?」
「大丈夫だ、マルス少し時間を稼いでくれればあいつを倒す技を出すぜ!」
「了解です!」
町は領主の館で戦闘が起こっているので騒然となっていた。
町の警備がきちんと機能していないようだった。
馬に乗る一隊は、町の門から門番を無視して入り、騒ぎの方に向かった。
サンリはムチを四方から出して攻撃していた。
マルスは一人でその攻撃の防御に徹していた。
ヨハンは集中して闘気を溜めていた。
ヨハンの体が闘気に包まれていった。
レイラも魔法の準備をしていた。
マルスの防御も限界になってきた時、ヨハンがマルスを見てうなずく。
レイラもマルスに目で合図をした。
マルスは縮地によってサンリに近づき、すり抜けざまにサンリの足を斬った。
サンリの動きが止まる。そこにヨハンが技を放った。
「無双一切斬」
無双一斬の連続技だった。
いつもは3回もするとバテてしまうのだが、この時は違った。
(……3、4、5)
ヨハンの一撃、一撃がサンリの闇の魔力を削っていく。
(6、7)
7回目を放とうとしたとき、バキンと剣が折れてしまった。
剣の方が威力に耐えられなかった。
しかし、それまでの攻撃でサンリは膝から崩れ落ちた。
「レイラ!」
マルスが言うと、レイラが魔法を唱える。
「闇払いの魔法!」
レイラの魔法がサンリに命中した。するとサンリはうめきながら苦しみだした。
サンリの体から闇の魔力が放出されていった。
それは徐々に多くなっていった。
「なんだ、これは!」
ヨハンが叫ぶと、マルスが言った。
「いけない、離れるんです!」
マルスはレイラを抱えて、サンリから離れた。ヨハンも後を追う。
サンリは体が爆発したように、闇の魔力を放出した。
火事の黒煙のように大量に噴き出し空に上がっていった。
それは、マルスだけでなく辺り一面のものを圧倒した。
レイラはマルスに抱きついていた。
サンリの体から魔力の放出が収まりつつある時、馬に乗った一隊が現れた。
その隊長は女性で名をモニカという。
モニカは勇者養成所の講師であり、マルスの教育もしていた。
マルスにこの町へ行くよう指令したのも彼女で、アルバス機関の実働部隊の隊長もしていた。
モニカは一目見て、状況を理解した。
マルスにも一瞥しただけで、館にいる連中に声高に叫んだ。
「我々は、アルバス機関の者だ。非常事態だ。今からこの町は我々アルバス機関が管理する」
それを聞いて、マルスは安堵した。
それからのモニカの処理は的確であった。
人を指揮してサンリの確保、犠牲者の保護と治療を優先した。
サンリは闇の魔力の放出後、人間の姿に戻っていたが、精神がまともでなくなっていた。




