006 森の西の町(3)
「何があったか話してくれる?」
マルスがレイラに尋ねた。
レイラは話した。
自分はこの教会で神父の手伝いをしていた。
ある日、神父が何者かに連れていかれた。
自分は隠れてその様子を見ていたが、その時に助けに行けなかった自分を悔やんでいた。
先程はマルス達を、その仲間だと思い攻撃してしまったという。
騒ぎを聞きつけたのか、誰かがやってくる足音が聞こえた。
中年の女性だった。
彼女はレイラを見つけると、安堵した様子で話した。
「良かった、レイラ無事だったのね。騒ぎがあったから、何事かと思って……」
「私達は……」
マルスが自ら名乗ろうと思い話し出すと、女性が言葉を遮った。
「勇者様ね、町で見かけたわ。この教会を調べに来たの?」
彼女は名前をサラといい、教会に併設されている孤児院の保母をしていると言った。
サラとレイラは、その孤児院の方に戻るというので、マルス達もそちらに行って話をすることになった。
孤児院に行くと、子供達が待ち構えていた。
サラもレイラも、子供達に好かれているみたいだった。
レイラは子供達を寝かしつけに行ったので、サラから話を聞いた。
なんでも、僧侶の格好をした者が、領主の館を出入りしていたらしい。
その頃から、領主が姿を見せなくなり、圧政を敷き始めた。
教会の神父は、そのことをかなり危惧していた。
神父の名前はニコラスといい、よくできた人で教会に併設して孤児院を設立して、身寄りのない子供達の世話をしていた。
レイラもその孤児院の出身で、孤児院で子供達の世話をしつつ、教会の仕事も手伝っていた。
レイラは神父から魔法も教わっていた。
神父は一度、領主のもとへ直談判に赴いたが、憔悴しきって帰ってきたらしい。
その神父がいなくなり、誰に相談したらいいか分からずに、思案していたところに、あなた達が現れたとサラは話した。
「よく話してくれました。あとは私達に任せてください」
マルスが言ったところに、寝かしつけが終わったのかレイラが戻ってきた。
彼女は魔導書を持っていた。
あるページを開いて、マルスに見せた。
マルスはそのページの魔法を見て驚いてレイラに聞いた。
「レイラ、この魔法を使えるの?」
レイラはうなずきながら、答えた。
「し、神父様に教わった……」
マルスはレイラがその魔法を使えることにも驚いたが、自分がこの町に着いてからの疑惑が確信に変わった。
◆◇◆◇
その晩、マルス達は孤児院の開いている部屋に泊めてもらった。
早朝、マルスは孤児院の外の物音で目を覚ました。
起きて玄関の方に行ってみると、サラが起きていて、窓から外の様子をうかがっていた。
マルスも窓を見ると、領主の兵士達が集まっていた。
「あなた達を探しに来たのでしょうか?」
サラが問いかける。
「そうかもしれませんが、違うような気がします」
マルスが答えたとき、ヨハンとレイラもやってきた。
「子供達を起こして、一つの部屋に待機させてください。いざとなれば戦闘になるかもしれません」
マルスが言う。
「へえー……」
ヨハンは、寝ぼけまなこで答えながら子供部屋に向かった。
その時、乱暴に玄関のドアをたたく音がした。
サラが対応する。
「何ですか、こんな朝早くに!」
「領主様のご命令だ、魔法を使える者を連れてこいとのことだ」
「は!」
「ここに、魔法を使える少女がいるのはわかっている。連れてきてもらおう」
「そんなこと、いきなり言われても困ります」
「ええい、言うとおりにしろ!」
一人の兵士がサラを突き飛ばした。
それは、あのコザンだった。
サラはよろけて倒れた。
「やめろ!」
マルスがたまらず、割って入った。
「乱暴するなら、許しませんよ!」
「お、お前は!」
コザンはマルスを見て、驚いた。
「幽霊!?」
「そんなわけねーだろ、デブ!」
ヨハンが戻ってきて、言いながらコザンを突き飛ばした。
「うわぁー」
コザンは倒れて転げ回った。
マルスがヨハンを制して言う。
「事情は大体聞きました」
「領主様の命令です!」
兵士が強めに言った。
「分かりました。私が連れていきます。少し外で待っていてください」
兵士達を外に出すと、マルスは皆に言った。
「もう少し時間が欲しかったですが、仕方ないです。行きましょう、領主の館に!」




