020 魔の森(2)
マルス達は、ミノタウロスの破壊力のある斧の攻撃に対して防戦一方になった。
しかし、だんだんとミノタウロスの攻撃に慣れてきた。
マルスは魔法剣で剣を光らせて攻撃した。
するとミノタウロスの体に傷を付けることが出来た。
(光属性の攻撃なら通じる!)
マルスはそう思い、ヨハンに目配せした。
それを見てヨハンは言った。
「ルシア、手を貸してくれ!」
「ちょっと無理よ、こんなの!」
ルシアが腰を落として、手を組んでいた。
そこにヨハンが足をかけ、飛び上がろうとしているらしい。
「いいから、合図したら思いっきり飛ばしてくれ」
マルスはミノタウロスの斧の攻撃を避けて、光の魔法剣をミノタウロスに突き刺した。
ミノタウロスは苦しそうに動きを止めた。
「いまだ!」
「えーーい」
ヨハンが合図すると、ルシアは力の限りヨハンを飛ばした。
ヨハンはミノタウロスに向かって飛び上がった。
一回転しながら剣を振り下ろした。
「天下一刀」
ミノタウロスは額にまともに天下一刀を受け、その場に倒れた。
ルシアはミノタウロスが倒れるのを見ると、ヨハンに詰め寄った。
「あんた女の子を踏み台に利用するなんて、何考えてるの!」
「うまくいったじゃないか……」
「たまたまうまくいっただけでしょ!」
ヨハンとルシアが言い争っていると、ミノタウロスが起き上がってきた。
二人は起き上がったミノタウロスを見ると、顔を見合わせた。
「闇祓いの魔法」
その時、フローラが闇祓いの魔法をミノタウロスに放った。
「下がっていなさい!」
フローラは言うと、弟子と共に闇祓いの魔法を連射し始めた。
魔物のミノタウロスも、魔獣や魔人と同様、闇祓いの魔法が弱点なのか徐々に弱っていった。
「すごい!」
賢者と弟子による、無詠唱の闇祓いの魔法の連射を見て、マルスは感じ入った。
ミノタウロスはやがて倒れ、ドロリと溶けていった。
ミノタウロスを倒したのを見て、ヨハンは賢者とその弟子を見た。
賢者は大人の女性で、その姿は優美で、才色兼備であった。
賢者の弟子は、長い黒髪をしたすらりとした体型の美少女で、黒い魔道士の服を着ていた。
二人とも魔法使いの必須道具である杖を所持していた。
「フローラさん、お久しぶりです」
マルスはフローラと面識があって、挨拶した。
「レイラも久しぶりです」
マルスは弟子の方にも話しかけた。
「レイラ……」
ヨハンはマルスが言ったのを聞いて、森の西の町で出会ったレイラを思い出した。
その時の髪がボサボサだったレイラの姿と、今の姿を見比べた。
「うそー!」
ヨハンはその姿の変わりように驚いた。
森の西の町で、マルスはモニカにレイラの事でお願いした。
それは、レイラが賢者フローラのもとに弟子入りして、指導してもらうということだった。
モニカは引き受けたが、簡単にはいかないと思った。
フローラは勇者アリアと共に、魔王城に向けて旅立っていたからである。
しかし、フローラはレイラの事を聞くと、引き返してきた。
首都アルバスで、レイラと出会ったフローラは何も言わずにレイラを指導することを決めた。
「マルス、あなたの活躍は聞いているわ」
フローラはマルスに会うとそう言った。
彼女はマルスがアリアに弟子入りしている時から知っていた。
その時のマルスからの成長ぶりに彼女は目を細めた。
「マルス様……」
レイラもマルスを見て、目を細め頬を赤くした。
実際のところ、レイラがマルスと離れていたのはそう長い間では無かったのだが、レイラは嬉しかった。
マルスとレイラの様子を見て、ルシアが割って入った。
「ちょっと待て! その女はマルスの何だ!」
ルシアが興奮して言ってくる。
「何って……、一緒に旅する仲間ですよ……」
マルスが答えると、レイラも言った。
「あなたこそ、何? マルス様に馴れ馴れしくして」
レイラは言うと、ルシアの前に立ちはだかった。
(マルス様! なにマルス推しなの!)
ルシアはそう思いながら、負けじと立ち向かった。
「レイラ」
フローラはレイラをたしなめるように言って、二人を離した。
そして彼女は、マルスから話を聞いた。
マルスは、戦った魔物と、先程会った魔族の話をした。
「私も出会った事が無い……、魔獣以外の魔物です。」
フローラは言うと、更に考えながら言った。
「おそらくですが、その魔族の口ぶりからすると、魔族が召喚した召喚獣か、創った合成獣なのでしょう……」
マルス達はその魔族が走り去った方を見た。
そこはちょうど岩山の中に入っていく、洞窟のような入り口があった。
「いかにも『入ってこい』って感じだな」
ヨハンが言った。
その岩山の洞窟の入り口まで進むと、フローラは目を閉じ、念じて何かを感じ取っていた。
そして言った。
「アリア達も北側に着いたようです」
「分かるのですか」
マルスが聞いた。
「大まかな位置なら分かるようにしています。あなた達にもこれを」
フローラはそう言って、マルス達に魔法石を渡した。
「私の魔力を込めた魔法石です。それを持っていれば、おおよその位置が分かります」
マルス達は魔法石を受け取った。
「この近くには、魔族や魔物の気配は感じられません。ここで休息して明日の朝、洞窟に入っていきましょう」
辺りはすっかり闇夜だった。




