019 魔の森(1)
マルス達は魔の森、奥深くに向かって進んでいた。
魔族の襲来から数週間が経過していた。
既に賢者フローラが弟子と共に森の西の町に、勇者アリアのパーティーが森の北の町に到着していた。
3組のパーティーの準備が整ったので、同時に出発して魔の森の中心に向かっていた。
「あなた達は、まず賢者達と合流して」
マルス達は、ソアラに言われていた。
魔の森の中心は山であることは分かっていた。
マルスのパーティーは森の南から北上し、賢者達は西から東へ向かって行き、山の麓で賢者達と合流することになっていた。
魔の森に入っていくと魔獣が現れたが、最初の頃に遭遇した魔獣は、マルス達を襲わずに自ら逃げていった。
魔の森は中心に行くほど、高い木々が鬱蒼としていた。
空も見えなくなり、薄暗くなった。
だんだんと木々が高くなり、木の枝の上を人が歩けるほどの巨木が立っていた。
そんな森を進んでいくと、巨大な魔獣が襲ってきた。
マルスのパーティーは連携して魔獣を倒し、進んでいた。
魔族の襲来以降、パーティーの連携の訓練をしていたが、その成果が出ていた。
「これで魔法使いがいれば、もっと楽に戦えるんだけどね……」
ルシアが言うと、マルスが答えた。
「魔法使いには、これから会えますよ」
ルシアはマルスが言った意味を聞こうとしたが、その時見たこともない魔獣が現れた。
頭が二つの犬のようで、尻尾が蛇だった。魔獣というより魔物だった。
しかも、空からも魔物が現れた。
コウモリのような翼を持ち、くちばしにワニのような牙を持つ魔物が、空から襲ってきた。
マルス達は苦戦しながらも、連携して魔物を倒した。
「なんだ、今までの魔獣と違うな……」
ヨハンが言うと、ルシアも言った。
「魔獣じゃない、魔獣なら倒すと元の獣の姿に戻るか、魔獣の姿のままだが、コイツらは倒すとドロドロに溶けていく」
そう言ってルシアは溶けていく魔物を見つめていた。
マルスもはじめて目にする魔物だった。
「休息して、先に進みましょう」
マルスが言った。
一行は更に先に進んでいった。
すると木々が減り、岩ばかりの場所になり空も見えた。
魔の森の中心は、かつて活火山であったが、山体崩壊を起こし、小高い岩山になっていた。
この場所は、前にマルスが言っていた、闇の魔力の源になる邪の気が集まる場所なのか、空が異様に感じた。
ヨハンは左腕を気にした。
左腕の竜の痣は、服を着ていて見えなかったが、上腕でぐるっと一回転して、肩まで達していた。
ヨハンは左腕が、なにかうずくような気がした。
岩山に入る所に、一人の魔族がいた。
魔族は青黒い顔をしており、若い女性の姿だった。
名をアイダという。
アイダはブツブツと何か言っていたが、マルス達をみると意外そうに言った。
「あちゃ、ここまで来ちゃったんだ。君たち強いね」
マルス達は魔族がいることを想定していた。マルス達は身構えた。
「君たちを始末するように言われていたんだよね……、結構強いヤツを差し向けたんだけどね」
「あの魔物達の事ですか?」
マルスが話しかけた。
アイダはマルスの問いには答えず、マルスを見て言った。
「君は勇者かな?」
そして、ヨハンに目を向けると、目を丸くして言った。
「君は……、竜の仕人?」
「竜の……」
ヨハンが言おうとすると、アイダが遮った。
「ああ、ここでは、竜鬼人とか言うんだっけ」
「おい、竜の痣のこと何か知っているのか?」
ヨハンがそう言いながら、アイダに近づいていった。
「私は、戦いは苦手でね、君たちの相手はこいつだ」
アイダは地面に向かって魔力を注いだ。
地面の魔方陣が光り、魔方陣から牛の頭に人間の体を持ち、巨大な斧を手にする魔物、ミノタウロスが現れた。
魔方陣から現れたミノタウロスは、雄叫びを上げるとマルス達を襲ってきた。
アイダはそれを見ると、岩山の方に消えていった。
ミノタウロスは、巨大な斧を振り回して攻撃してくる。
マルスとヨハンが、斧の攻撃をかわしながら剣で切りつけたが、傷一つ付けられなかった。
ルシアの弓矢の攻撃も、ミノタウロスの堅い体に弾かれていた。
「熊の魔獣を倒した技は?」
マルスがヨハンに聞いた。
「周りに高い物が無いんだよね……」
ヨハンがしれっと言うと、マルスは無双一斬をミノタウロスに仕掛けた。
ミノタウロスは斬撃を受けたが、効いていないようだった。
マルス達の顔が曇った。
◆◇◆◇
マルス達が、アイダと出会う数刻前、魔の森を通って岩山の麓に出た二人の者がいた。
賢者とその弟子だった。
「このまま麓沿いに行って、マルス達と合流するわ」
賢者フローラが言うと、弟子はうなずいた。
弟子はマルスの名を聞くと照れ笑いして顔を赤らめた。
しばらく行くと、マルス達が戦闘している音が聞こえてきた。
「急ぐわよ!」
フローラが言った。




