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勇者と魔王の暁  作者: 詠風皓月


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017 森の南の都市(4)

 モニカがブルクと接触した同じ時、森の北の町、東の町でも同様の事が起きていた。

 

 森の北の町では、旅芸人が芸を披露していた場所の地下から、魔族のヴァルトが現れた。

 ヴァルトも魔獣を召喚し、町に放った。

 そして、飛空の魔法で自ら飛んで行った。

 

 森の東の町では、女にそそのかされた商人の息子が所有する倉庫の中から、ディアナが現れた。

 ディアナも同じく魔獣を召喚すると、飛空の魔法で飛んで行った。

 

 

 そして、森の南の都市ではマルス達の目の前で、魔方陣が光り、魔族が現れた。

 大剣を背負った魔族だった。

 名をジークという。

 

 マルス達も魔族の莫大な闇の魔力に驚いた。


 ジークはマルス達を一瞥すると、無視して魔方陣に手をかざした。

 しかし、ヨハンの剣を見留めて言った。

 

「お前も剣士か?」

 

 マルス達は身構えて、ジークに打ちかかろうとした。

 

「今はお前達の相手をしている暇は無いんでね。また今度相手してやるよ」

 

 魔方陣が光り、幾多の魔獣が現れた。

 魔獣達は天井を突き破り、町に流れていった。

 ジークはブルクと同じく鳥の魔獣に乗り飛んで行った。

 

 マルスは崩れる天井のがれきを避けると、地上に出た。

 そこは町の中心地で、広場のあるところだった。

 広場の下にある地下室だった。

 マルスがあたりを見渡すと、魔獣達が町人を襲っていた。



 森の西の町では、モニカが地上に出て、手当たり次第に魔獣を斬って進んでいた。

 町に滞在していたアルバス機関の兵士と合流すると、町人の避難と救助を命令した。

 自身は町の石碑に向かうと言った。

 

「魔族は、魔の森に張られている結界の石碑を壊す気だ!」

 

 モニカは石碑の方に向かったが、幾度も魔獣に遭遇し、先に進めなかった。

 

 モニカの予想通り、魔族達は石碑に向かっていた。

 ほぼ同時刻に、4人の魔族がそれぞれの町の石碑に到着した。

 そして石碑に向かって闇の魔力を放ち、石碑を破壊した。

 東西南北の4つの町にある石碑が破壊されると、それぞれの町の結界が崩壊、同時に魔の森に張られていた広大な結界が崩壊した。



 マルス達も魔獣と戦っていた。

 同じく南の都市にいた、ソアラとシモムも町人の避難と保護をしていたが、いかんせん魔獣の数が多すぎた。

 マルス達も目の前の魔獣退治で手一杯だった。

 その中でマルスは結界を張っている高い石碑の塔が、ジークによって破壊されるのを見た。

 

 数刻の間、マルス達は魔獣と戦闘していたが、町の人達の避難が完了しつつあった時だった。

 魔獣達が急に何かにおびえたように町から逃げていった。

 一目散に逃げる魔獣を見て、マルス達が不思議に思っていると、ルシアが言った。

 

「これって……、更に強いヤツが出てくるパターンじゃないの……」

 

 その時、地鳴りのような足音が聞こえた。

 足音は町の外から聞こえてくるようだった。

 そして、だんだんこちらに近づいてくる。

 

 マルスは高い建物に登って、町の周囲を見渡した。

 すると、魔の森から巨大な魔獣が姿を現した。

 

「魔の森に張られていた結界が破壊され、閉じ込められていた魔獣が町を襲いに来た……」

 

 それは、町の城壁よりも高い、巨大な熊の魔獣だった。

 熊の魔獣はうなり声を上げると、町の城壁を破壊して町の中に侵入してきた。

 

「なんだよ、あれ、怪獣じゃないか!」

 

 ルシアが熊の魔獣の大きさを見て言った。

 

「ヨハン、サンリの時と同じです。私があいつを足止めします。あいつを倒せる技はありますか?」

 

 マルスがヨハンに尋ねる。

 

「……ああ、あるぜ!」

 

 ヨハンが答えると、さらに言った。

 

「どうやって足止めする? サンリのような訳にはいかないぜ!」

 

「大丈夫です!」

 

 マルスが答えると、ヨハンは技を出すには、近くに高い建物がある方が都合がいいと言った。


「あそこがいい!」


 ヨハンは結界を張っていた石碑の塔を剣で指した。

 塔の先端部はジークによって破壊されていたが、自立していた。


「あそこならば、広い場所で都合がいいですね」

 

 マルスが応答した。

 

 

 熊の魔獣は町の建物を破壊しながら、町の中心に向かって進んでいた。

 ルシアが矢に魔力を込めて、熊に向けて放った。

 矢は熊の顔に刺さったが、たいして効いていないみたいだった。

 しかし熊はうなり声を上げると、ルシアの方に向かって来た。

 

(かかった!)

 

 ルシアは熊を石碑の方へ誘導していった。

 

 石碑のある場所は町の少し丘になった場所で、開けた場所だった。

 

 熊はルシアを追ってきた。

 ルシアが石碑の丘に入ると、熊は近くの建物を破壊して瓦礫をルシアに向かって飛ばした。

 

 瓦礫がルシアを襲う。

 

「風の魔法、砂塵」

 

 マルスが来て魔法を唱えると、風が砂ぼこりと共に、熊の顔を覆った。

 目くらまし位にしかならなかったが、時間稼ぎにはなった。

 そのすきにマルスがルシアを助ける。

 

「大丈夫よ!」

 

 ルシアが力強く言った。

 

 その間に、ヨハンは石碑を登っていた。

 

「無双一斬」

 

 ヨハンは頂上にたどり着くと無双一斬を放った。

 熊に命中したが案の定、あまり効果が無いようだった。

 しかし、熊は激高して二本足で立ち、ヨハンの方に向かって来た。

 熊が石碑に近づいた時、マルスが技を繰り出した。

 

 縮地により熊の足元に瞬間的に移動、そこから無双一斬を放った。

 熊は足を切られ、流石に動きがとまり、大きなうなり声をあげた。

 

 それを見てヨハンは石碑からさらに飛び上がって、熊に向かって降下していった。

 剣を構え、落下の威力を加えて、闘気と共に剣を振り下ろした。

 

天下一刀(てんかいっとう)

 

 ヨハンの放った技は、熊を突き抜け地面まで斬撃が届くようだった。

 

 熊を見ると額が割られていた。

 やがて熊は地響きと共に倒れた。


 熊の魔獣が絶命したことを確認すると、マルス、ヨハン、ルシアは安堵して一気に疲れが押し寄せた。

 

 町に静寂が訪れて、夜が明けてきた。

 朝日が差してくると町の人々が戻ってきた。

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