013 森の狩人(3)
ルシアが加わり魔獣を倒した。
ルシアは取るものも取りあえず来たというので、一旦ルシアの家に戻ることになった。
家に戻ると旅の支度をし、ヨハンが運んだトカゲも近所に住む猟師に託した。
準備が整い、出発するときルシアが尋ねた。
「ところでどこに向かって旅しているの?」
「森の南の都市です」
マルスが答えるとルシアが言った。
「あら、勇者だから、てっきり森の中心に向かっていると思っていたわ」
マルスは少し黙っていたが、やがて言った。
「ルシアはこの森の中心がどうなっているか知っていますか?」
「……誰もたどり着けていないのよね」
ルシアが答えると、マルスは話し出した。
「過去に何人もの冒険者が森の中心に向かいましたが、誰一人たどり着けていません」
森の中心を目指し生還した冒険者達は、口をそろえるように言っていた。
「森の中心に行くほど強い魔獣がいる!」
マルスは前にヨハンに話した魔の森の話の続きを語り出した。
森の中心に行くほど邪の気が強くなるので、魔獣も凶悪になっていく。
その凶悪な魔獣が森から出てこられないようにアルバス機関によって結界が張られている。
結界は森の東西南北にある町の石碑によって形成されている。
「その西の町で魔人が現れました。東と北の町でも奇妙な事が起こっているらしいです。南の都市で異変がないか確認しに行きます」
◆◇◆◇
マルス達は、南の都市に向かう途中の町に一泊した。
小さな町だったが、宿場町として栄えていて、市場もあった。
宿泊した次の日の朝、ヨハンが宿の近くで、剣の修行をしているとルシアがやってきた。
買い出しに行くので、付き合えと言う。
「マルスと一緒に行けばいいだろ」
ヨハンが言うと、ルシアはマルスは既に町長のところに用事で出かけていると言った。
町に来るのは久しぶりで買いたい物がある、旅に必要な物もそろえたいと続けて言った。
「荷物持ちに付き合って」
ルシアに言われて、ヨハンは渋々一緒に行くことにした。
市場に行って、ルシアはいろいろな店に寄っていた。
日用品や服を買っては、ヨハンに渡して荷物持ちにしていた。
最後に、ルシアは装飾品の店に行った。
「これ、キレイ!」
ルシアは宝石の付いたネックレスを手に取って、はしゃいでいた。
ヨハンは買い出しした荷物を持ちながら、暇そうに市場を見ていた。
その中に、物をねだっている子供をあやしている両親の家族がいた。
その家族の様子を、ヨハンはじっと見ていた。
ルシアはヨハンを見て、なんとなく聞いた。
「家族とかで買い物とか行った?」
「いや……、俺、家族とかいないから」
ヨハンが答えると、ルシアは聞いてはいけなかったことかと気まずくなった。
「ご飯食べに行こう!」
「荷物持ってくれたお礼だ。おごってあげるよ」
ルシアが提案する。
「それ買わなくていいのか?」
ヨハンはルシアが手に取っていた、ネックレスを指しながら言った。
「ちょっと高いからね……。また今度でいいや」
ルシアが答えると、二人は料理店に入った。
食事をしながら、ルシアは思い切って聞いてみた。
「話したくないなら、話さなくていいんだけど、さっき家族はいないって言ってたけど……」
「別に話せないことじゃない」
ヨハンは自分の過去を語った。
自分がものごころつく前に、住んでいる村が、魔獣か魔族かに襲われた。
村人が大勢殺戮され、自分の両親も亡くなった。
アルバス機関の者が到着したとき、なぜか自分だけ助かっていたらしい。
ヨハンはアルバス機関の孤児院に引き取られた。
それから、剣士になるように育てられてきたと言った。
自分の感情を押し殺して、ずっと剣の修行をしてきたみたいだった。
ルシアはそれを聞くと、自分も今は両親がいないが、ヨハンに比べれば恵まれていると思った。
「家族というものはよく分からないけど、マルスやルシアと出会って、なんと言うのかな……、仲間というものができた気がする。」
ヨハンが考えながら言った。ルシアは頷いた。
「そう、良かったわね」
ルシアは感慨深く言った。
しばらくして、ルシアは不思議に思った。
ヨハンの村が襲われたとき、なぜヨハンだけ助かったのか……。
料理店を出ると、ヨハンが言った。
「あのネックレス買ってやるよ」
「え!」
「ご飯おごってくれた、お返しだ」
ルシアは驚いて聞いた。
「お金あるの?」
ヨハンはネックレスを買えるぐらいの所持金があったが、買ってしまうとほとんど無くなってしまうことは分かっていた。
「働いて、またすぐに稼ぐさ」
ヨハンが答えると、ルシアは笑顔で言った。
「ありがとう!」




