↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リーゼロッテはいつも怒ってる  作者: 有栖多于佳


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/30

リーゼロッテ、南のサルアール王家にざまあする

リーゼロッテがサルアール王国に来て数ヵ月経ち 身辺も落ち着いて来た頃

王家から直々に登城の命が下った


王弟でありこの国の宰相である公爵と夫人

それに義兄と義姉も一緒に馬車で向かう。


「リーゼ緊張しなくていいわよ。」

夫人が優しく声をかける。

「はい」

リーゼロッテは言葉少なに答えた。


王城の謁見の間ではなく、プライベートな部屋に通された。


王と王妃、それから王子がやって来ると、そうは言っても公爵家の面々である。

きちんとした紳士淑女の礼を以て迎える。


「苦しゅうない、楽に。」

王が声をかける。


「王国の太陽・・・」

公爵が挨拶を始めるが、それも


「いい、いい。楽に。」

王はそういって椅子に腰かけ、それに続いて王妃も王子も席につく。


「では、お前たちも。」

公爵が目で合図すると一同腰を下ろす。


「リーゼロッテ、よくぞ参った。会えるのを随分長く楽しみにしておったぞ。」

「そうよ、本当に。もう八つになったのかしら?」

王と王妃が相好を崩した顔で言う。


どうやらこの国の王候貴族は言葉と表情が一致しているようだ。


「リーゼロッテでございます。お目にかかれて恐悦至極に存じます。」

軽く立ち上がりちょこんと膝を曲げて、簡易の挨拶をする。

王が楽にというも、座ったままと言うわけには行かない。


その仕草もまたお気に召した様子でにこやかに笑いかけた。

「うむ。どうだ、こちらの国には慣れたか?」

「はい。公爵家ではとても良くしていただいております。」

リーゼロッテは美しいビスクドールの表情で答えた。


王は濃い茶色の髪に茶色の目で、公爵の義父によく似ている。

王妃は少し薄めの茶色の髪と鳶色の瞳で、魔術師団長のイーサンの伯母にあたる。

その為、微力ながら魔力を持ち現王家で唯一魔法が使えるのだった。


「リーゼロッテ、良くこの国に来てくれたわね。あなたが生まれる前から私たちはあなたの到来を今か今かと首を長くして待っていたのよ。」

王妃はこの国の淑女の頂点らしい薄い笑顔の表情とは違い手放しな歓迎の言葉である。


「王妃様、御前の拝顔をありがたく存じます。」

またもや、リーゼロッテはビスクドールな顔で口上を述べた。

「いいわ、もっと楽にして。今日は弟一家が訪ねてきたという私的な場よ。もっと気楽にして欲しいわ。この子が王子のヘンリーよ。同じ年だし、仲良くしてね。」

王妃は今度はにこやかな笑顔でそう告げると、隣の王子を紹介した。


「初めまして、ヘンリーです。」

「初めまして王子殿下、リーゼロッテでございます。」

リーゼロッテはビスクドールの表情でカーテシーをしてご挨拶した。

「かたくるしい挨拶はこの辺で。お茶にしましょう。」

王妃の声で、リーゼロッテはソファに腰を下ろした。


しばらく和やかにお茶をしていると、徐に王が告げた。

「リーゼロッテ、もうしばらくしたらヘンリーと正式に婚約をすることとなる。」

リーゼロッテはティカップを皿に戻すと無言で王の目を見た。

「何か問題があるか?」

王は他意はなく聞いてくるが、リーゼロッテは無言だった。

「よい、先程王妃が言ったように今はプライベートな時間じゃ。何かあるのか?」

「発言をよろしいでしょうか。」

「よい、何なりと申してみよ。」

「ありがたきお言葉でございます。では。わたくしが王子殿下と婚約するのはなぜでございますか?」

「「「え???」」」


そこにいた全員が驚きリーゼロッテを見た。

まさか、優秀と伝え聞くリーゼロッテからそんな質問をされるとはそこにいる者は誰も彼も思いもよらなかったのだ。


そもそもがサルアール王国へ第一王女と側使えの伯爵令嬢が揃って輿入れしたのは、側使えの伯爵令嬢が女の子を生んだら公爵家の養子として王家に嫁ぐという契約だったのだ。但し数人生んで男子のみだった場合は末子を王家の養子にとるなど細かい取り決めをしての婚姻だった。

その話を知らないリーゼロッテでは無かろうに、なぜこの場でそんな事を聞くのかと、各人訝しく思った。


「リーゼロッテ、お前は自身がどういう立場でこの国に来たのか知らないのか?」

突然、王子のヘンリーが聞いてきた。

「立場というと?」

「なんだそうか。お前の母上が女児を生んだらサルアール王国の公爵家の養女にしてその後王家に嫁入りする契約になっているんだ。」


ヘンリーは物を知らない幼子に言って聞かせるように、教えるように説いた。

「その件は存じております。ではなぜわたくしが王家に嫁ぐのですか?」

リーゼロッテは表情筋が動かない顔で再度ヘンリーに問いかけた。


「そりゃ、ロザリアの血を王家に入れるためさ。」

「なぜロザリアの血を取り入れるんですの?」


「魔力の強い子に王位を継がせるためさ!」

なんだ、お前はなにも知らないのか!?とヘンリーは得意になって答えた。


リーゼロッテはすぅぅぅっと姿勢を正すと抑揚のない声で言った。

「魔力の多い子が王位を継ぐのならば、わたくしが王位を継げばいいのでは?」


「「「え?」」」

「な!なな、ナニ?」


不敬である。王位を簒奪すると言っているのだ、王宮内で。

流石の王も王妃も眉をひそめた。

公爵も公爵夫人も顔から笑顔が消えた。


「どういうことだ!お前は王になりたいと?」

ヘンリーが怒って食って掛かる。


「いいえ、滅相もない。殿下がおっしゃったのですよ。魔力の多い子に王位を継がせるためと。魔力と王位に相関関係があるのならば、そういう話ではないか?とお聞きしたまで。サルアール王家に魔力の強い子を望むならば、魔力の強い男児とわたくしが為した子を養子に取る方が確率は高いかと。」


「・・・どういうことだ?」


「今回、養女にくるのが妹だった場合、妹と殿下では魔力のある子は為されなかったと思います。妹の魔力はロザリア王国では平民の子より少ない位なので。殿下は魔力はお持ちでないです。」


「お前に言われなくたってそんなのは知っている!」

痛いところを突かれたのか、ヘンリーは気色ばんだ。


「ロザリアの父は比較的魔力の多い人でしたが母は全く魔力のない者です。同じ親から生まれた姉妹でも個体差があるのです。魔力の多い子が生まれる前提での婚姻に夢はあっても現実的な意味はあるのでしょうか?」


リーゼロッテは淡々と問いかけた。


「つまりどういうことだ。」

今まで無言を貫いていた王が重い口を開いた。


「不敬を問わないとお約束を頂けますか?」

リーゼロッテはチラリと目線を上げ、王に問う。


「はは、今さらか!よい、不敬に問わんから言ってみよ。」

王は愉快そうに言った。



サルアール王国に来る道中に立ち寄った国々で起こった魔力に起因した出来事の数々

そして、謁見を申し入れて三ヶ月も放置された教会本部での出来事


キョコト市国に戻ってもなかなか教皇との謁見が叶わなかった。


教会本部はほぼ北のロザリア王国の出身者で占められていた。

肌は白く、白金の髪薄い青の瞳の者ばかりだった。

更に教会では魔力を持つ子供を一定数確保するため、教会関係者は必ず魔力のある女性を妻にすることを義務にしていた。


教会関係者だけでなく、城下町で生活を営んでいる平民も魔力持ちなので総魔力持ち人口は大陸一だった。


教会で出世するのは魔力と有益なスキルの有る者とそれを保護する者なので、どこの国であれスキルが発現すると有無を言わさずその者は教会本部で囲われるようになっていた。


更に、ロザリア王国では忌み属性と言われている闇属性が教会幹部に非常に多くいた。

寧ろ、世界の闇属性魔法使いはリーゼロッテ以外は教会にしか存在していないのだった。


謁見の許可を待っている間、リーゼロッテはあれこれと疑問を教会の大図書館で調べた。

教皇に会った暁にはこれについて質問しようと、何度も何度も質問を作り、図書館で解答を得て、また別の質問を作りと長らく待っていたのだが、結局最後まで謁見の機会は持たされなかった。


ちなみに、リーゼロッテが闇属性で膨大な魔力を持ちスキルを発現してなお、サルアール王国に来れたのは奇跡に近いのだ。リーゼロッテのスキルがたまたま《スキル真実の目》だったので、どう取りつくってもバレてしまうので見逃されたのだった。


「しかも、教皇は代々ロザリア出身者からなられますので、神託の数もほぼロザリアの件がかけられているのです。他の国は数回ほどでしょうか?」


「え?」「そうなの?」

王と公爵が驚いた声を上げた。


「はい。もうここ何代もロザリア出身者しか教皇にも枢機卿にもなっておりません。しかし、神託にかかかる費用は各国の人口比率によるので一番サルアール王国が負担しているのに、この国は九百年で神託を受けたことは一度も無いかと。」


「そ、そんな。」

王が愕然とした。


「祝福の儀式も各国の教会で全国民をさせますでしょ?その費用も人口が多いほどかかります。」

リーゼロッテがサラッと言った言葉に宰相の義父が片方の眉を上げて溢した。


「そうなのだ、毎年国庫からかなりの額を教会に払って三歳から七歳までの子に祝福をしてもらっているが。」


「その中で魔力持ちでスキルのある子が見つかれば、教会本部に囲われてしまいます。しかし、サルアール王国では魔力持ちがほとんどいないのでスキル持ちの子が現れたとしても拐われることはないため、被害者はおりませんが。」


「それなら、なぜ毎回祝福の儀をサルアールでするの?」

王妃が堪らず口を挟んだ。


「第一に、仮にスキル持ちが生まれた場合見つける為、スキルは魔力とは違い、持つ持たないは遺伝ではなく偶然なので。第二に人口が多いので教会に入る祝福の寄進が多いから収入としてでしょうか?」

リーゼロッテが王妃に向かって答える。


「な、なんだどういうことだ。教会の決めた教会の(ルール)に従って各国は法を定めているというのに。」

王が不満の声を上げた。


「つまり何が言いたいんだ?」

ヘンリーが話の腰を折って聞いてきた。


リーゼロッテはヘンリーの言葉にフッと笑ってバチっと目を合わせるとはっきりと言った。

「将来生まれるはずと夢をみて、生まれるかどうかわからない者を頼りにするのではなく、他国とのパワーバランスを取る為だと教会に少なくない国庫のお金を言われるままに渡すのではなく、自分で解決策を講じるべきではないのでしょうか?」


「うーん、言っていることがわかるようなわからないような。つまりなんだ!?」

腕組みをして頭を傾げて悩んでヘンリーが食い下がってきた。


「教会に無駄なお金を払わず、そのお金を使ってパワーバランスを取れるよう魔力以外の戦力を持ったらいいのでは?」

リーゼロッテはビスクドールの(かんばせ)で事も無げに言った。


「具体的には?案があるの?」

今まで黙っていた義兄のロベルトが軽快に聞いてきた。


「ええ、勿論ですとも。」

「それってイーサンにこの前頼んでいた話?」


「え、え、え?魔術師団長に?」

王と公爵は同じ顔を同じように歪めて驚愕の声を上げた。


「ご名答ですわ、お義兄様。」


リーゼロッテは目の端に微笑をのせて答えた。


「陛下、どうぞ。暫しお時間を頂きたく存じます。さすれば、納得のモノをお目にかけましょう。」


リーゼロッテはそう答えると優雅にカーテシーをしたのだった。


お読みくださいましてありがとうございました。


誤字誤謬があるかもしれません。


わかり次第訂正いたします。


いいねなどいただけますと励みになります。


よろしければお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。